ボストン・セルティックスの優勝で幕をとじた2023-24シーズン。
ついに終わったか・・・と感慨にふけるまもなく、いきなり大型トレードが決まりました。
ここ最近ではめずらしく1対1のシンプルなトレード。
サラリー合わせの選手や、ドラフト指名権などもついていない1対1のトレードは、NBAの世界ではなかなか聞かないですよね。
今回は2024年オフにまとまったトレード第1号の主役、アレックス・カルーソとジョシュ・ギディについて語ります。
シカゴ・ブルズとオクラホマシティ・サンダー、はたして得をしたのはどちらのチームなんでしょうか?
それではレッツラゴー!
カルーソとギディのトレード内容
今回のトレードを報じたのは、『ESPN』の名物記者エイドリアン・ウォジナロウスキー。
ウォジさんが報じたら、もう間違いないというほどの信頼度の高い記者です。
トレードの内容はいたってシンプル。
ブルズ⇨サンダー
アレックス・カルーソ
サンダー⇨ブルズ
ジョシュ・ギディー
完全に1対1のトレードは、NBAではなかなか聞かないですね。
サラリー合わせで複数の選手であったり、指名権であったり、金銭であったり、複数のチームをからめたり、トレードが複雑化する中、なんとも気持ちの良いトレードです。
巨人の若林晃弘選手と日本ハムの郡拓也選手の1対1トレード以来かなと思います(笑)。
「気持ちのよいトレード」と言ったのは、単に1対1であったというだけではありません。
ブルズとサンダー両チームが補強ポイントに合致した選手を手に入れ、カルーソとギディ2人の選手にとってもより活躍できる環境に飛びこむことができる、誰もがハッピーになる(と思われる)トレードだからです。
先に結論からのべると、ブルズとサンダーどちらにも得となる、珍しいトレードだと思います。
それでは、今回のトレードの主役二人について語っていきましょう。
アレックス・カルーソを語る
アレックス・カルーソ
ポイントガード
1994年2月28日生まれ(30歳)
196㎝ 84㎏
ドラフト外
受賞歴
NBAチャンピオン(2020 ロサンゼルス・レイカーズ)
NBAオールディフェンシブ1stチーム(2023)
NBAオールディフェンシブ2ndチーム(2024)
NBAを代表するペリメーターディフェンダー、アレックス・カルーソ。
優勝を狙うチームであれば、どこのチームも欲しがるであろう、ディフェンスと3ポイントシュートの名手です。
2年連続でオールディフェンシブチーム入りするなど、誰もが認めるエリート選手となったカルーソですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
カルーソ NBAデビュー~レイカーズ時代
テキサス州カレッジステーションで生まれたカルーソは、高校卒業後地元のテキサスA&M大学に進学。
4年間プレーし平均8.0得点 4.7アシスト 2.02スティールを記録。
大学4年時にはオールSEC(サウスイースタン・カンファレンス)2ndチーム、オールSECディフェンシブ2ndチームに選出されています。
2016年のNBAドラフトに挑みますが、残念ながら指名はされず。
それでも2016年のサマーリーグにフィラデルフィア・76ersの一員として参加すると、9月23日にオクラホマシティ・サンダーと契約を交わします。
残念ながら開幕前の10月17日に契約を破棄されましたが、サンダーの下部組織オクラホマシティ・ブルーの一員として、プロ1年目のシーズンを戦いました。
実はオクラホマシティとの縁も深かったんですね。
Dリーグ(現在のGリーグ)では50試合に出場し、平均11.9得点 3ポイントシュート成功率40.1%を記録し、チームの主力選手として活躍しました。
運命の2シーズン目2017-18シーズン、カルーソはロサンゼルス・レイカーズの一員としてサマーリーグに参加。
ドラフト1巡目2位で指名されたレイカーズ期待のルーキー、ロンゾ・ボールがケガをしたため回ってきたチャンスをカルーソは無駄にはしませんでした。
レイカーズ初の2way契約選手となり、貴重なバックアップポイントガードとして37試合に出場。
翌2018-19シーズンも再び2way契約を結ぶと、平均21.2分の出場ながら9.2得点 2.7リバウンド 3.1アシストを記録。
特に3ポイントシュート(48.0%)とディフェンス力(1.0スティール)を高く評価され、シーズン後に2年550万ドルの契約をレイカーズと結びました。
2019-20シーズンにはレイカーズのNBA優勝に貢献しますが、エイブリー・ブラッドリー、レイジョン・ロンドに次ぐ第3ポイントガードとなったカルーソは、出場時間を大きく減らしてしまいます。
スタッツは前年より落としたものの、バスケットボールIQの高さを随所に発揮し、レイカーズの人気者となりました。
2020-21シーズンもレイカーズの縁の下の力持ちとして活躍。
チームファーストの献身的なプレーで、チームメイトやコーチからの絶大な信頼を獲得しました。
ただ前年チャンピオンのレイカーズは、レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス2人のエースのケガによる離脱もあり、プレーイントーナメントにすら出場できず。
シーズン終了後にフリーエージェント(FA)になったカルーソは、レイカーズ残留を希望したものの、レイカーズからのオファーは十分なものではありませんでした。
カルーソ シカゴ・ブルズ時代
カルーソはシカゴ・ブルズと4年3600万ドル(約49億6800万円 1㌦=138円)で契約。
ドラフト外から這い上がってきた苦労人は、ついに大型契約を勝ちとりました。
ブルズ1年目の2021-22シーズン、カルーソは41試合出場し、そのうち18試合で先発出場。
攻守両面で、ブルズのプレーオフ進出に大きく貢献しました。
2年目の2022-23シーズン、カルーソは67試合に出場し、36試合に先発出場。
スタッツは平均5.6得点 2.9リバウンド 2.9アシストと決して派手なものではありませんでしたが、圧倒的な守備力でリーグに大きなインパクトを与えます。
カルーソはドリュー・ホリデー(当時ミルウォーキー・バックス)とともに、ガード部門でNBAオールディフェンシブ1stチームに選出され、リーグトップクラスのディフェンダーとして評価を高めました。
そして迎えた2023-24シーズン、カルーソは71試合に出場し、57試合に先発出場。
1試合平均28.7分出場 10.1得点 3.8リバウンド 3.5アシスト 1.7スティール 1.0ブロックと自己最高のシーズンを過ごし、NBAオールディフェンシブ2ndチームに選出されます。
2023-24シーズンからオールディフェンシブチームはポジションレスになったため、1stチームはフロントコートの選手が占め、ペリメーターディフェンダーで最も票を集めたのが、カルーソでした。
守備力に磨きをかけた上、攻撃面では3ポイントシュートが絶好調。
2022-23シーズン、1試合平均2.3本放ち0.8本成功(36.4%)だった3ポイントシュートが、2023-24シーズンは1試合平均4.7本放ち1.9本成功(40.8%)と大幅に改善します。
リーグを代表する3&Dという評価をゆるぎないものにしたカルーソは、今回のトレードでリーグ最高級の戦力と大量のドラフト指名権をもつ最も未来の明るいチーム、オクラホマシティ・サンダーに移籍することになったのです。
ジョシュ・ギディーを語る
ジョシュ・ギディー
ポイントガード
2002年10月10日生まれ(21歳)
203㎝ 98㎏
ドラフト 2021年 1巡目全体6位
受賞歴
なし
アレックス・カルーソとは真逆の、華やかなNBAデビューを飾ったジョシュ・ギディー。
2021年のNBAドラフト1巡目全体6位でオクラホマシティ・サンダーに指名された、将来のスター候補です。
サンダーで過ごした3シーズン、出場したレギュラーシーズン210試合すべてで先発出場するなど、大型ポイントガードとしてチームの柱となることを期待されていました。
未来の成功が約束されたと言われているサンダーから、チーム再建を図るであろうシカゴ・ブルズへ戦いの場をうつすことになったギディー。
ここまでの活躍と、サンダーを去ることになった理由を語ります。
ギディー NBAデビュー~サンダー初期
オーストラリアのメルボルンで生まれたギディーは、オーストラリアのNBAグローバルアカデミーで頭角をあらわします。
アメリカの強豪大学からのオファーを断り、オーストラリアプロリーグ(NBL)のアデレード・36ersと契約したギディーは、NBL史上初の2試合連続トリプルダブルを記録するなど大活躍。
平均10.9得点 7.3リバウンド 7.6アシストを記録し、新人王とアシスト王に輝き、注目を集めました。
迎えた2021年のNBAドラフト、ギディーは1巡目全体6位でオクラホマシティ・サンダーに指名され、NBAグローバルアカデミー卒業生として初のドラフト指名選手となりました。
エースでポイントガードのシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(SGA)、ディフェンス力に定評のあるルーゲンツ・ドートのバックコートコンビがいたため、ルーキー時代ギディーはスモールフォワードとして出場。
NBAデビューとなる開幕戦から先発出場したギディーは、1月2日のダラス・マーベリックス戦で「NBA史上最年少トリプルダブル」を記録(17得点 13リバウンド 14アシスト)するなど、期待どおりの活躍をみせます。
ただし股関節の痛みに苦しみ、2月25日のフェニックス・サンズ戦がシーズン最後の出場になるなど、54試合の出場にとどまりました。
1年目のスタッツは、出場した54試合すべてに先発出場し、平均12.5得点 7.8リバウンド 6.4アシスト。
オールラウンドな活躍をみせ、出場試合数が少なかったもののオールルーキー2ndチームに選出されています。
ギディーの問題点はシュート力。
シュート成功率は41.9%、3ポイントシュート成功率は26.3%と、かなり厳しい結果となりました。
チームとしてはギディーに加えSGA(56試合出場)、ドート(51試合出場)の主力2人もケガのために欠場が多く、ウエスタンカンファレンス14位と厳しいものでした。
2年目の2022-23シーズン、サンダーはドラフト1巡目全体2位で216㎝ 88㎏のセンター、チェット・ホルムグレンを指名。
7フッターとは思えないテクニックとシュート力で、U19アメリカ代表をワールドカップ優勝に導いたホルムグレンに期待が集まりますが、シーズン前のピックアップゲームで右足リスフラン関節損傷のケガをおい、シーズン全休となります。
今年も下位に低迷するのか・・・と思っていましたが、若手のそろうサンダーは選手一人ひとりの成長が想像以上でした。
SGAは平均得点を前シーズンの平均24.5点から31.4得点にジャンプアップさせ、オールNBA1stチーム入りするなど大躍進。
ギディーもフィールドゴール成功率(41.9% ⇨ 48.2%)、3ポイントシュート成功率(26.3% ⇨ 32.5%)ともに大きく改善をみせ、SGAとのW司令塔でチームの攻撃を活性化させました。
またこの年ドラフト1巡目全体12位で指名したジェイレン・ウイリアムズも、新人王投票でパオロ・バンケロに続く2位の得票を集める活躍をみせたこともあり、サンダーは躍進。
前年ドアマットだったチームは、ウエスタンカンファレンス10位まで順位をあげ、プレーイントーナメントに進出。
プレーイントーナメントでは初戦でペリカンズに勝利するも、2戦目でミネソタ・ティンバーウルブズ戦に敗れ、プレーオフ出場とはなりませんでしたが、チームとして確かな成長を感じさせました。
ギディーはシーズン終了後、オーストラリア代表としてバスケワールドカップに出場。
変幻自在のプレーで強豪オーストラリア代表を牽引しました。
日本代表との試合では26得点 5リバウンド 11アシストを記録し、「ギディーやっぱとんでもねーな」の声が日本中で飛びかいましたね。
ギディー サンダー2023-24シーズン
2022-23シーズンを全休した大型ルーキー、チェット・ホルムグレンがデビューした2023-24シーズン、オクラホマシティ・サンダーは開幕から絶好調。
強豪チームがそろうウエスタンカンファレンスの台風の目となり、勝利を重ねていきます。
チームが勢いに乗る中、ジョシュ・ギディーにある大きな問題が浮上しました。
2024年11月、匿名のSNSユーザーによって、ギディーが15歳の女子高校生と性行為を行ったと、写真付きで暴露されたのです。
ギディーと女子高生の2ショット写真は世界中に拡散され、NBAを揺るがす大問題に発展しました。
NBAの調査や、地元警察の捜査も入りましたが、明らかな証拠は出ず、刑事責任は問われないことになるのですが、ギディーのイメージダウンは大きかったと思います。
問題が表面化してからも、マーク・ダグノートHCはギディーを試合に出し続けたのですが、敵地でのブーイングはかなりのものでした。
逆にサンダーのホームコートでは、ファンから激励の大歓声をもらっていたようですが(YOKO Bさん情報)。
問題が起きて以降、ファンとのコミュニティイベントなどに参加することもなく、周囲もあつかいに困っている様子でした。
プレー面でもギディーは問題を抱えるシーズンとなります。
レギュラーシーズンで80試合にすべて先発出場したものの、出場時間は前シーズンの平均31.1分から25.1分に大きく減少。
得点(16.6⇨12.3)、リバウンド(7.9⇨6.4)、アシスト(6.2⇨4.8)と主要スタッツすべて前年よりダウンとなりました。
サンダーの戦術的にも、ギディーの存在感はうすれていきます。
サンダーの強みはリーグナンバー1の成功率を誇る3ポイントシュート。
スターターの中で、ギディーだけが3ポイントシュート成功率35%を下回っているため、敵にノンシューター扱いされ空けられることもありました。
またチームにはシェイ・ギルジャス・アレキサンダー(SGA)という優れたポイントガードがいるため、ギディーがプレーメイクする必要性がうすいことも問題となっており、ダラス・マーベリックスと戦ったプレーオフカンファレンスセミファイナル最後の2試合は、自身初のベンチスタートとなっていました。
レギュラーシーズンでウエスタンカンファレンス1位の座につき、カンファレンスセミファイナルまで進む大躍進をとげたオクラホマシティ・サンダーの中で、ジョシュ・ギディーは居場所をなくしつつあったのです。
サンダーにはマッチしていなかったものの、ギディのオールラウンドな能力と観客を魅了するアシストを繰り出すスター性に目をつけたのが、チーム再建に挑むシカゴ・ブルズでした。
ブルズにはロンゾ・ボールという優秀なポイントガードがいますが、度重なるケガでいつ復帰ができるかわからない状態。
辛抱強くボールの復帰を待っていたブルズのフロントも、ようやく新たなるスターとなる司令塔を獲得する決心をかためたのです。
ギディーはまだNBA3年目を終えたばかりの21歳。
伸びしろは無限大です。
今回のトレードで、ギディーが一気にオールスターに飛躍する可能性も十分にあると思います。
カルーソ ギディー スタッツ比較
ここでカルーソとギディーの、昨シーズンとNBA通算のスタッツを比較してみましょう。
アレックス・カルーソ
2023-24 10.1得点 3.8リバウンド 3.5アシスト FG46.8% 3P40.8%
NBA通算 6.8得点 2.9リバウンド 2.9アシスト FG44.0% 3P38.0%
ジョシュ・ギディー
2023-24 12.3得点 6.4リバウンド 4.8アシスト FG47.5% 3P33.7%
NBA通算 13.9得点 7.3リバウンド 5.7アシスト FG46.4% 3P31.0%
単純にスタッツを比較すると、ギディーの方が上回っているように思います。
年齢もカルーソが30歳、ギディーが21歳。
未来を考えると、シカゴ・ブルズが得をしたように感じる人もいるでしょう。
しかし、カルーソには圧倒的なディフェンス力があります。
精度の高い3ポイントシュートという武器もあります。
若手がそろい、優勝を本気で目指しているオクラホマシティ・サンダーにとっては、ラストピースとなるかもしれない選手ですね。
サンダーにはルーゲンツ・ドートという3&Dのスペシャリストがいるため、「ギディーのトレード相手はインサイドで戦えるビッグマンの方がよかったんじゃないか・・・」という声もありますが、わたくしリトルは、今回のフロントの動きはすばらしかったと思います。
サンダーに身体をはれるビッグマンはもちろん必要かとは思いますが、バスケットボールIQが高く、チームプレーに全力を尽くす、最高のペリメーターディフェンダーを逃す手はありません。
自身の経験を若手に伝えるメンター的な役割も期待できますから。
反対にシカゴ・ブルズにとっても、いいトレードになったと思います。
ザック・ラビーン、デマー・デローザン、二コラ・ブーチェビッチのビッグ3体制で結果が残せなかったブルズは、おそらくチームを解体し、再構築する道を選ぶと思います(今までの動きから、中途半端に継続していく可能性もありますが・・・)。
21歳と若く才能にあふれたギディーを獲得し、ある程度自由にプレーさせることで、一気にスター選手になる可能性も高いのではないでしょうか。
NBA屈指のオールラウンダーを中心に新しいチームを形成し、プレーオフを勝ち上がれるチームをつくることが、現在のシカゴ・ブルズに課された使命です。
ブルズには昨シーズンブレイクしたコビー・ホワイトやアヨ・ドスンムという有望な若手ガードがいるため「ギディーいらんやろ」「なんで指名権もらわんやったんや」などの声が上がっているのも事実ですが、ギディーのポテンシャルを考えると、悪くないトレードだったと思いますね。
最初にお伝えしましたが、アレックス・カルーソ、ジョシュ・ギディー両者にとって、そしてシカゴ・ブルズ、オクラホマシティ・サンダー両チームにとっても、よいトレードだったというのが、わたくしリトルの見解です。
まとめ
今回はシーズンオフに入っていきなり飛びこんできたアレックス・カルーソとジョシュ・ギディーのシンプルトレードについて語りました。
今シーズンおおいにNBAを盛り上げたオクラホマシティ・サンダーにとっては確実にチーム力が上がるトレードになったと思います。
シェイ・ギルジャス・アレキサンダー、アレックス・カルーソ、ルーゲンツ・ドート、ジェイレン・ウイリアムズ、チェット・ホルムグレンのスターターは、超強力ですね。
高さにはかけるものの、ディフェンスの強度はボストン・セルティックスに近づいたのではないでしょうか?
シーズン終わったばかりですが、来シーズンが楽しみでしかたありません。
ギディーにも、再建チームでおおいに暴れまわってほしいですね。
その前に、ブルズは中途半端な状況を脱するため、しっかりチームを再構築してほしいんですが・・・。
フロントはどう考えていくのでしょうか?
これから次々と大型トレードがまとまっていくと思われます。
NBAはオフシーズンでもワクワクさせてくれますね!
この夏にはパリオリンピックもありますから、存分にバスケットボールを楽しんでいきましょう!!