熱戦がつづくパリオリンピック。
バスケ男子日本代表は、昨年バスケワールドカップで優勝したドイツ、怪物ウェンバンヤマ擁するフランス、そして最終予選を勝ち抜いてきたブラジルと戦う、グループBに振り分けられました。
初戦のドイツ戦で、素晴らしい戦いをみせたものの77-97で敗れた日本。
2戦目のフランス戦では、勝利をつかみかけながらも、マシュー・ストラゼルの4ポイントプレーで追いつかれ、延長の末90-94でくやしい逆転負けをくらってしまいました。
審判のジャッジに思うところはありますが、まずは最後のブラジル戦に集中しましょう。
日本がブラジルを倒すためには、なにをする必要があるのでしょうか・・・。
今回は予選ラウンド最終戦で対決する、ブラジル代表について語っていきましょう。
レッツラゴー!
ブラジル代表の現在
パリオリンピック出場権をかけた世界最終予選のラトビア会場で勝ち上がり、見事出場権を獲得したブラジル代表。
決勝ではNBAプレイヤーのダービス・ベルターンズ擁するラトビアを破り、2大会ぶりのオリンピック出場を決めています。
ちなみにラトビアは世界ランキング6位。
ブラジルは12位。
地元のラトビアが有利とみられていましたが、決勝では試合開始からブラジルが試投した3ポイント8本をすべて成功させる最高のスタートをみせ、第1クオーターを34-11と圧倒。
その後も余裕をもった試合運びでラトビアを寄せつけず、94-69の大差でブラジルがパリオリンピック出場権を獲得しました。
この試合ブラジルは元NBAプレイヤーのブルーノ・カボクロが21得点、Bリーグのアルバルク東京に所属するレオナルド・メインデスが20得点 9リバウンド、ゴールデンステイト・ウォリアーズに所属するギー・サントスが12得点 7リバウンドを記録するなど主力が躍動。
武器とする3ポイントシュートは、24本中13本を決め、驚異の成功率54.2%を記録しています。
スピードを武器にかきまわし、3ポイントシュートを高確率で決める、日本が目指す戦いかたでオリンピックへの切符をつかみとりました。
パリオリンピックブラジル代表 メンバー一覧
パリオリンピックに出場するブラジル代表の12人のメンバーをまとめます。
2024パリオリンピック ブラジル代表
2 ヤゴ・サントス(ツルヴェナ・ズヴェズダ)PG 178㎝
6 クリスティアーノ・フェリーシオ(仙台89ers)C 206㎝
7 ジジ・ロウザダ(FA)SG 196cm
8 ヴィトール・ベニテ(FA)SG 194㎝
9 マルセリーニョ・ウェルタス(テネリフェ)PG 190㎝
11 ギー・サントス(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)SG/SF 197㎝
14 レオナルド・メインデル(アルバルク東京)SF 201㎝
23 ラウル・ネト(FA)PG 185㎝
32 ジョルジーニョ・デ・パウラ(フランカ)SG 197㎝
45 ジョアン・カルドゾ(FA)SF 198㎝
51 ブルーノ・カボクロ(パルチザン・ベオグラード)PF 206cm
99 ルーカス・ディアス(フランカ)PF 207㎝
パリオリンピック ブラジル代表 主力選手
背番号50 ブルーノ・カボクロ
ブルーノ・カボクロ(KKパルチザン)
スモールフォワード
206㎝ 93㎏
1995年9月21日生(28歳)
NBA通算成績(2014-21)
105試合出場(先発20試合)
4.2得点 2.6リバウンド 0.7アシスト FG40.3% 3P30.8%
パリオリンピック最終予選でラトビア会場のMVPにかがやいたブルーノ・カボクロ。
現在はセルビアのベオグラードを本拠地とする強豪、KKパルチザンに所属しています。
206㎝の高さがありながらアウトサイドシュートも得意とするカボクロは、かつて「南米のケビン・デュラントになる」と期待されたスター候補生でした。
ブラジルの国内リーグでプロデビューしたカボクロ。
17試合の出場で平均4.8得点 3.1リバウンドと平凡な成績だったものの、トロント・ラプターズのスカウト陣がカボクロの将来性にほれこみ、2014年のNBAドラフト1巡目全体20位で指名します。
2014-15シーズン開幕前に発売された雑誌「ダンクシュート NBAコンプリートガイド」のラプターズのページでカボクロの紹介欄をみてみると・・・
「今年のドラフトで最大のサプライズ。まさかの1巡目20位での指名に打って出たラプターズに対しては、当初、懐疑的な意見も少なくなかった。しかし、サマーリーグでは出場5試合でいずれも2桁得点をマーク。平均11.4得点、3.0リバウンド、1.2スティールの好成績を残し、批判の声を黙らせた。インサイドを守れるサイズながら、ガードのような機動力と敏捷性を備え、マッチアップする相手が自分と同じ上背のビッグマンなら、アウトサイドに開き、得意の3ポイント得点を重ねていく。そして大きな特徴である230㎝超のウイングスパンは、守備の局面でも特大の効果をもたらしている。同じく今オフに加入したノゲイラとのブラジル人コンビで、近い将来、ラプターズのインサイドを担っている可能性は十分にあるだろう。まだ19歳になったばかりの現時点での課題は、NBAの激しいフィジカルコンタクトに負けない屈強な身体を作り上げること。今オフはチームの指示を受け、1日6000キロカロリーを摂取する食生活を送っていたという。
「ダンクシュート 11月号増刊 2014-15SEASON NBA COMPLETE GUIDE」より引用
希望に満ちた紹介になっていますね。
ラプターズのスカウトが惚れこんだのもわかる内容になっています。
記事の中にあるノゲイラとは、2013年のNBAドラフト1巡目全体16位という高順位でボストン・セルティックスに指名されたもののスペインでプレーを続け、2014年に交渉権を獲得したラプターズに加入したルーカス・ノゲイラ。
NBAトップクラスのショットブロッカーになるのではと期待された213㎝のセンタープレイヤーでした。
ブラジルコンビに期待が集まりましたが、2人がラプターズで活躍することはありませんでした。
カボクロはルーキーシーズンわずか8試合の出場で平均1.3得点。
2年目は6試合、3年目は9試合のみの出場に終わり、4年目の2017-18シーズン、サクラメント・キングスに放出されます。
将来性を期待され、1巡目全体20位という高順位で指名した選手は、ラプターズでの3年半でわずか25試合の出場、総得点27点(1試合平均1.08得点)とまったく戦力にならなかったのです。
ちなみにもう一人のブラジル出身選手、ルーカス・ノゲイラは4シーズンをラプターズで過ごし、141試合に出場したものの1試合平均3.2得点 2.8リバウンド 1.0ブロックのスタッツしか残せず、NBAを去っています。
NBAは本当にきびしい世界ですね。
カボクロはサクラメント・キングスで10試合に出場し、平均2.6得点 2.2リバウンドを記録したもののチームに定着することはできず。
翌2018-19シーズンは自己最高の34試合に出場し、平均8.3得点 4.6リバウンド 1.0ブロック 3P36.9%とベンチプレイヤーとしてはまずまずの成績を残しますが、翌2019-20シーズン途中にヒューストン・ロケッツに放出されると、再び輝きを放つことはありませんでした。
2020-21シーズン途中にロケッツを解雇されたあとは、ヨーロッパや南米のチームを転々とし、現在はセルビアの強豪KKパルチザンでプレーしているカボクロ。
ただ今年の6月、セルビアリーグプレーオフの最中、チームの承認を受けることなく無断で離脱。
カボクロは「子供の親権をめぐる裁判に出廷するためにチームを離脱する必要があったため、代理人を通じてKKパルチザンに許可を求めたが却下された」と主張しています。
またカボクロの代理人は「チームからの給料の支払いが遅れており、チームにメールで支払いをするよう要請したが無視されたため、契約解除を要請した」と公表。
KKパルチザン側は「カボクロがチームを離脱するまで給料の遅配はなかった」「カボクロに対して5か月分の給料にあたる罰金を科し、2024-25シーズン終了までの契約を保持している」と主張しています。
泥沼のにおいがプンプンしていますね。
どう考えても一番大事なプレーオフ中に、無断で離脱したカボクロが悪い気がしますが・・・。
ちなみに昨年のバスケワールドカップでは、チームトップとなる1試合平均16.4得点 9.2リバウンドを記録。
ブラジルがNBA選手がいない中、最終順位13位と健闘したのも、カボクロの力によるところが大きかったと思います。
チームとのトラブルも抱えるカボクロは、パリオリンピックでも活躍し、よりよい契約をむすべるチームを探すでしょう。
かつて「南米のケビン・デュラントになれる」と期待された選手は、そのポテンシャルを発揮できるのでしょうか?
背番号14 レオナルド・メインデル
レオナルド・メインデル(アルバルク東京)
スモールフォワード
201㎝ 100㎏
1993年3月20日生(31歳)
2023-24 Bリーグスタッツ
59試合出場(先発59試合)
14.5得点 5.1リバウンド 2.9アシスト FG44.9% 3P38.3%
2023-24シーズン、Bリーグのアルバルク東京に所属し、チームをレギュラーシーズン2位に導く活躍をみせたレオナルド・メインデル。
美しい3ポイントシュートと、力強いドライブからのダンクで、何度も観客を熱狂の渦に巻きこんできました。
スーパープレーを決めたあとに咆哮をあげる姿は、会場の温度を一気に沸騰させる力をもっていますね。
見た目もかっこいいですし(笑)。
インサイドでもアウトサイドでも違いをつくれる、オールラウンドプレイヤーです。
1993年生まれの31歳。
2011-12シーズンにプロデビューすると、ブラジルやスペインのチームで活躍を続け、2022年の夏にはNBAのサマーリーグにもフェニックス・サンズのメンバーとして出場しています。
残念ながらサンズと契約にはいたらず、ルーマニアのチームで1年を過ごしたのち、メインデルが次の戦いの場に選んだのは日本でした。
2023-24シーズン、Bリーグのアルバルク東京に加入すると、レギュラーシーズン59試合にすべてスターターとして出場。
1試合平均14.5得点 5.1リバウンド 2.9アシストを記録する活躍をみせ、アルバルクファンから絶大な信頼を勝ちとりました。
メインデルは2015年に初めてブラジル代表入りし、国際大会デビュー。
昨年のバスケワールドカップでは、1試合平均7.4得点 4.2リバウンドを記録しました。
今年の7月2日(現地時間)にラトビアで行われた、パリオリンピック世界最終予選ラトビア会場での決勝で、メインデルは3ポイントシュート4本を含む20得点 9リバウンドと爆発し、ラトビア代表を奈落の底につきおとしました。
当たりだしたら止まらないメインデル。
Bリーグの選手たちのこともよく知るメインデルは、日本代表にとって厄介なあいてになるかもしれません。
背番号11 ギー・サントス
ギー・サントス(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
シューティングガード/スモールフォワード
198㎝ 95㎏
2002年6月22日生(22歳)
2023-24 NBAスタッツ
23試合出場(先発0試合)
3.6得点 2.1リバウンド 0.6アシスト FG50.9% 3P37.0%
期待の若手ギー・サントス。
2022年のNBAドラフト1巡目全体55位でゴールデンステイト・ウォリアーズに指名された、今回のブラジル代表で唯一の現役NBAプレイヤーです。
まだまだ出場試合数も少なく、Gリーグで過ごす時期も多かったものの、2023-24シーズンは23試合に出場。
ときおり光るプレーで素質の高さを感じさせました。
昨年のバスケワールドカップでは、1試合平均7.4得点 3リバウンドを記録。
得意の3ポイントシュートは不発(27.3%)でしたが、多才なフィニッシュで能力の高さをみせつけ、2ポイントは72.7%の高確率で沈めています。
若さあふれるプレーでチームにエナジーをあたえるサントス。
勢いにのせると、日本にとっては厄介な存在です。
背番号19 ラウル・ネト
ラウル・ネト(フェネルバフチェ)
ポイントガ―ド
188㎝ 82㎏
1992年5月19日生(32歳)
NBA通算成績(2015-23)
435試合出場(先発99試合)
5.7得点 1.5リバウンド 2.1アシスト FG45.8% 3P36.1%
今回のブラジル代表の中では、最も実績のあるプレイヤー、ラウル・ネト。
シュート力が高く、ゲームメイクもできる正統派ポイントガードです。
16歳でブラジルリーグでプロデビューしたネトは、2011年にスペインに渡り活躍。
2013年のNBAドラフト2巡目全体47位で指名され、トレードで移籍したユタ・ジャズでNBAデビューをかざりました。
ルーキーシーズンから81試合に出場。
うち53試合は先発出場し平均5.9得点 2.1アシスト 3ポイントシュート成功率39.5%を記録。
チームの信頼を勝ちとります。
翌シーズンからも貴重なバックアップポイントガードとして、ユタ・ジャズ(2015-19)、フィラデルフィア・76ers(2019-20)、ワシントン・ウィザーズ(2020-22)の3チームで活躍をつづけてきました。
ブラジル代表としてデビューしたのは18歳だった2010年。
この年行われたバスケワールドカップにも出場しています。
その後2012年のロンドンオリンピック、2014年のバスケワールドカップ、2016年に地元ブラジルで開催されたリオデジャネイロオリンピックにも出場している経験豊富なネトは、ブラジル代表の精神的支柱です。
昨年行われたバスケワールドカップにもネトは出場しましたが、初戦のイラン戦で右ひざの膝蓋腱を断裂する大ケガを負い、チームを離脱しています。
大会前に契約していたトルコの強豪、フェネルバフチェでは2023-24シーズン、1試合もプレーすることはできませんでした。
それでも、今回のパリオリンピックではブラジル代表に選出されています。
経験豊富な司令塔は、どんなプレーを見せてくれるのでしょうか?
日本がブラジルに勝利するには
日本代表が目標のベスト8入りを果たすためには、グループステージで最低でも1勝する必要があります。
その上で、グループA、グループB、グループC、それぞれのグループの3位のチームの中で①勝ち点の多いチーム、②得失点差の多いチーム(-なら少ないチーム)、③総得点の多いチーム、上位2チームが決勝トーナメントに進めます。
日本が目標とするベスト8入りを果たすためにはまずブラジルに勝利し、できるだけ点差をつける必要がありますね。
ただ、これまでの実績をみると、有利なのはブラジル代表だとみられています。
世界ランキングは日本代表の26位に対し、ブラジル代表は12位。
きびしいパリオリンピック最終予選を勝ち抜いた実力は本物です。
オリンピックに16回出場している南米のバスケ強豪国ブラジル。
NBAを35年間観つづけているわたくしリトルにとって、ブラジル代表といえばリアンドロ・バルボサ、アンダーソン・バレジャオ、ティアゴ・スプリッター、ネネなどのNBA選手を中心とした、身体能力が高くスピードのあるチームという印象でした。
今回のブラジル代表チームに以前のようなNBAのスター選手はいませんが、パリオリンピック世界最終予選で強豪ラトビア代表(バスケワールドカップ2023 5位)を94-69の大差で破った爆発力はあなどれません。
今回紹介したブルーノ・カボクロ、レオナルド・メインデル、ギー・サントスのフォワード陣はフィジカルも強く、技術も高く、3ポイントシュートの成功率も高い強力なラインナップです。
ここは八村塁選手、渡邊雄太選手、吉井裕鷹選手ら日本の誇るフォワード陣がしっかりディフェンスし、抑え込む必要があります。
3ポイントシュートを簡単に打たせない、勢いに乗せないことが重要です。
ブラジル代表の弱点は、ケガで十分なプレーができていないポイントガード陣。
今回紹介したラウル・ネトは昨年のバスケワールドカップで負った膝のケガのあと1シーズンを全休し、パリオリンピック世界最終予選ラトビア大会で復活したものの、初戦のイラン戦をプレーしたのみで離脱。
メンバーには選出されたものの、ネトがどこまで回復しているのかはわかりません。
もう一人25歳の若手ポイントガード、ヤゴ・サントスも、健康面に不安がある一人です。
昨年のバスケワールドカップで1試合平均14.8得点にチームトップの7.2アシストを記録した、178㎝のポイントガード、サントスもラトビアでの世界最終予選で負傷しています。
(と書いていましたが、サントスはいまのところ絶好調ですね・・・。)
残るポイントガード、マルセリーニョ・ウェルタスはすでに41歳。
河村勇輝、富樫勇樹、テーブス海のポイントガード陣がスピードでかき回し、得点やアシストを重ねることができれば、日本の勝利はみえてくるでしょう。
ブラジル代表はパリオリンピック初戦となったフランス戦を66-78で落とすと、2戦目のドイツ戦は73-86と善戦しながらも敗れています。
グループリーグ最終戦、日本がブラジルに勝利するためには何が必要になるのでしょうか。
日本はオフェンスではスピードでかきまわし3ポイントシュートを高確率で沈める。
ディフェンスではガード陣が激しいプレッシャーを与え、フォワード陣は簡単に3ポイントシュートを打たせない、インサイドではカバーディフェンスをしっかりする。
基本的なことの積み重ねが勝利のカギになります。
あとは日本代表とブラジル代表、どちらの爆発力が上まわるのか。
決して簡単な相手ではありませんが、史上最強の日本代表ならやってくれると信じています。
まとめ
今回は日本代表とグループステージ最終戦で戦うブラジル代表についてまとめました。
2大会ぶりにオリンピックに挑む古豪は、決して簡単に倒せる相手ではありません。
しかし、日本が目標にあげるベスト8を達成するためには、絶対に倒す必要がある相手でもあります。
バスケワールドカップでみせた日本代表の爆発力か、パリオリンピック最終予選でみせたブラジル代表の爆発力か。
手に汗握るたたかいを、思う存分楽しみましょう。
がんばれ、日本代表!