いや〜、今年のトレードデッドライン(TDL)もまさに嵐でしたね。
現地時間1月7日にトレイ・ヤングがワシントン・ウィザーズに移籍するビッグトレードが発表されてから、しばくらは静かだったのですが・・・。
終わってみればジャレン・ジャクソンJr.がユタ・ジャズに移籍したり、アンソニー・デイビスがウィザーズでトレイ・ヤングとコンビを組むことになったりと、様々な動きがありました。
特に、我らが河村勇輝選手が所属するシカゴ・ブルズはおおきく動いています。
もともとガードが多かったブルズ。
トレードデッドラインでガードを整理すると思われていたのですが、逆にガードが増えるという異常事態となりました。
今回は、ガードがあふれているシカゴ・ブルズで、われらが河村勇輝選手が生き残ることができるのかを、検証していきたいと思います。
それでは、レッツラゴー!
トレードデッドライン(TDLとは)
まずはじめに、トレードデッドラインとは何か、簡単に説明しましょう。
レードデッドライン(Trade Deadline)とは、NBAにおいてシーズン中に他チームと選手を交換できる最終期限のことです。
例年、レギュラーシーズンの約4分の3が経過した2月の現地時間第2木曜日の15時(2025-26シーズンは日本時間2月6日 午前5時)に設定されます。
この日を過ぎると、シーズン終了まで新たなトレードを行うことは一切禁止されます。
そのため、この期限前にはリーグ全体で「生き残りをかけた戦略的判断」が下され、激しい取引が行われます。
主な動きは以下の2つの立場に分かれます。
- 買い手(Buyers): 優勝やプレーオフ進出を狙う強豪チーム。将来の指名権や若手を放出してでも、即戦力となるスターや不足している役割の選手を補強します。
- 売り手(Sellers): 今季の勝利が難しい再建中のチーム。主力を放出して、将来のドラフト指名権や若手、あるいはサラリーキャップ(年俸総額枠)の空きを確保しようとします。
単なる選手の入れ替えではなく、数年先を見据えたフロント陣の「知略のぶつかり合い」こそが、このデッドラインの最大の醍醐味です。
TDL前に大きく動いたシカゴ・ブルズの現状
今年のトレードデッドライン(TDL)前に、ブルズは大きく動きました。
放出した主な選手
G コビー・ホワイト(⇨ホーネッツ)
G アヨ・ドスンム(⇨ウルブズ)
G ケビン・ハーター(⇨ピストンズ)
C 二コラ・ブーチェビッチ(⇨セルティックス)
獲得した主な選手
G コリン・セクストン(⇦ホーネッツ)
G ロブ・ディリングハム(⇦ウルブズ)
G ジェイデン・アイビー(⇦ピストンズ)
G アンファニー・サイモンズ(⇦セルティックス)
F ガーション・ヤブセレ(⇦ニックス)
長年チームを支えたコービー・ホワイトとアヨ・ドスンムという、ファンにとっても愛着のある主力ガード2人を放出。
シューターのケビン・ハーターと、2度のオールスター出場経験もある35歳のベテランセンター、二コラ・ブーチェビッチも放出し、完全にチーム再建に動きました。
代わりにチームに加入したのは、まさかのガード4選手。
4人ともコンボガードとして、まだまだ大化けする可能性をもったスター候補生たちです。
現在ブルズにはエースポイントガードのジョシュ・ギディーもいれば、昨シーズンスパーズから移籍した司令塔トレ・ジョーンズも在籍しています。
まさに「ガード・パニック」状態。
この過酷なサバイバルの中、身長172cmの「日本の至宝」河村勇輝がどう生き残るのか、そしてブルズの真の狙いは何なのか、考察していきたいと思います!
河村勇輝のライバルたち
トレードデッドラインまでに放出されたコービー・ホワイトとアヨ・ドスンムは、確かに素晴らしい選手でした。
しかし、ブルズのフロントは「今のままでは東の10位前後(プレーイン圏内)が限界だ」と判断したわけです。
そのため、現在のチームを解体し、より若くサラリーが安い選手たちを獲得しました。
今回のトレードの数々で、ブルズは大量のドラフト2巡目指名権もゲットしています。
そこで獲得した選手たちを見てみると、一つの共通点が浮かび上がります。
それは「個の打開力と爆発的なスピード」です。
コリン・セクストンは「ヤング・ブル」の異名通り、猪突猛進のドライブが持ち味のスコアリングガード。
アンファニー・サイモンズは、元々ポートランドでリラードの後継者と呼ばれたほどのピュアスコアラー。
ジェイデン・アイビーは2022年のNBAドラフト1巡目全体5位でピストンズに指名されたシュート力の高い24歳のスラッシャー。
そしてロブ・ディリングハムは2024年のNBAドラフト1巡目全体8位でウルブズに指名された21歳と若く、大化けする可能性のあるポイントガードです。
この新加入の4人のガードに加え、不動の正司令塔ジョシュ・ギディーとゲームメイクに優れた控えポイントガード、トレ・ジョーンズがいるブルズは、もしかすると今NBAで一番ガードポジションの層が厚いチームなのかもしれません。
フロントコートはスカスカですが・・・。
コリン・セクストン
コリン・セクストン
191㎝ 86㎏
PG/SG
1999年1月4日生(27歳)
キャブス⇨ジャズ⇨ホーネッツ⇨ブルズ
2026-26スタッツ(2月10日時点)
44試合 22.7分出場
14.4得点 2.0リバウンド 3.7アシスト
FG48.2% 3P38.3% FT87.3%
2018年のNBAドラフト1巡目全体8位でクリーブランド・キャバリアーズに指名されたスコアリングガード。
2020-21シーズンに平均24.3得点を記録するなど、キャブスで主力として4シーズンを過ごしたのちユタ・ジャズに移籍。
3シーズンにわたってジャズでもインスタントスコアラーとして活躍し、今シーズンからシャーロット・ホーネッツで主に6thマンとして、貴重な戦力となっていました。
経験豊富なセクストンですが、まだ27歳になったばかりです。
フィジカルの強さとスピードが持ち味のセクストンですが、3ポイントシュートも高確率。
上の動画は2021年1月20日に自己ベストの1試合42得点を記録したブルックリン・ネッツ戦ですが、セクストンの得点力の高さがお分かりいただけるかと思います。
アンファニー・サイモンズ
アンファニー・サイモンズ
191㎝ 91㎏
PG/SG
1999年6月8日生(26歳)
ブレイザーズ⇨セルティックス⇨ブルズ
2026-26スタッツ(2月10日時点)
52試合 25.0分出場
14.5得点 2.4リバウンド 2.5アシスト
FG44.4% 3P39.1% FT89.3%
2018年のNBAドラフト1巡目全体24位でポートランド・トレイルブレイザーズに指名されデビューをはたしたサイモンズ。
2021年のスラムダンクコンテストチャンピオンは、ブレイザーズの未来のエースとして期待された逸材でした。
NBA4シーズン目の2021-22シーズン、エースのリラードやマッカラムがケガで欠場すると、サイモンズは力をみせつけ、平均17.3得点を記録。
前年の7.8手得点からジャンプアップをはたし、注目されます。
2022-23シーズンからの2シーズンは平均20点超えを果たし、リラードの後継者として期待されましたが、ディフェンス力の低さが問題となり、この夏ドリュー・ホリデーとのトレードでボストン・セルティックスに移籍していました。
上の動画はサイモンズが1試合39得点を記録した今年の1月15日のヒート戦です。
セルティックスでも、そのシュート力と得点力を十分にはっきしていたことがおわかりいただけるかと思います。
高い得点力が大きな武器となるのか、守備力の不安が大きくなってしまうのか?
ビリー・ドノバンHCの手腕が問われます。
ジェイデン・アイビー
ジェイデン・アイビー
193㎝ 88㎏
PG/SG
1999年6月8日生(24歳)
ピストンズ⇨ブルズ
2026-26スタッツ(2月8日時点)
36試合 17.8分出場
8.5得点 2.4リバウンド 1.8アシスト
FG44.5% 3P38.0% FT80.4%
2022年のNBAドラフト1巡目全体5位でデトロイト・ピストンズに指名されたジェイデン・アイビー。
アイビー自身はルーキーシーズンから平均16.3得点をあげると、2年目も平均15.4得点と活躍をみせましたが、チームは2022-23シーズン17勝65敗、2023-24シーズン14勝68敗と、NBAの歴史上最弱チームの一つと言われていました。
苦しい戦いの中でも、ケイド・カニングハムとともにピストンズの核となったアイビーでしたが、潮目が変わったのが2024-25シーズン。
ピストンズはこの年大躍進し前年から30勝を上積み、44勝38敗で第6シードを獲得する大躍進をとげ、一気に注目を集めたのです。
そんな中、アイビーは左足腓骨骨折の重傷を負い52試合を欠場。
アイビー不在の中、プレーオフ1stラウンドでニューヨーク・ニックスに2勝4敗で敗れると「アイビーが復帰する来シーズンが勝負だ」という声が溢れます。
しかしむかえた今シーズン、左膝の手術を行ったためやや出遅れてコートに戻ってきたアイビーからは、かつての爆発的なスピードが失われていました。
ピストンズのフロントは契約最終年のアイビーを放出することを決定し、ケビン・ハーターらとのトレードでブルズに放出を決断したのです。
失意の中、シカゴの地でアイビーは復活を果たすことができるのか?
今回獲得したガード陣の中で、もっとも成長が期待される選手です。
ロブ・ディリングハム
ロブ・ディリングハム
191㎝ 79㎏
PG
2005年1月4日生(21歳)
ウルブズ⇨ブルズ
2026-26スタッツ(2月10日時点)
37試合 10.0分出場
3.7得点 1.4リバウンド 1.7アシスト
FG34.2% 3P35.1% FT77.3%
2024年のNBAドラフト1巡目全体8位でミネソタ・ティンバーウルブズに指名されたロブ・ディリングハム。
名門ケンタッキー大学では平均15.2得点を記録するなど、高い得点力をもつポイントガードとして注目されたディリングハムは、38歳と高齢になった正司令塔マイク・コンリーの後継者として大きな期待を集めていました。
驚異的なスピードと身体能力をもち、高いドリブルスキルとシュート力を兼ね備えたディリングハムは、アンソニー・エドワーズとともに強豪ウルブズのバックコートを支える存在になると期待されていたのです。
しかしルーキーシーズン、ディリングハムの出場時間は平均10.5分。
期待された得点力を発揮することもできず、1試合平均4.5得点 2.0アシストに終わります。
オフェンスでは違いをみせることができず、ディフェンスでは穴になってしまい、クリス・フィンチHCからの信頼を得ることはできませんでした。
決してガードの層が厚いとはいえないウルブズで出番をもらえなかったディリングハムが、現在のシカゴ・ブルズで生き残ることは相当に難しいかもしれません。
ただそのポテンシャルは一級品です。
上のハイライト動画を観てみてください。
ワクワクするようなプレーでファンを魅了する選手です。
ぜひ河村選手とのコンビを観たいのですがねえ・・・。
まだ21歳のディリングハムには、大化けする可能性もまだまだ残っています。
河村勇輝の生存戦略:5フィート8インチが「スペシャリスト」として輝く条件
さて、本題です。これだけスター候補のガードが揃った中で、2ウェイ契約から這い上がろうとしている河村選手にチャンスはあるのでしょうか?
結論から言いましょう。
「あります。ただし、役割はこれまで以上に限定されるでしょう」。
今回の補強で、ブルズのガード陣は「スコアラー(得点源)」に偏りました。
サイモンズもセクストンもアイビーも、基本的には「自分が点を取ってリズムを作る」タイプです。
一方で、河村選手の最大の武器は「周りを生かす超高速のパス」と「フルコートでの執拗なプレッシャー」です。
河村が生き残るための3つの鍵
- 「純粋なPG」としての希少性: 新加入のメンバーは、SG(シューティングガード)に近い性質を持っています。一方で、純粋にゲームを組み立て、適切なタイミングでエースたちにパスを供給できるのは、今のロスターではジョシュ・ギディーと河村選手くらいです。ギディーがベンチに下がる時間帯、「点取り屋たちの潤滑油」としての需要は必ず発生します。
- ディフェンスの「熱量」: 今回加入した選手たちは、正直ディフェンスが課題です。そこで、試合の流れを変えたい時、河村選手がフロントコートから相手PGを追い回す「フルコートプレス」は、ドノバンHCにとって非常に使い勝手の良いカードになります。先日、マイアミ・ヒート戦で見せた「ジャンプボール勝利」のようなガッツは、シカゴのファンが最も愛する要素です。
- セカンドユニットのテンポアップ: 新加入のディリングハムは河村選手とタイプが似ていますが、経験値では河村選手に分があります。ハーフコートバスケットではなく、リバウンドから一気に前線へ飛ばすパスで展開を早くする。この「スピードスター枠」でディリングハムとの競り合いに勝てるかどうかが、今季終盤の鍵になるでしょう。
「新生ブルズ」の未来図:河村勇輝は“シカゴの新しい顔”になれるか?
今回のTDLで、ブルズは実質的に「再編成(リツール)」を選択しました。
主力2人を出しつつも、即戦力と若手を同時に手に入れたからです。
実は、この環境は河村選手にとって「追い風」になる可能性を秘めています。
なぜなら、これまでの「コービー・ホワイト&アヨ・ドスンム」の体制は確立されすぎていて、割って入る隙が少なかったからです。
しかし、今は全員が「新しいシステム」を手探りで構築している最中。
ここで河村選手が、サイモンズの3Pをアシストし、アイビーの速攻を演出する「最高の女房役」としての立ち位置を確立できれば、一気にローテーション入りが現実味を帯びてきます。
河村勇輝の懸念点
もちろん、厳しい現実もあります。
NBAはビジネスです。
- サイモンズやセクストンのような高額年俸選手は、使わざるを得ない。
- アイビーやディリングハムのような上位指名若手は、育てなければならない。
この「政治的な序列」の中で、河村選手が10分〜15分の出場時間を勝ち取るには、3P成功率40%以上、あるいはアシスト/ターンオーバー比でリーグトップクラスの数字を叩き出す必要があります。
河村選手がかなり厳しい立場に置かれていることは間違いありません。
『Heart over Height(身長より心)』。
これはシカゴのエース候補であるマタス・ブゼリスが河村選手に贈った言葉です。
今のブルズには、この“ハート”が一番必要なんです。
河村選手には、誰にも負けない熱いハートがあります。
ぜひこの苦しい状況の中で存在感を発揮し、ポジションをつかみとってほしいと思います。
まとめ
ブルズのトレードデッドラインは、まさに「ギャンブル」に近い補強でした。
しかし、このガード過多の混沌こそが、河村勇輝という異能のプレイヤーが「自分にしかできない仕事」を証明する絶好のチャンスであるともいえます。
コービー・ホワイトがいなくなった今、ブルズの新しいエネルギーの源は誰になるのか。
私は、あの背番号8番がユナイテッド・センターを熱狂させる瞬間を信じています。
皆さんは、この「超・ガード軍団」の中で河村選手がどう使われるべきだと思いますか?
最後までご覧いただきありがとうございました。

