かつてないほどの盛り上がりをみせている2025年のNBAプレーオフ。
いよいよ残るは4チームになりました。
いわゆる「神試合」といわれる超絶に面白い大逆転劇もあり、起きてはほしくなかった想定外のケガもあり、予想をくつがえすカンファレンスセミファイナル(CSF)となりました。
今回は大波乱となったクリーブランド・キャバリアーズvsインディアナ・ペイサーズのシリーズについて、語ります。
それでは、レッツラゴー!
2025プレーオフ キャブスvsペイサーズ
イースタンカンファレンス第1シードのクリーブランド・キャバリアーズと、第4シードのインディアナ・ペイサーズの戦いは、4勝1敗でペイサーズが勝利しました。
今年のプレーオフで、最も衝撃が走ったシリーズでしたね。
1stラウンドでキャブスはヒートを4勝0敗、ペイサーズはバックスを4勝1敗で倒し、両チームとも勢いに乗っていました。
キャブスのホームでむかえた第1戦。
第4クオーター中盤までは1点を争う接戦でしたが、試合時間残り6分22秒、ハリバートンのステップバック3でリードを奪うと、ネムハードのとんでもディープ3が連続で決まり、一気にペイサーズがリードを広げます。
最終スコア121-112で、アウェイのペイサーズが敵地での初戦に勝利しました。
キャブスにとってはオールスターガード、ダリアス・ガーランドがつま先のケガで出場できなかったのが響きましたね。
キャブスにとって絶対に負けられないホームでの第2戦、ガーランドに加え、今年DPOY(最優秀守備選手賞)を受賞したエバン・モーブリーと、貴重なベンチメンバーのディアンドレ・ハンターまでもがケガのために欠場。
厳しい状況ではじまった第2戦でしたが、キャブスはドノバン・ミッチェルがこの試合48得点と大爆発し、第3クオーターまでに14点をリードします。
第4クオーター、ペイサーズが追い上げますが、このクオーターだけで12得点をあげたミッチェルの活躍でなんとか踏みとどまるキャブス。
試合残り時間48.0秒の時点で、キャブスは7点のリードを奪っていました。
ここでパスカル・シアカムがフリースローをゲットしたものの1本目をミス。
ホームで歓声をあげるキャブスファンと、両手をふりあげ、ファンをあおるミッチェル。
完全に勝負は決したと思いました。
フリースロー2本目、シアカムは再びミス・・・と思った瞬間、飛びこんできたアーロン・ネスミスがプットバンクダンクをたたきこみます。
正直リングにあたる前にネスミスは飛びこんでいるため、バイオレーションだったとは思いますが、ノーホイッスルで得点は認められ、5点差。
つづいてエンドラインからのスローインを受けたミッチェルが、密着マークについたネスミスをかわそうとしてエルボーを入れてしまい、オフェンスファールを吹かれ、残り45.9秒でふたたびペイサーズボールに。
スローインを受けたハリバートンがドライブからレイアップを試みたものの、これはブロックされ、再度ペイサーズボールでのスローイン。
この時、試合残り時間35.1秒で5点差。
ペイサーズはハリバートン⇨ネムハードとボールを回し、最後はシアカムがドライブからレイアップを沈めます。
試合時間残り25.7秒でついに3点差。
タイムアウトのあと、キャブスのスローインの場面では激しいペイサーズのプレッシャーに耐えられず、ストゥルースが不用意にインバウンドパスを入れ、ネムハードにスティールされてしまう考えられないミスを犯します。
ネムハードからボールを受けたハリバートンが、ドライブからのレイアップを試みるも、ミッチェルと接触。
シュートは入らなかったものの、ミッチェルがファールをとられ、ハリバートンにフリースローが与えられます。
この時点で残り12.4秒、3点差。
フリースロー2本を決めても再びキャブスボールとなるため、まだキャブスが圧倒的に有利な状況です。
慎重にフリースロー1本目を沈めるハリバートン。
これで2点差。
2本目は打った瞬間「短い」とわかるシュートで、打ったハリバートンもリバウンドのため、ゴール下に向かいます。
リングの手前に当たったボールは、ペイサーズのマイルズ・ターナーが必死でのばした右手ではじかれ、ゴール下に入りこんでいたハリバートンがキャッチ。
すぐにセンターライン付近までドリブルをついて戻り、タイ・ジェロームとの1on1の状態をつくると、ドライブをすると見せかけて、ステップバック3を放ちます。
ボールは高い放物線を描いて、リングを射抜きました。
120-119とついにペイサーズがリードを奪った時、試合時間は残り1.1秒。
キャブスにはもうタイムアウトは残っていませんでした。
劇的勝利に歓喜するペイサーズの選手たちと、呆然とする会場を埋めたキャブスファンのコントラストが印象的でした。
ガーランド、モーブリー、ハンターの欠場、フリースローミスからのネスミスのプットバックダンク、ミッチェルのオフェンスファール、ストゥルースのインバウンドパスのミス、そして最後の逆転3ポイントにつながったハリバートンのフリースローミスからのオフェンスリバウンド。
数々の奇跡、どれかひとつでも起こっていなければ、キャブスの勝利で終わっていたでしょう。
この敵地での劇的な勝利で、シリーズは一気にペイサーズ優勢となっていきました。
キャブスのホームに戦場をうつした第3戦。
キャブスは第2戦を欠場していたガーランド、モーブリー、ハンターが復帰し、レギュラーシーズンイースト1位の実力をみせつけ、敵地で126-104と圧勝。
ミッチェルは43得点を記録し、エースとしての凄みをみせつけました。
ペイサーズではハリバートンがホームでわずか4得点に終わり「こりゃキャブスが勢いにのってくるで!」なんて友人と話をしていましたね。
しかし第4戦は、これまで絶好調だったドノバン・ミッチェルが不調におちいります。
前半シュート11本のシュートを打ちながら、成功はわずか2本。
フリースローを5本決め、なんとか12得点を記録しましたが、シュートタッチに苦しんでいるのは明らかでした。
第4戦の前半で、チームのシュート成功率は、キャブスがフィールドゴール成功率25.0%(8/32)3ポイントシュート成功率26.3%(5/19)だったのに対し、ペイサーズはフィールドゴール成功率60.0%(30/50)3ポイントシュート成功率66.7%(12/18)と大きな差ができます。
前半を終えたスコアは80-39と、ダブルスコアでペイサーズがリード。
しかも第3クオーター開始前のシューティングで、キャブスのエース、ドノバン・ミッチェルが以前から痛めていた左足首に違和感を覚えロッカールームへ。
この試合コートに復帰することはありませんでした。
第4戦は最終スコア129-109でインディアナ・ペイサーズが圧勝し、ついにシリーズ制覇に王手をかけます。
キャブスのホームにもどった運命の第5戦、コートにはドノバン・ミッチェルの姿がありました。
ケガをおして出場したミッチェルが第1クオーターで13得点をあげ、キャブスはいきなり12点のリードを奪います。
第2クオーターからはペイサーズのシュートが決まりだし、第4クオーターは1点を争う接戦に。
しかし試合残り時間1分49秒の時点で、ミッチェルが与えられたフリースロー3本をすべて失敗するなど、キャブスは最後まで勢いにのることができず。
この試合114-105でペイサーズが勝利し、4勝1敗でカンファレンスファイナル進出を決めました。
第2戦、キャブスファンで埋まったアリーナから、ハリバートンに対し「過大評価だ!」のチャントが巻き起こりました。
これはスポーツメディアの「The Athletic」が発表した選手間アンケートの結果で、ハリバートンが「最も過大評価されている選手」で1位(得票率14.4%)に選ばれたことによるものでした。
シリーズを終えてみると、ハリバートンはキャブスファンへのアンサーを、見事に結果で示しましたね。
カンファレンスセミファイナル キャブスvsペイサーズ 主力スタッツ
カンファレンスファイナルの5試合での、キャブスとペイサーズのスターターのスタッツをまとめてみましょう。
まずはクリーブランド・キャバリアーズ。
クリーブランド・キャバリアーズ
ドノバン・ミッチェル
5試合 32.9分出場
34.2得点 5.8リバウンド 3.8アシスト 2.2スティール
FG42.4% 3P24.5% FT74.6%
ダリアス・ガーランド
3試合 28.5分出場
14.0得点 2.0リバウンド 4.0アシスト 0.3スティール
FG34.2% 3P16.7% FT92.9%
マックス・ストゥルース
5試合 30.6分出場
12.2得点 7.0リバウンド 3.8アシスト
FG38.6% 3P34.1% FT75.0%
エバン・モーブリー
4試合 33.8分出場
18.0得点 9.8リバウンド 1.8アシスト 1.5スティール 1.3ブロック
FG57.8% 3P42.9% FT82.4%
ジャレット・アレン
5試合 29.8分出場
12.8得点 7.0リバウンド 1.4アシスト 1.2ブロック
FG67.6% 3P ー FT90.0%
平均34.2得点をあげたミッチェルでしたが、シュート効率は決してよくはありませんでしたね。
特に3ポイントシュートは成功率24.5%と、レギュラーシーズンの36.8%から大きく落としてしまいました。
ミッチェルは足の状態がよくなかったことが、シュートが安定しなかった原因でしょう。
それでも全試合に出場し、平均34.2得点をあげ攻守にキャブスを牽引したミッチェルは、エースの仕事をまっとうしたと思います。
厳しかったのはダリアス・ガーランド。
今シーズン平均19.9得点をFG47.2% 3P40.1%のシュート効率で決めていたのですが、カンファレンスセミファイナルではつま先のケガの影響が大きく、壊滅的なスタッツに終わっています。
本来であれば復帰してはならないほど、つま先のケガの状態は悪かったのでしょう。
エバン・モーブリーは安定したスタッツを残していますが、それだけに第2戦の不在が響きましたね。
モーブリーのディフェンス力と、安定した得点力があれば、第2戦の逆転劇は起きなかったかもしれません。
次にインディアナ・ペイサーズ。
インディアナ・ペイサーズ
タイリース・ハリバートン
5試合 33.0分出場
17.4得点 4.6リバウンド 7.0アシスト 0.6スティール 1.0ブロック
FG54.4% 3P45.8% FT77.8%
アンドリュー・ネムハード
5試合 33.3分出場
14.2得点 3.4リバウンド 7.2アシスト 1.4スティール
FG52.0% 3P50.0% FT80.0%
アーロン・ネスミス
5試合 29.1分出場
14.4得点 6.6リバウンド 1.6アシスト 1.2ブロック
FG50.0% 3P44.8% FT81.8%
パスカル・シアカム
5試合 30.3分出場
17.8得点 6.4リバウンド 3.8アシスト
FG53.7% 3P43.8% FT58.8%
マイルズ・ターナー
5試合 29.7分出場
16.2得点 7.2リバウンド 1.0アシスト 1.0スティール 2.8ブロック
FG50.9% 3P56.3% FT78.3%
こうしてまとめてみると、ペイサーズの選手たちのシュート効率のよさが目立ちます。
特に3ポイントシュートの成功率は、もうバグってますね。
スターターで一番3ポイントシュートの成功率が低いパスカル・シアカムでも43.8%の高確率で(7/16)決めています。
センターのマイルズ・ターナーにいたっては、16本中9本の3ポイントを沈め、驚異の成功率56.3%!
試合終盤の大事な場面でも決めていましたね。
チーム全体でも、カンファレンスセミファイナルの5試合で164本の3ポイントシュートを放ち、69本成功。
成功率42.1%を記録しています。
対するキャブスは194本の3ポイントシュートを放ち成功数は57本と、成功率は29.4%。
この差は大きかったですね。
ハリバートンは数字以上の存在感をみせつけ、チームを勝利に導いて来ましたし、ネムハードは今年もプレーオフでの強さを発揮しました。
クラッチタイムのバックコートコンビの強さは、本物ですね。
スターター全員がフィールドゴール成功率50%以上というのも、驚異的です。
スターター全員どこからでも同じように得点できるのも、ペイサーズの強み。
相手はどこから攻めてこられるのかわからない状況ですから、対応は難しかったと思います。
さすがに全員のシュートが好調な状態は、そう続かないとは思いますが、ペイサーズの選手たちが勢いに乗っているのは確かです。
敗退したキャブスの今後
最高のレギュラーシーズンをおくったキャブスですが、プレーオフでは強さを発揮することができませんでした。
ペイサーズに敗れたもっとも大きな要因は、健康状態でしょう。
ダリアス・ガーランド、エバン・モーブリー、ディアンドレ・ハンターの欠場がなければ、結果は違っていたかもしれませんし、シリーズ平均34.2得点をあげたドノバン・ミッチェルも、足の具合は悪そうでした。
現在「キャブスは今のロスターでは優勝できない」「キャブスは解体すべき」という声が、ネット上であがっていますが、わたくしリトルは「今のロスターで来シーズンも勝負するべき」だと思います。
レギュラーシーズンの64勝18敗はすばらしい記録ですし、健康体でさえあれば、キャブスの優勝も十分ありえたと思います。
「ミッチェルではチームを優勝に導くことができない」という意見もみかけましたが、万全な状態ではないのに平均34.8得点をあげ、ディフェンスにも手を抜かない選手は、NBAといえどもそうはいないでしょう。
しかも今シーズンは、新ヘッドコーチにケニー・アトキンソンをむかえてまだ1年目。
今シーズンの経験を経て、来シーズンさらに強くなって帰ってくるのではないでしょうか。
レギュラーシーズン、最強のベンチメンバーとして大活躍したタイ・ジェロームは、キープできないと思いますが、主力の契約は来シーズンも残っていますから。
せめてもう1シーズン、キャブスはビッグ4体制で優勝を目指すべきだと思うのですが・・・。
ペイサーズの強み
ペイサーズの強みは、選手層の厚さと勝負強さ。
そしてエースのタイリース・ハリバートンの存在です。
キャブスとのシリーズでは、スターター全員が平均14得点以上を記録し、ベンチにもベネディクト・マサリン(11.4得点)オビ・トッピン(8.8得点)TJ・マッコネル(7.2得点)など、試合の流れを変える力をもつ実力者がそろっています。
ただ実力者がそろっているだけではなく、一人ひとりがプレーオフというプレッシャーのかかる試合で、実力以上の力を発揮しました。
圧倒的に不利といわれる中カンファレンスセミファイナルを勝ち抜けたのは、キャブスにケガ人が続出したことも大きな要因ですが、ペイサーズの選手たちの「絶対にやってやる」という気持ちが相手を上回ったことが、最大の理由だと思います。
特にシューティングガードのアンドリュー・ネムハードの勝負強さは、本物です。
かつて「ビッグショットロブ」と言われたロバート・オーリーを思い出すほど、大事な場面でビッグショットを決めつづけいているネムハード。
オーリーと違って試合を決定づけるショットではなく、絶体絶命の状態から希望をつなぐビッグショットを沈めています。
シアカムやターナーも、緊迫した場面で弱気になることなく、戦っていますね。
そして勝負強さが際立つ選手たちをまとめるのが司令塔のタイリース・ハリバートン。
「もっとも過大評価されている選手」として盛大にいじられているハリバートンですが、プレーオフでの活躍でアンチをも黙らせています。
ミルウォーキー・バックスと戦った1stラウンドでは、3ポイントシュート成功率26.8%とシュートタッチが悪かったハリバートンですが、クラッチタイムの勝負強さでチームを勝利に導き、キャブスとのカンファレンスセミファイナルでは、FG54.4% 3P45.8%と、手がつけられない状態となっていました。
シュートタッチがよくても「俺が俺が」になるのではなく、チーム全体をコントロールし、勝負所で自ら試合を決めに行く姿は、リーダーとして本当にかっこいいですよね。
苦手とされるディフェンスでも奮闘しています。
「もっとも過大評価される選手」ではないことをすでに証明したハリバートンは、ペイサーズをファイナルまで導くことができるのでしょうか?
ペイサーズの不安点
ペイサーズの不安点はスターパワー不足。
カンファレンスファイナルに進出するチームには、シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(サンダー)、アンソニー・エドワーズ(ウルブズ)、ジェイレン・ブランソン(ニックス)と、爆発力のあるスーパースターがそろっています。
ディフェンスの強度があがり、緊張感高まるプレーオフファイナルでは、勝負どころで圧倒的な得点力をもつスーパースターの活躍が、チームを勝利に導いてきました。
NBAファイナルを制した歴代のチャンピオンチームをみると、ほとんどのチームに理不尽な得点力をもつスーパーエースがいるんです。
わたくしリトルがNBAを観はじめた1980年代後半からのチャンピオンチームで、スーパーエースがいないチームは、1988-89、1989-90の2連覇をはたした〝バッドボーイズ″デトロイト・ピストンズと、2003-04シーズンの同じくピストンズくらいではないでしょうか。
ハリバートンをはじめ、良い選手はそろっており、ベンチの層もあついペイサーズですが、独力で30得点できるスーパースターはいません。
ただ、今年のプレーオフをみるかぎり、勝負所のハリバートンの強さは本物です。
ハリバートンがこれまでの殻をやぶる成長をみせることができれば、定説をひっくり返して、ペイサーズが勝利をつかむことができるかもしれません。
カンファレンスファイナルで戦うニューヨーク・ニックスは、超強力なスターター5人が揃っていますが、ベンチを含めた選手層では、ペイサーズが上回っています。
スーパースターがチームをNBAチャンピオンに導くという定説を、全員バスケのペイサーズがくつがえすのか?
タイリース・ハリバートンが一気にスーパースターへと成長するのか?
ペイサーズがニックスに勝利するには、どちらかが必要となるでしょう。
まとめ
今回は激闘のすえクリーブランド・キャバリアーズを下した、インディアナ・ペイサーズについて語ってきました。
誰もがキャブス勝利を予想する中、全員バスケでカンファレンスセミファイナルを制したペイサーズ。
思わず応援したくなるチームでした。
ちょっと出来すぎだった気もしますが、この勢いはニックスとのカンファレンスファイナルでもつづくのか?
1998-99 、1999-00と、2シーズン連続でカンファレンスファイナルで戦い、わたしたちオールドファンを熱狂させたニックスとペイサーズ。
この2チームの戦いは、楽しみでしかたありません。
選手たちがケガなく、激闘をくりひろげてくれることを願います。
最後までごらんいただき、ありがとうございました。

