【アイザイア・トーマスまとめ】河村勇輝にエールを送った小さな元MVP候補

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2023-24シーズンも終盤となったところで、嬉しいニュースが届きました。

かつてボストン・セルティックスのエースとして、旋風を巻き起こしたアイザイア・トーマスが、現地時間3月20日のフィラデルフィア・76ers戦で、約2年ぶりにNBAのコートに立ったのです。

10日間契約でフェニックス・サンズの一員となったトーマスは、サンズの勝利が決まった第4クオーター残り1分48秒から出場。

アイザイアがコートに立つと、サンズのホームアリーナ、フットプリント・センターは拍手と大歓声に包まれました。

観客も、トーマスがどれほど苦しんでいるのかを知っていますからね。

35年間NBAを観つづけているわたくしリトルが、もしアリーナにいたら・・・

きっと涙を流して拍手を送っていたでしょう。

それほどまでに、トーマスのバスケ人生は波乱万丈でした。

今回は小さな身体でNBAの世界に飛びこみ、一瞬の強烈な光を放った悲運のエース、アイザイア・トーマスについて語ります。

目次

アイザイア・トーマス 名前の由来

アイザイア・トーマスは1989年2月7日、ワシントン州タコマで生まれました。

父親は航空機の製造を行っているボーイング社で部品の検品係として働く、熱狂的なレイカーズファン。

1988年のNBAファイナル、ロサンゼルス・レイカーズがデトロイト・ピストンズを破り、2連覇を果たした際、父ジェームズ・トーマスは友人とある賭けをします。

「来年のファイナルもレイカーズが勝つ!」

「負けたら、来年の2月に生まれる子の名前を・・・アイザイアにする!」

息子の名前を、敵チームのエースにするという屈辱的な約束を、父は思わず口走ってしまったのです。

当時のピストンズは〝バッドボーイズ″と呼ばれ、勝つためなら暴力的なディフェンスもいとわない、荒くれものの集団でした。

アイザイア・トーマスは、バッドボーイズのリーダー的存在のポイントガード。

NBAの歴史上、マジック・ジョンソンに次ぐポイントガードと評されることもある、名ポイントガードです。

ただし「天使の笑顔と悪魔の心を持つ男」と言われているほど、他のチームからは嫌われている選手でした。

なんといっても、〝バッドボーイズ″と呼ばれるほど暴力的なチームのリーダーですからね。

ビル・レインビア、デニス・ロッドマン、リック・マホーン・・・

現代ならコンプライアンス的に許されないようなチームでしたから(笑)。

愛するわが子の名前に、敵対するチームの悪名高いエースの名前をつける・・・

なかなかにハードな賭けですね。

迎えた1989年のNBAファイナル、対戦するチームは昨年と同じロサンゼルス・レイカーズvsデトロイト・ピストンズ。

結果はなんとピストンズが4勝0敗でチャンピオンに!

レイカーズは見事にスウィープをくらい、ジェームズ・トーマスの息子はアイザイア・トーマスとなることが決定しました。

ささやかな抵抗か、ピストンズのアイザイア(Ishiah)とスペルを変え、Isahiahとしています。

さぞや屈辱だったろうと思いましたが、賭けをしてから約1年間、息子の名前について考えていて、両親はアイザイアという名前が気に入ってしまったそうです(笑)。

アイザイア・トーマスNBA入りまで

息子の名前をアイザイア・トーマスにするくらいですから、父親のジェームズは熱狂的なNBAファンでした。

アイザイアも、そんな父の影響でバスケにのめりこんでいきます。

ただし父親のジェームズは身長167㎝。

アイザイアも小学校、中学校時代はクラスで一番背が小さかったそうです。

しかし、アイザイアのバスケへの情熱、身体能力は飛びぬけていました。

人一倍練習を続け、身体をいじめ抜き、高校3年生の時には平均32.8得点を記録するスター選手となります。

175㎝の身長ながらダンクシュートを楽々と決め、アウトサイドシュートを次々と射ぬくスピードスター、アイザイアを誰も止めることはできなかったのです。

しかし身長が低いがゆえに、過小評価されているのも事実でした。

なんとか地元ワシントン大学から奨学金のオファーを受けたアイザイアは、カレッジバスケの世界でも違いをみせつけました。

大学1年生の時からスターターとして活躍すると、3年生の時には1試合平均16.8得点 3.5リバウンド 6.1アシストを記録。

PAC10カンファレンス代表に選出され注目を集める存在となりました。

大学3年生のシーズンを終えると、2011年のNBAドラフトにアーリーエントリーすることを決定します。

アイザイアは圧倒的な能力を評価されながらも、175㎝という身長がネックとなり、2011年NBAドラフト最後の一人、2巡目全体60位でサクラメント・キングスに指名され、なんとかNBA選手の仲間入りを果たしました。

キングス~サンズ時代

NBAデビューは、2011-12シーズン開幕戦、対レイカーズ。

トーマスは13分9秒の出場で5得点 2リバウンド 2アシストを記録し、NBAの世界での第一歩を刻みました。

ルーキーシーズン、ドラフト最下位で指名されたトーマスは、シーズン30試合目から先発ポイントガードに抜擢されると、周囲の予想を大きく覆す活躍をみせます。

65試合に出場し、うち37試合に先発出場。

1試合平均11.5得点 2.6リバウンド 4.1アシスト FG44.8% 3P37.9%を記録し、NBAオールルーキー2ndチームに選出されました。

キングスは2011年のNBAドラフトで、トーマスのほかにドラフト1巡目全体10位でジマー・フレデッテ(ミルウォーキー・バックスが指名後トレードでキングス加入)、2巡目全体35位でタイラー・ハニーカットと、2人の大学バスケ界のスター選手をチームに加えていましたが、まさかドラフト最下位で175㎝のトーマスが最も活躍するとは、誰も考えていなかったでしょう。

ちなみにジマー・フレデッテはNBAで6シーズンを過ごした後、中国リーグで活躍(1試合73得点記録したことも)。

現在はバスケットボールから3×3(スリー・バイ・スリー)に戦いの場を移し、今年行われるパリオリンピックのアメリカ代表に選ばれています。

タイラー・ハニーカットは2018年に民家に立てこもり、警察との銃撃戦の末に自殺するという衝撃の事件を起こし、この世を去っているんですよね・・・。

記事を書いていて思い出してしまいました・・・。

2年目のシーズン、出場した79試合のうち62試合で先発出場し、平均13.9得点を記録すると、3年目の2013-14シーズン、トーマスは大きくスタッツを伸ばします。

出場した72試合中54試合で先発出場し、平均20.3得点 2.9リバウンド 6.3アシストを記録。

175㎝と超小柄なため、ディフェンスで大きなハンデを背負いながらも、圧倒的なスピードとテクニック、シュート力で、得点を量産します。

3月18日に行われたワシントン・ウィザーズ戦では24得点 11リバウンド 10アシストを記録し、NBA史上最も身長が低いトリプルダブルを記録するなど、異次元の活躍をみせました。

驚異的な活躍でアイザイア・トーマスは一躍話題の選手となりましたが、キングスは28勝54敗と大きく負け越し、フロントはトーマスをフェニックス・サンズへと放出します。

迎えた2014-15シーズン、サンズでは6thマンとして活躍。

サンズには当時エリック・ブレッドソー、ゴラン・ドラギッチと優秀なガードが揃っていたため、トーマスの出場時間は前年より約9分少ない25.7分に限られたものの、それでも平均15.2得点を記録。

得点力が本物であることを証明します。

そして2月19日にトーマスにとって運命のトレードが行われ、ボストン・セルティックスに移籍。

まさかボストン・セルティックスで絶対的エースと呼ばれることになるとは、この時は誰も思っていなかったでしょう。

ボストン・セルティックスでの躍進

2014-15シーズン後半、セルティックスに加入した後もトーマスは6thマンとして出場を続け、平均26.0分の出場時間にとどまりながらも、19.0得点と得点力をいかんなく発揮。

NBA最優秀6thマンの投票で、ルー・ウイリアムズ(当時トロント・ラプターズ)に次ぐ2位の票を集めました。

2015-16シーズン、トーマスはレギュラーシーズン82試合すべてに出場。

そのうち79試合でスターターを務めます。

1試合平均32.2分出場し、22.2得点 3.0リバウンド 6.2アシストを記録。

チームの得点リーダーとして、セルティックスを48勝34敗の好成績に導きました。

身長のハンデを強気なプレーとリーダーシップで克服し、初めてのオールスターにも選出されています。

トーマスはプレーオフでも大活躍。

チームはアトランタ・ホークスに2勝4敗で敗れたものの、1試合平均36.7分出場し、24.2得点3.0リバウンド 5.0アシストを記録。

ディフェンスの強度が大きく増すプレーオフでも、十分活躍できることを証明しました。

175㎝の小さな攻撃型ポイントガードは、ついに名門ボストン・セルティックスのエースとして、誰もが認める存在となったのです。

運命の2016-17シーズン トーマス大爆発 そして悲劇

迎えた2016-17シーズン。

アイザイア・トーマスはNBAの歴史に深く刻まれる大活躍をみせます。

開幕から名門セルティックスのエースとして、高得点試合を連発すると、12月30日に行われたマイアミ・ヒート戦では52得点と大爆発し、チームを117-114の勝利に導きました。

この試合トーマスはフィールドゴール26本中15本成功(57.6%)。

3ポイントシュートは13本中9本を決めきり(69.2%)、フリースローは13本全て成功、52得点を記録しています。

トーマスは1点を争う展開となった第4クオーターだけで、29得点を記録。

第4クオーターの得点としてはNBAの歴史上2番目の記録となりました(1位はウィルト・チェンバレンが100得点した試合の第4クオーターで記録した31得点)。

これだけの大記録を達成した選手が、身長175㎝、ドラフト2巡目最下位で指名された選手ですから・・・当時は本当に驚かされましたね。

トーマスは、勝負所の第4クオーターで圧倒的な活躍を見せることから、「第4クオーターの王(The King Of Fourth)」と呼ばれるようになりました。

オールスターにも当然のように2年連続出場しています。

2016-17シーズン、アイザイア・トーマスのスタッツは・・・

28.9得点 2.7リバウンド 5.9アシスト FG46.3% 3P37.9%

出場した76試合すべて先発し、平均33.8分出場。

このシーズンの平均得点(28.9得点)は、ラッセル・ウエストブルック(OKC 31.6得点)、ジェームズ・ハーデン(HOU 29.1得点)に次ぐリーグ3位。

自らの活躍とリーダーシップで、名門ボストン・セルティックスを53勝29敗、イースタンカンファレンス1位に導いたのです。

観客は2mを超える大男たちの中で戦う、自分たちと変わらない身長のトーマスの活躍に熱狂しました。

2016-17シーズンのMVP投票では、ステフィン・カリー(6位)を上回る5位の票を集めています。

トーマスはオールNBA2ndチームに選出されるなど、リーグを代表するクラッチプレーヤーとして高い評価を得ました。

賞賛を集めたレギュラーシーズンの勢いそのままに、プレーオフに闘志を燃やしていたトーマスでしたが、思いもよらない悲劇が彼を襲うのです。

トーマスの悲劇① 最愛の妹の死

シカゴ・ブルズとのプレーオフ1stラウンド第1戦の前日、衝撃的なニュースが飛び込んできました。

アイザイア・トーマスの妹、チャイナ・トーマスさんが自動車事故で他界してしまったのです。

享年22歳。

トーマスは試合前日の練習後に、妹の死を伝えられました。

どれほどのショックだったか、想像もつきません。

NBAコミッショナーのアダム・シルバーやセルティックスのブラッド・スティーブンスHC、チームメイトや友人たちが哀悼の意を表明し、沈痛な空気が流れる中、ブルズとの初戦を迎えます。

ブラッド・スティーブンスHCは「トーマスとその家族は辛い時期にいる。」「昨夜も、そして今日も話をしたが、もし彼が出場を望まないのなら、希望を叶えるつもりだ。」と語っていました。

第1戦当日、アリーナに現れたトーマスが憔悴しきっているのは明らかでした。

シュート練習中にベンチに座り涙を流すトーマス、その横で慰めるチームメイトのエイドリー・ブラッドリー。

この光景を見たとき、誰もがトーマスがバスケットボールをプレーすることはできないと感じたでしょう。

しかし、身長による低評価や偏見を、自らの実力で覆らせてきたトーマスの強さは本物でした。

ブルズとの第1戦、スターターとしてアイザイア・トーマスがフロアに立つと、ホームTDガーデンの観客は、スタンディングオベーションでトーマスに敬意を表します。

この試合、102-106でセルティックスは惜しくも敗れたものの、トーマスはゲームハイの33得点 6リバウンド 6アシストと大活躍をみせ、自らの決意を体現しました。

試合後、ブラッド・スティーブンスHCは会見で「彼は信じられない選手。信じられないほど強い人間だ。」と語り、チームメイトのエイドリー・ブラッドリーは「アイザイアの強さが感じられる試合だった。彼は根っからの競技者で、今夜は妹のため、家族のためにプレーしたんだ。」と、トーマスの強さを讃えました。

対戦相手のブルズのエース、ジミー・バトラーも「乗り越えるのは本当に大変だろう。それでも彼は、今日の試合でどういう選手なのかを示した。コートに出て、チームのために戦う選手だということをね。」と語り、敬意を表しています。

苦しい第1戦を終えた後、ホームで迎えた第2戦。

トーマスは20得点を記録したものの、ジミー・バトラー、ドウェイン・ウェイドの22得点を筆頭に、6選手が2桁得点を記録したブルズに97-111で完敗。

ホームでの2試合に敗れ苦しい状況が続く中、第2戦終了後に、最愛の妹を失くしてから沈黙を続けていたトーマスが、セルティックスの公式Twitter上で声明を発表しました。

「自分の愛する妹チャイナがこの世からいなくなる日が来るなど、想像したこともありませんでした。自分にとって妹と家族の存在はすべてだからです。今の気持ちを言葉で形容することはできません。この1週間は、間違いなく人生で最も辛い1週間でした。それと同時に、皆さんが自分に下さった愛情、支援に驚いています。友人、家族、ファン、ボストンの街、球団、NBAコミュニティには、この上ないほど感謝しています。ここ数日の間に皆さんが下さったサポートに心から感謝しています。そして、愛する家族とともに喪に服し、この辛い現実から立ち直ろうとしている時期にプライバシーを尊重してくださり、感謝しています。」

想像を絶する悲しみの中戦うトーマスに、チームメイトも奮起します。

敵地での第3戦から、セルティックスは4連勝をかざり、見事1stラウンドを突破。

トーマスはシリーズ平均23.0得点 4.3リバウンド 5.7アシストを記録し、悲しみの中チームを牽引しました。

カンファレンスセミファイナルで戦うのは、ジョン・ウォール&ブラッドリー・ビールの強力ガードコンビ擁する、ワシントン・ウィザーズ。

トーマスは第1戦から33得点を記録し、セルティックスを勝利に導くと、第2戦ではオーバータイムにもつれこむ大接戦の中、自己新記録の53得点をたたき出しました。

このカンファレンスセミファイナル第2戦、トーマスのスタッツは・・・

53得点 4リバウンド 4アシスト 3スティール FG54.5% 3P41.7%

トーマスはこの試合44分33秒に出場。

セルティックスの5点ビハインドで迎えた第4クオーターには、一人で20得点を荒稼ぎ。

オーバータイムでも、チームトップの9得点を記録し、セルティックスを129-119の勝利に導きました。

トーマスが記録的な活躍をみせたこの日は、チャイナ・トーマスの23回目の誕生日となるはずだった日でした。

試合後トーマスは「私がやることはすべて妹のためだ。天国から見守っていてくれる。」と語っています。

トーマスが逆境の中でもがきながらも、懸命に前を向く姿が印象的でした。

セルティックスとウィザーズの戦いは、第6戦までお互いのホームチームが勝利する大熱戦となります。

ボストンで行われた最終第7戦、トーマスの29得点の活躍もあり、4勝3敗でセルティックスは勝利。

レブロン・ジェームズ擁するクリーブランド・キャバリアーズが待つ、カンファレンスファイナル進出を決めました。

トーマスの悲劇② 運命を変えたケガ

カンファレンスファイナルの大一番を迎えるにあたって、トーマスには不安がありました。

現地時間3月15日のミネソタ・ティンバーウルブズ戦で、センターのカール・アンソニー・タウンズに乗られたかたちとなり、股関節を負傷。

痛みをこらえながら、プレーオフで戦っていたのです。

妹を亡くした悲しみと、自らの股関節の痛み、その中でチームを牽引する活躍を続けるトーマスに、ファンの注目も集まり、声援は日に日に大きくなっていきました。

カンファレンスファイナルで戦うクリーブランド・キャバリアーズは、前年のNBAチャンピオン。

レブロン・ジェームズ、ケビン・ラブ、カイリー・アービングの強力ビッグ3を擁し、ここまでプレーオフ8戦全勝と絶好調な状態です。

レギュラーシーズンではセルティックスが2ゲーム差リードしていたものの、カンファレンスファイナルの前評判では、キャブス有利の声が大半でした。

第1戦、トーマスは38分15秒出場。

17得点 10アシストと奮闘した者の、チームは104-117で完敗します。

試合後のインタビューで「僕たちはキャブスを恐れなかったし、彼らはモンスターではない。」と語ったトーマス。

第2戦からの巻き返しを誓っていました。

しかし、歴史的な活躍をみせたアイザイア・トーマスの2016-17シーズンは、突然終わりを迎えます。

ボストンの本拠地TDガーデンで行われた第2戦。

トーマスは先発出場し、第1クオーターにフリースローを2本決めたものの、フィルドゴール3本をすべてミス。

第2クオーターは9分13秒出場したものの、得点をあげることはできず、明らかに普通ではない状態でした。

結局後半トーマスがコートに戻ることはなく、セルティックスは86-130、44点差でキャブスに完敗してしまいます。

試合後、セルティックスのブラッド・スティーブンHCは、ウィザーズとのカンファレンスセミファイナル第6戦から、トーマスの右臀部の痛みが強くなっていたと説明。

ウィザーズとカンファレンスファイナル進出を争った第7戦では、試合前に検査を受けてから出場していた事実を明かしました。

後にトーマスは、当時のセルティックスの対応を批判しています。

セルティックスの医療班は、股関節のケガを負ったままプレーを続けるリスクを、トーマスに説明していなかったというのです。

セルティックスを勝利に導くため、限界まで戦い続けたトーマスは、カンファレンスファイナル第2戦で、ついに力尽きてしまいました。

トーマスを失ったセルティックスは、前年王者のキャブスに1勝4敗でやぶれ去り、大躍進のシーズンを終えました。

非情なトレード  その後・・・

シーズン後半から、ファンの間では「トーマスはMAX契約に値するのか?」という議論が白熱していました。

トーマスとセルティックスの契約は2017-18シーズンまでとなっていましたから。

レギュラーシーズンの活躍をみると、間違いなくMAX契約に値するものの、問題となるのはやはり175㎝という身長。

セルティックスはトーマスをエースとして今後戦っていくべきか・・・。

ファンだけでなく、NBAアナリストの中でも活発な議論が行われていました。

そしてシーズン終了後、プレーオフでのケガを経て、セルティックスが出した答えは・・・

チームからの放出でした。

カンファレンスファイナルで戦ったクリーブランド・キャバリアーズと、ボストン・セルティックスの間で、ビッグトレードが成立したのです。

ボストン・セルティックス獲得

カイリー・アービング


クリーブランド・キャバリアーズ獲得

アイザイア・トーマス
ジェイ・クラウダー
アンテ・ジチッチ
ドラフト1巡目指名権(2018年)

カイリー・アービングが、レブロンから離れて自分の実力を示したいと、チームにトレードを要求したため実現したトレードでしたが、トーマス本人やボストンのファンにとって、ショックの大きい結末となってしまいました。

今考えると、セルティックスフロントの判断は正しかったと思います。

ケガの影響で、トーマスが再びNBAの世界で輝くことはありませんでしたから。

ただ、トーマスがセルティックスのために全身全霊を注いできたことを考えると、あまりにも切ない判断だったと感じますね。

ボストンファンにとって、アイザイア・トーマスは特別な存在でした。

カイリー・アービングがボストンを混乱におとしいれチームを去った後、今でもブーイングが続く理由は、「カイリーがトレード要求しなければ、トーマスは・・・」というファンの思いも混じっているのではないかと思います。

キャブス移籍後、トーマスはケガの影響で攻撃力が低下。

1試合平均14.7得点を記録したものの、フィールドゴール成功率36.1%(前年46.3%)、3ポイント成功率25.3%(前年37.9%)と大きくシュート成功率を落としてしまいます。

攻撃力が落ちた175㎝の選手に、NBAの世界はあまりにも厳しいものでした。

2018年2月にロサンゼルス・レイカーズにトレードで放出されたトーマスは、3月29日に「臀部を手術し今シーズン残り全試合を欠場する」と発表。

シーズン終了後デンバー・ナゲッツに移籍したものの、12試合の出場にとどまります。

ワシントン・ウィザーズと1年200万ドルで契約した2019-20シーズンは、先発ポイントガードのジョン・ウォールが長期離脱したこともあり、主にスターターとして40試合に出場。

ルーキーだった八村塁選手とともに戦いました。

しかし、トーマスの衰えは誰の目にもあきらかでした。

2020年2月のトレードデッドライン直前、3チーム間トレードでロサンゼルス・クリッパーズに放出されたトーマスは、2日後に解雇を言い渡されました。

その後は10日間契約とGリーグを行き来する、厳しいバスケ生活を続けているトーマス。

それでもトーマスのバスケへの情熱は、まったく衰えていませんでした。

今年の3月7日にGリーグのソルトレイクシティ・スターズに入団したトーマスは、復帰初戦で32得点と格の違いをみせつけると、出場した4試合すべてで30点超えを記録。

ついにフェニックス・サンズと10日間契約を結び、3月20日のフィラデルフィア・76ers戦で約2年ぶりにNBAのコートに立ちます。

かつて所属したフェニックス・サンズには、9年ぶりの復帰でした。

サンズのホームコートでの大歓声の意味が、おわかりいただけたでしょうか。

まとめ

今回は悲劇のエース、アイザイア・トーマスについて語りました。

昨年のバスケワールドカップの時には、日本代表のポイントガードとして大暴れした河村勇輝についてメッセージを送ったトーマス。

トーマスは親交があり、現在日本代表のアソシエイトヘッドコーチを務めるコーリー・ゲインズに「あのリトルマンはキラーだな」とメッセージを送りました。

自分より小さな172㎝の河村勇輝選手のプレーが、かつての自分と重なったのでしょう。

さらに「リトルマンに、これで正式にリトルガイ・クラブのメンバーだと伝えておいてくれ。ちびは力を合わせていかないとな」とも送っています。

河村選手はパリオリンピックで、再びトーマスの心を動かすことができるのか。

夏が楽しみですね。

記事をまとめている途中の3月30日、トーマスはオクラホマシティ・サンダー戦で今シーズン2回目の出場を果たし、5得点を記録。

試合残り5分59秒にドライブからゴール下でシュートを決めると、残り5分29秒には見事に3ポイントシュートをヒットしました。

サンズが大きくリードを許し、試合をあきらめた後、最後の7分35秒でしたが、トーマスの雄姿は輝いてみえましたね。

10日間契約が延長となるのか、今はまだわかりませんが、トーマスの挑戦を応援していきたいと思います。

名門ボストン・セルティックスのエースとして、一瞬の輝きを放ったトーマス。

彼の挑戦はまだまだ続きます。

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