連日熱戦が続いているパリオリンピック。
男子バスケットボールでは、スーパースターがそろうアメリカ代表が注目を集めていますね。
ただし初代ドリームチームの時代とは違い、現在のNBAは世界中にスター選手が散らばっています。
ドリームチームはアメリカ代表だけではないんです。
今回はアメリカに次ぐスター軍団、カナダ代表について、NBAを35年間観つづけているわたくしリトルが語ります。
2024 カナダ代表の現在
昨年行われたバスケワールドカップ、準決勝でセルビアに敗れたものの3位決定戦でアメリカ代表をやぶりパリオリンピック出場権を獲得したカナダ代表。
長きにわたり国際大会では結果が残せなかったカナダ代表ですが、NBAのトッププレイヤーがそろう現在のチームは、世界の頂点をねらうだけの力をもっています。
昨年のワールドカップメンバーにデンバー・ナゲッツのジャマール・マレーがくわわり、カナダ史上最強チームで挑むパリオリンピック。
本番前の親善試合、初戦のアメリカ代表には72-86で敗れたものの、2戦目のフランス戦(85-73)、3戦目のプエルトリコ線(103-93)には勝利し、順調な仕上がりを感じさせました。
パリオリンピック初戦では、ミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボ擁するギリシャ代表に86-79で勝利。
2戦目のオーストラリア戦は93-83、3戦目のスペイン戦にも88-85で勝利し、グループリーグ3連勝で決勝リーグ進出を決定しています。
パリオリンピックカナダ代表 メンバー一覧
史上最強と言われるカナダ代表のメンバー12人をまとめます。
2024パリオリンピック カナダ代表
0 ルーゲンツ・ドート(オクラホマシティ・サンダー)SG/SF 193㎝
1 ニキール・アレキサンダー・ウォーカー(ミネソタ・ティンバーウルブズ)SF 196㎝
2 シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)PG 198cm
3 メルビン・エジム(ウニカハ・マラガ)SF 201㎝
4 ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)PG 193㎝
7 ドワイト・パウエル(ダラス・マーベリックス)PF/C 208㎝
8 トレイ・ライルズ(サクラメント・キングス)PF 206㎝
9 RJ・バレット(トロント・ラプターズ)SG/SF 198㎝
13 ケリー・オリニク(トロント・ラプターズ)C 211㎝
19 アンドリュー・ネムハード(インディアナ・ペイサーズ)PG/SG 193㎝
24 ディロン・ブルックス(ヒューストン・ロケッツ)SG/SF 198㎝
92 ケム・バーチ(バスケット・ジローナ)PF 203㎝
12人中10人が現役のNBAプレイヤー。
昨年のバスケワールドカップメンバーからは8名が引き続き選出されています。
新しく加わったのは、サクラメント・キングスで活躍するトレイ・ライルズ、インディアナ・ペイサーズでブレイクしたアンドリュー・ネムハード、NBAで6シーズンを過ごしたのち現在はスペインリーグに所属するケム・バーチ、そしてジャマール・マレー。
明らかに昨年のワールドカップの時より戦力がアップしています。
選手のネームバリューは、アメリカ代表に次ぐ豪華さですね。
パリオリンピック カナダ代表 主力選手
背番号2 シェイ・ギルジャス・アレキサンダー
シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)
ポイントガード
198㎝ 88㎏
1998年7月12日生(26歳)
2023-24 75試合出場(先発75試合)
30.1得点 5.5リバウンド 6.2アシスト FG53.3% 3P35.3%
NBA通算 386試合出場(先発377試合)
22.8得点 4.7リバウンド 4.9アシスト FG49.6% 3P34.9%
カナダ代表不動のエース、シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(SGA)。
今NBAでもっともブレイクしている選手といっても、過言ではないでしょう。
2023-24シーズンは所属するオクラホマシティ・サンダーをウエスタンカンファレンス首位に導く活躍をみせ、オールNBA1stチームに選ばれています。
シーズンMVP投票でも二コラ・ヨキッチに次ぐ2位の票を集めたSGA。
最大の魅力は、圧倒的な得点力。
SGAの場合は派手なプレーではなく、ジャンプシュートなどでいとも簡単に得点してしまうので「気がついたら30点も取ってた!」なんて試合が多いんですよね。
なめらかなドリブルから、ヌルヌルとゴール下に入ってきたかと思えば、多才なフィニッシュで得点を重ね、リーグ3位の1試合平均30.1得点を記録しています。
特に勝負のかかったクラッチタイムでの強さは群を抜いており、何度も土壇場でチームを勝利に導いてきました。
クラッチプレイヤー・オブ・ザ・イヤーの投票でも、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、デマー・デローザン(シカゴ・ブルズ)に次ぐ3位の票を集めています。
SGAのもう一つの武器がディフェンス。
対人ディフェンスの強さはリーグ屈指で、1試合平均2.0スティールはNBA全体で2位の数字です。
身長198㎝に対して、ウイングスパンは驚異の211㎝。
この手の長さとスピードを存分に生かしたディフェンスは、SGAの大きな武器となっています。
感情を爆発させるタイプではなく、冷静にオフェンス・ディフェンス両面でチームに貢献するSGAは、国際大会向きの選手なのかもしれません。
昨年のバスケワールドカップでは、1試合平均24.5得点 6.4リバウンド 6.4アシストを記録。
これまで国際大会で実績のなかったカナダを3位に導き、大会のベスト5に選出されています。
ちなみにバスケワールドカップ2023の大会ベスト5にはほかに、ドイツのデニス・シュル―ダ―、セルビアのボグダン・ボグダノビッチ、アメリカのアンソニー・エドワーズ、スロベニアのルカ・ドンチッチが選出されました。
スター揃いのカナダ代表の中でも、群を抜いた実力をもつSGA。
カナダ代表がさらに躍進するには、彼の活躍がかかせません。
背番号24 ディロン・ブルックス
ディロン・ブルックス(ヒューストン・ロケッツ)
シューティングガード/スモールフォワード
198㎝ 102㎏
1996年1月22日生(28歳)
2023-24 72試合出場(先発72試合)
12.7得点 3.4リバウンド 1.7アシスト FG42.8% 3P35.9%
NBA通算 417試合出場(先発390試合)
14.2得点 3.2リバウンド 2.0アシスト FG41.8% 3P34.5%
現代の悪童ディロン・ブルックス。
相手を挑発することにかけては超一流。
敵にしたら本当に心の底から嫌な選手でしょう。
ただし味方になれば実に心強い、フィジカルもメンタルも強いウイングプレイヤーです。
ブルックスの最大の強みは、フィジカルなディフェンス。
屈強な肉体をもつブルックスは、NBA屈指のペリメーターディフェンダーとして、高い評価を得ています。
コート内外でのトラッシュトークも含めて、本当に相手にしたくない選手ですね(笑)。
そんなブルックスにとって、2023-24シーズンは特別なシーズンでした。
NBAデビューから6シーズンを過ごしたメンフィス・グリズリーズから、ヒューストン・ロケッツに移籍し迎えた最初のシーズンだったからです。
2022-23シーズン、ウエスタンカンファレンス2位の好成績でグリズリーズはプレーオフに挑みました。
プレーオフ1stラウンドの相手はプレーイントーナメントを勝ち上がったロサンゼルス・レイカーズ。
ブルックスはレイカーズとのシリーズで、1試合平均10.5得点 3.0リバウンド 1.8アシスト FG31.2% 3P23.8%と低調な出来におわり、グリズリーズが2勝4敗でアップセットされた戦犯とされました。
プレーだけでなく、レブロンを「年寄り」と挑発したり、第3戦でレブロンの股間にパンチをして悶絶させるなど、問題行動を連発するブルックスに見切りをつけたグリズリーズのフロントは、シーズン終了後FAとなるブルックスに対し、冷酷な宣告をします。
「いかなる状況においても、再契約しないことを決定した」
球団としての断固たる決意がかんじられます。
グリズリーズからは不要とされたブルックスでしたが、ペリメーターディフェンダーの需要が高いのが現在のNBA。
「ブルックスは1年あたり1200万ドル以上の契約を希望している」と言われていましたが、結局ヒューストン・ロケッツと結んだ契約の内容は、4年8000万ドル(約120億円 1㌦=150円)と高額なものでした。
ヒューストン・ロケッツでは、トロント・ラプターズから移籍した司令塔のフレッド・バンブリートと共に若手を支え、前年22勝60敗でウエスタンカンファレンス15チーム中14位だったチームを、41勝41敗の11位まで躍進させています。
昨年のバスケワールドカップでは、カナダの主力として、チームを3位にみちびく大活躍をみせたブルックス。
1試合平均27.0分出場し、15.1得点 2.9リバウンド 2.6アシスト FG59.4% 3P58.8%と驚異的な成功率でシュートを決め続けました。
特にアメリカ代表との3位決定戦でブルックスは、3ポイントシュート7本成功。
39得点 4リバウンド 5アシスト 2ブロックと大爆発し、アメリカを破り3位となる原動力となりました。
実況のアナウンサーがブルックスのことを「たぐいまれなるシュート力を誇る・・・」と紹介していたのが印象的でしたね。
ブルックスのことをSNSなどで「たぐいまれ」と呼ぶことが流行りました(笑)。
パリオリンピックでも、カナダ代表を勢いづける活躍をみせることができるでしょうか?
いらぬトラブルを引き起こさなければよいのですが・・・。
背番号9 RJ・バレット
RJ・バレット(トロント・ラプターズ)
シューティングガード/スモールフォワード
198㎝ 97㎏
2000年6月14日生(24歳)
2023-24 58試合出場(先発58試合)
20.2得点 5.4リバウンド 3.3アシスト FG49.5% 3P36.0%
NBA通算 329試合出場(先発328試合)
18.4得点 5.4リバウンド 2.9アシスト FG43.5% 3P34.6%
昨年のバスケワールドカップ、カナダ代表の中で、シェイ・ギルジャス・アレキサンダーに次ぐ得点をあげたのが、左利きのシューター、RJ・バレット。
得点パターンの多いスコアラーです。
バレットにとっても、2023-24シーズンは変化のシーズンとなりました。
2019年のNBAドラフト1巡目全体3位でニューヨーク・ニックスに指名され、5シーズン目を戦っていたバレットに、トレードのニュースが飛びこんできたのは昨年の暮れ、12月31日(現地時間30日)のことでした。
トレードの内容は・・・
トロント・ラプターズ獲得
RJ・バレット
イマニュエル・クイックリー
2024年ドラフト2巡目指名権
ニューヨーク・ニックス獲得
OG・アヌノビー
プレシャス・アチウワ
マラカイ・フリン
ニックスのフロントは、万能フォワードOG・アヌノビーを獲得するために、スコアラーのRJ・バレットとポイントガードのイマニュエル・クイックリーをトロント・ラプターズへ送りました。
ニックスの未来と期待されたバレットは、再建中のトロント・ラプターズへ放出されたのです。
ただしバレットはカナダのオンタリオ州トロント出身。
地元へのトレードを、素直に喜んでいる様子でした。
家族や友人の前でプレーできるって、そりゃうれしいですよね。
2023-24シーズン、バレットのトレード前とトレード後のスタッツを比較すると・・・
ニューヨーク・ニックス(26試合出場)
18.2得点 4.3リバウンド 2.4アシスト FG42.3% 3P33.1%
トロント・ラプターズ(32試合出場)
21.8得点 6.4リバウンド 4.1アシスト FG55.3% 3P39.2%
あきらかに地元トロントに帰ってから、スタッツがよくなっています。
特にシュート成功率の差は大きいですね。
カナダのトロント生まれのバレットにとって、大都会ニューヨークは居心地がわるかったのかもしれません。
NBAを35年間観つづけているわたくしリトルは、クリス・マリン以来の左利きシューター好き。
オリンピックでの、RJ・バレットの覚醒を期待します。
背番号0 ルーゲンツ・ドート
ルーゲンツ・ドート(オクラホマシティ・サンダー)
シューティングガード/スモールフォワード
193㎝ 100㎏
1999年4月19日生(25歳)
2023-24 79試合出場(先発79試合)
10.9得点 3.6リバウンド 1.4アシスト FG43.8% 3P39.4%
NBA通算 292試合出場(先発283試合)
12.8得点 3.8リバウンド 1.6アシスト FG40.3% 3P34.7%
シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(SGA)とともに、オクラホマシティ・サンダー躍進の原動力となったルーゲンツ・ドート。
ドラフト外から這いあがった苦労人は、リーグ有数の守備職人としてチームに欠かせない選手に成長しています。
筋肉もりもりの強靭な肉体で、相手エースにプレッシャーをかけ続けるドート。
これまでシュートが弱点と言われていましたが、2023-24シーズンは3ポイントシュート成功率39.4%と、オフェンスでも大きく貢献しました。
アメリカ代表に守備職人のドリュー・ホリデーが欠かせないように、カナダ代表にはルーゲンツ・ドートが欠かせない選手となっています。
昨年のバスケワールドカップでは平均18.5分出場と、やや出場時間は少なかったものの、相手エースにマッチアップする役目をまっとうしました。
ディロン・ブルックスとのディフェンシブウイングコンビは、相手チームの脅威となるでしょう。
背番号4 ジャマール・マレー
ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)
ポイントガード
193㎝ 98㎏
1997年2月23日生(27歳)
2023-24 59試合出場(先発59試合)
21.2得点 4.1リバウンド 6.5アシスト FG48.1% 3P42.5%
NBA通算 469試合出場(先発395試合)
17.5得点 3.7リバウンド 4.5アシスト FG45.2% 3P38.0%
強豪デンバー・ナゲッツで二コラ・ヨキッチとともにWエースをつとめるジャマール・マレー。
パリオリンピックに挑む、今回のカナダ代表の目玉選手です。
2021年4月に左膝の前十字靭帯を断裂し、2021-22シーズンを全休。
2022-23シーズンに復活し65試合に出場したものの、体調面を考慮して昨年のバスケワールドカップは欠場しました。
2023-24シーズン、シーズン序盤にハムストリングを痛めるなど、59試合の出場にとどまりましたが、1試合平均21.2得点を記録。
特に試合終盤のクラッチタイムでは、抜群の勝負強さを発揮しています。
ロサンゼルス・レイカーズと戦ったプレーオフ1stラウンドは、第2戦と第5戦、シリーズで2度のブザービーターを決めきり、4勝1敗でのシリーズ突破に大きく貢献しました。
カナダ代表でもシェイ・ギルジャス・アレキサンダーとのWエースとして期待されているマレーですが、パリオリンピックのグループリーグの3試合(ギリシャ戦 オーストラリア戦 スペイン戦)では、すべてベンチ出場で2ケタ得点なし(8点 5点 4点)と、波にのりきれていません。
決勝トーナメントではマレーの勝負強さを発揮する場面がくるのか、このまま調子をつかめないまま終わってしまうのか・・・。
9年ぶりに代表に復帰したマレーの活躍が、カナダのメダル獲得には、絶対に必要になると思います。
背番号19 アンドリュー・ネムハード
アンドリュー・ネムハード(インディアナ・ペイサーズ)
ポイントガード/シューティングガード
191㎝ 87㎏
2000年1月16日生(23歳)
2023-24 68試合出場(先発47試合)
9.2得点 2.1リバウンド 4.1アシスト FG49.8% 3P35.7%
NBA通算 143試合出場(先発110試合)
9.3得点 2.4リバウンド 4.3アシスト FG46.7% 3P35.3%
インディアナ・ペイサーズ期待の若手、アンドリュー・ネムハード。
圧倒的な身体能力とスピードを武器に、チームに勢いをもたらす得点力の高いポイントガードです。
今年のプレーオフでは、ケガで欠場となったタイリース・ハリバートンに代わり、ペイサーズを牽引しました。
ボストン・セルティックスと戦ったカンファレンスファイナルでは、1試合平均21.0得点 3.8リバウンド 7.8アシスト FG54.1% 3P47.6%と大活躍。
残念ながらチームは0勝4敗でスウィープされてしまいましたが、ネムハードは大きく評価を上げました。
パリオリンピックグループリーグのスペイン戦で、SGAに次ぐ18得点を記録したネムハード。
攻守に躍動する若手ポイントガードはNBAでの勢いそのままに、パリの地でも輝くことができるのでしょうか?
まとめ
今回はパリオリンピックで金メダルを目指す、カナダ代表について語ってきました。
エースのシェイ・ギルジャス・アレキサンダーを中心に、優秀なスコアラーとディフェンダーがそろうカナダ代表は、打倒アメリカの一番手とみられています。
スター軍団を率いるのは、来シーズンブルックリン・ネッツの新ヘッドコーチとなることが決定しているジョルディ・フェルナンデス。
41歳の若き名将は、カナダ代表のレベルをさらに引き上げることができるのでしょうか。
初めて出場した1936年のベルリンオリンピックで銀メダルを獲得して以来、オリンピックの舞台では結果を残せていないカナダ代表。
6大会ぶりのオリンピック出場で、88年ぶりのメダル、そして悲願の金メダル獲得をめざします。