NBA開幕直前に、うれしいニュースが飛び込んできました。
ワタナビーこと渡邊雄太選手が、キャンプ契約で参加していたプレシーズンマッチの活躍を認められ、ブルックリン・ネッツの開幕ロスターに残ったのです。
約35年間NBAを観続けてきたわたくしリトルにとって、日本人が開幕ロスターを勝ち取るなんて、ちょっと前までは想像すらできないことでした。
ワシントン・ウィザーズで主力として活躍する八村塁選手とともに、今シーズンも私たちファンをワクワクさせる活躍をしてほしいですね。
今回は、ブルックリン・ネッツについて、そしてワタナビーの現在の立ち位置と今後の課題について語ります。
ワタナビーの開幕ロスター入りの経緯
2022年8月28日、ブルックリン・ネッツは、フリーエージェントとなっていた渡邊雄太と契約したことを発表します。
契約内容は非公開でしたが、ワタナビー本人がTwitterで、「お祝いコメントたくさんありがたいですが、あくまでまだ無保証のキャンプ契約です。崖っぷち精神でまた頑張ります。」とコメントしたように、厳しい内容でした。
ただ、これまでもことごとく厳しい崖っぷちの中、実力を証明し契約を勝ち取ってきたワタナビー。
きっとやってくれると思いながらも、「今回はさすがにきびしいかな・・・」とも思っていました。
ブルックリン・ネッツでは、プレシーズンの間に15人のロスター枠を17人で争う状態。
実際はほとんどの選手が契約保証されているため、キャンプ契約で参加している渡邊雄太、レイクワン・グレイ、クリス・チオーザで1つの椅子を争う状態でした。
迎えたプレシーズンマッチで、ワタナビーは4試合すべてに出場し、1試合平均15.0分プレー、5.8得点、3.0リバウンド、3ポイント成功率50パーセントと、まずまずの活躍をみせます。
ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュの使い方をみても「これは、ワタナビー戦力として認められているな。」と感じていました。
そして2022年10月15日、「ネッツはレイクワン・グレイとクリス・チオーザを放出」とのニュースが流れ、ワタナビーの開幕ロスター入りがほぼ決まります。
そして、10月17日にワタナビーの開幕ロスター入りがついに確定。
ワタナビーは自身のSNSで「無事残りました。」「本当の戦いはこれから。常に上を目指して引き続き崖っぷち精神で頑張ります!」と喜びと決意を語りました。
これまでも、崖っぷちの状況から常に結果をだしつづけているワタナビー。
本当に尊敬します。
ワタナビー ブルックリン・ネッツでの立ち位置
ブルックリン・ネッツで開幕を迎えることになっても、まだまだ安心できないのが、NBA。
ブルックリン・ネッツでは、現状セス・カリー、ジョー・ハリス、そして今シーズンからネッツに加わったTJ・ウォーレンと、3人の主力選手がケガで離脱しています。
その3選手が復帰してくることは、チームにとっては大きな戦力アップとなりますが、ワタナビーにとっては出場するチャンスがなくなる可能性も出てくるでしょう。
特にチームでの役割がかぶるTJ・ウォーレン(SF 203㎝)が復帰してくるまでに、チーム内で実績をつくっておかないと、厳しい立場になります。
ワタナビーの契約内容は発表されていませんが、無保証であることは間違いないため、1月になる前にカットされる可能性もあります。
開幕時の序列でいくと、2way契約の選手を除く15人の中で、15番目。
ここからディフェンスと3ポイントで戦力となることを毎試合少ないチャンスでアピールし、勝利に貢献し、チーム内での序列をあげていくことが必要になります。
一番下からとにかく上をみて戦う。
これまでワタナビーがNBAで行ってきたこととなんら変わりません。
ワタナビーなら、きっとネッツにとってなくてはならない存在になる。
私たちも信じて応援しましょう。
ブルックリン・ネッツが抱える問題とは
ここで、ワタナビーが加わったブルックリン・ネッツについてまとめます。
ブルックリン・ネッツ
2021-22成績 44勝38敗 (イースト7位)
2022プレーオフ成績 1回戦敗退 0勝4敗(対ボストンセルティックス)
ヘッドコーチ スティーブ・ナッシュ
主要メンバー ※スタッツは2021-22シーズン 1試合平均
⑦ケビン・デュラント (F 208㎝)29.9P 7.4R 6.4A
⑪カイリー・アービング(G 188㎝)27.4P 4.4R 5.8A
⑩ベン・シモンズ (G 211㎝) 0.0P 0.0R 0.0A
言わずと知れたスーパースター軍団。
東京オリンピックでもアメリカのエースとして活躍した、現在NBAでもナンバー1の点取り屋ケビン・デュラント。
NBAの中でも特別なテクニックとスピードを持ったポイントガード、カイリー・アービング。
リバウンド、アシスト、ディフェンス・・・シュート以外の項目はすべてNBAトップクラスだが、昨シーズン1試合もプレーしていない、211㎝の大型ポイントガード、ベン・シモンズ。
そのほかにも、ステフィン・カリーの弟でシューターのセス・カリー。
2度年間スリーポイント成功率のチャンピオンになっているシューターのジョー・ハリス。
短時間で得点を稼ぐインスタントスコアラーのパティ・ミルズなど、シューター陣の層も厚いチームです。
選手をみれば、優勝候補にあげられるチームであることは間違いないのですが、いろいろと問題も抱えているチームでもあります。
問題① ケビン・デュラントの移籍させろ問題
2022年、フリーエージェントの選手との交渉解禁日7月1日の前日、(現地時間6月30日)、ケビン・デュラントはブルックリン・ネッツに対して自身のトレードを要求します。
しかも、デュラントが希望するチームは昨シーズン東西のレギュラーシーズン1位、マイアミ・ヒートとフェニックス・サンズでした。
またバスに乗る気ですか・・・。
トレード要求の理由はわかりませんが、チームに関する不満がたまっていたことは間違いないでしょう。
デュラントがショーン・マークスGMとスティーブ・ナッシュHCの退任を要求したことでも、明らかです。
9月26日に行われた開幕前のメディアデーでデュラントは、ネッツの一貫性のなさや、ロスターの変更がフラストレーションにつながったと明かしています。
2021年、ブルックリン・ネッツと4年契約を結ぶものの、ジェイムズ・ハーデンの移籍などでチーム目指す方向がわからなくなったと正直に語りました。
結局トレードは実現せず、新シーズンに臨むことになりましたが、はたしてデュラントはブルックリン・ネッツで優勝を勝ち取るために、気持ちを切り替えて戦うことができるのでしょうか?
問題② ベン・シモンズ ぐずり問題
2021-22シーズン1試合もプレーしていないのに、NBAニュースの中心にいたベン・シモンズ。
おそらく、NBAの歴史の中で一番ぐずっていたのではないでしょうか?
2020-21シーズンのプレーオフ、フィラデルフィア・セブンティーシクサーズに所属していたシモンズは、レギュラーシーズンで1試合平均14.3得点、7.2リバウンド、6.9アシストの成績を記録。
3年連続のオールスター出場、2年連続のオールディフェンシブ1stチーム選出など、すばらしい活躍をみせました。
しかし、迎えたプレーオフではシュート力のなさを徹底的につかれ、フリースローをわざと打たされる〝ハック戦術″の標的となります。
ワシントン・ウィザーズとのファーストラウンドでは、シクサーズがあっさりと3連勝した後の第4戦、意図的にシモンズにファウルする〝ハック・ア・シモンズ″を仕掛けられ、11本のフリースローのうち、5本しか決められずチームも敗戦。
第5選に勝利し、カンファレンスセミファイナルに進みますが、イーストの第1シードで優勝を狙っていたシクサーズに暗雲が立ちこめました。
カンファレンスセミファイナルの相手は第5シードのアトランタ・ホークス。
ホークスは、ウィザーズと同様、勝負どころで徹底的にシモンズにファールし、フリースローラインに立たせます。
フリースローを外しまくったシモンズは自身をなくしたのか、シュートを打てなくなり、迎えた最終第7戦、残り時間3分30秒、86対88と2点ビハインドの場面で、決定的なミスをおかしてしまいました。
シモンズはゴール下でホークスのダニーロ・ガリナリをかわし、誰もがノーマークでダンクと思った瞬間、横にいたマティス・サイブルになぜかパス。
サイブルはファールを受け、フリースローを1本外します。
勝負どころの消極的なプレーでシクサーズは勢いを失い、ホークスに敗退する決定的なプレーとなりました。
徹底的にハックの標的となり、フリースローを落とし続けたシモンズは、シュートを打つことが怖くなっていたのかもしれません。
ウィザーズ、ホークスと対戦したプレーオフで、シモンズのフリースローはなんと成功率34.2%の低確率。
そりゃ狙われますよね。
批判を一身にあびたシモンズは、シーズン後にエルトン・ブランドGM、ドック・リバースHCと面談し、チームに残りたくないこと、トレーニングキャンプにも参加しないことを伝え、シーズン前の練習参加も拒否しました。
プレイオフ敗退後のインタビューで、「ベン・シモンズはNBAタイトルコンテンダーのポイントガードになれると思う?」と聞かれたドック・リバースHCが「今はわからない。」と答えたことも、トレード要求した原因だとも言われています。
自分をかばってくれない指揮官に嫌気がさしたのでしょうか?
トレード要求に関しても、多方面から批判を浴びたシモンズは、2021-22シーズン開幕直前10月19日の練習にやっと参加しますが、ここでもぐずってやる気のない態度をみせ、激怒したドック・リバースに帰宅を命じられます。
それまで擁護する発言をしていたチームメイトのジョエル・エンビードもシモンズの態度を批判するなど、完全に居場所を失ったシモンズ。
結局その後セブンティシクサーズで試合に出場することはありませんでした。
2月にフィラデルフィア・セブンティシクサーズからブルックリン・ネッツにトレードとなり、ようやくシモンズのプレーが観られるかと思いましたが、今度はコンディション不足と腰痛で欠場が続き、結局1試合も出場なし。
はたして2022-23シーズン、シモンズはどんな活躍をみせてくれるのでしょうか?
2022-23シーズン開幕戦のニューオーリンズ・ペリカンズ戦では、4得点 5リバウンド 5アシスト、6ファール退場と、ブランクを感じさせたシモンズ。
ちなみにフリースローは2本打って両方外しています。
2試合目のトロント・ラプターズ戦では、6得点 10リバウンド 8アシストとまずまずの活躍をみせました。
はたして、ブルックリン・ネッツで本来の実力を発揮し、勝利に貢献できるのか?
そしてブルックリンのファンに認めてもらえるのか?
またブーイングの餌食になり、ぐずってしまうのか?
今年のネッツのカギをにぎる選手であることは間違いありません。
問題③ カイリー・アービング変人問題
カイリー・アービングは、NBAの中でも最高のテクニックを持った、誰もが認めるトップポイントガードです。
そして、NBAでトップクラスの変人であることも、誰もが認めているんじゃないでしょうか?
クリーブランド・キャバリアーズでレブロン・ジェームズ、ケビン・ラブとのBIG3を結成、3年連続ファイナル進出している中(2015-16シーズンは優勝)、カイリーは突如チームにトレードを要求。
理由は、「チームのファーストオプションとして活躍したい」「レブロンの陰になりたくない」という超利己的なものでした。
3年連続ファイナル進出していた状況でのトレード要求には、耳を疑いました。
その後移籍したセルティックスでは、オールNBAセカンドチームに選出される活躍をみせますが、チームの若手とトラブルを起こすなど、問題児ぶりは変わらず。
「地球は平らだ」と地球平面説をとなえ、後に全世界の理科の先生に謝罪するという、謎のニュースもセルティックス時代にはありました。
その後プレーヤーオプションを破棄してFAとなり、ブルックリン・ネッツへ移籍。
セルティックスファンに対して、「セルティックスとの再契約を希望している」とコメントしていたため、ネッツへの移籍が決まった際は、ファンから大きな反感を買っていました。
移籍後のセルティックス戦で、コート中央のセルティックスおじさんのロゴをあからさまに踏みつけ、「リスペクトに欠ける行為だ」と、ファンやセルティックスOB(ケビン・ガーネット、ケンドリック・パーキンス、グレン・デイビスなど)から大きな批判を浴びることもありましたね。
ブルックリン・ネッツ入団後、カイリーは〝個人的な事情″というよくわからない理由で、無断でチームを離脱する問題行動を複数回起こします。
コートに立てばすばらしいプレーをみせるため、フロントやチームメイトも、対応に困ったのではないでしょうか?
そして2021-22シーズン、NBAが万全なコロナ対策を行い開幕する中、カイリーは〝ワクチンを接種しない″ことを決断します。
開幕当時ワクチン未接種の場合、ブルックリンのあるニューヨーク州をはじめ、いくつかの州ではプレーが認められていませんでした。
カイリーは開幕から無期限出場停止状態で、チーム練習にも参加できない状態が続きましたが、2022年1月5日のインディアナ・ペイサーズ戦に初出場すると、シーズン29試合の出場で1試合平均27.4得点 4.4リバウンド 5.8アシストとまったく衰えをみせない活躍をします。
もちろん、個人の思想や、宗教的な信条もあるのでしょうが、もうちょっとバスケットボールに集中してもらえないものでしょうか?
現在30歳。引退するまでに、そう多くの時間が残されているわけではありません。
カイリーが全身全霊でバスケに打ち込めば、ブルックリン・ネッツの優勝もありえると思うのですが・・・。
まとめ
今回は、ワタナビーこと渡邊雄太選手の開幕ロスター入りと、ワタナビーが加入したブルックリン・ネッツが抱える問題について語りました。
ネガティブなことも色々と書いてしまいましたが、〝優勝を目指せるだけのポテンシャルを持ったチーム″であることは間違いありません。
そんな強豪チームの一員として、ワタナビーが躍動する姿を観続けられるよう、期待しています。
ディフェンスは信頼されているので、3ポイントの確率を上げていけば、貴重なベンチプレーヤーとして認められるのではないでしょうか?
今年もNBAで日本人の活躍を観れる幸せをかみしめながら、応援していきたいと思います。
おめでとう!がんばれ!!ワタナビー!!!
あとは、フリースローを・・・。