2025年夏、もっとも補強に力を入れたチームといえば、ウエスタンカンファレンスではヒューストン・ロケッツ。
そしてイースタンカンファレンスでもっとも積極的に補強に動いたのは、アトランタ・ホークスでしょう。
直近4シーズンはプレーイン出場と、煮えきらない状況が続いていたホークスが、ついに今年勝負をかけてきました。
トレイ・ヤングの契約が今シーズンかぎりであることも、注目を集めている理由の一つです。
2025-26シーズン、もっともワクワクするチームとしてアトランタ・ホークスをあげる人も多いでしょう。
今回は、本気で優勝を狙いにくるであろうアトランタ・ホークスについて語っていきたいと思います。
レッツラゴー!
アトランタ・ホークスこの夏の補強
2024-25シーズンを40勝42敗のイースタンカンファレンス8位と煮えきらない順位で終えたホークス。
4年連続で進んだプレーイントーナメントでは、オーランド・マジックとマイアミ・ヒートに連敗し、シーズンを終えました。
シーズン終了後に、ホークスのフロントは大胆に動きます。
まずはフリーエージェント(FA)解禁日に、ミネソタ・ティンバーウルブズで強力なペリメーターディフェンダーとして活躍していたニキール・アレキサンダー・ウォーカーを獲得。
昨シーズンNBA最強のペリメーターディフェンダーとして開花したダイソン・ダニエルズとのコンビは、敵の脅威となるでしょう。
そしてメンフィス・グリズリーズのベテランシューター、ルーク・ケナードもFAで獲得。
NBA8シーズンの通算3ポイントシュート成功率が43.8%を記録する、リーグトップクラスのシューターは、ベンチから大きなインパクトを与えることが期待されます。
なんといってもケナードの通算3ポイントシュート成功率43.8%は、現役のNBA選手の中で1位、歴代でも3位(1位スティーブ・カー 〈45.4%〉2位ヒューバート・デイビス〈44.0%〉)の大記録ですから。
そしてもう一つ、この夏ホークスにとってもっとも重要なトレードが行われました。
トレード内容をまとめると・・・
ホークス獲得
クリスタプス・ポルジンギス
2026年ドラフト2巡目指名権
セルティックス獲得
ジョージ・ニアン
2031年のドラフト2巡目指名権
金銭
ネッツ獲得
テレンス・マン
ドレイク・パウエル交渉権(2025年ドラフト22位)
ホークスはジョージ・ニアンとテレンス・マンを放出し、218㎝の3&D、クリスタプス・ポルジンギスを獲得。
健康体であれば、リーグトップクラスの実力を発揮するビッグマンです。
健康体であれば・・・。
昨シーズンは42試合の出場にとどまったものの、平均28.8分の出場で19.5得点 6.8リバウンド 2.1アシスト 1.5ブロックを記録しています。
3ポイントシュート成功率は驚異の41.2%。
とにかくポルジンギスが元気な時のボストン・セルティックスは強かったですよね。
ホークスではトレイ・ヤングの的確なアシストで、得点を量産することも考えられます。
ディフェンス面でもゴール下のリムプロテクターとして期待できるポルジンギスは、ホークス躍進の大きな要因となるかもしれません。
健康体であれば・・・。
とにかくこの夏、ホークスに加入した3人の選手は超強力です。
アトランタ・ホークス 主力選手
ここまで新戦力の3人について語ってきましたが、これからは昨年もホークスでプレーした主力選手たちを語っていきたいと思います。
今回とりあげる4人の選手も、かなり強力です。
エースのトレイ・ヤングは9月で27歳になりましたが、そのほかの3人は20代前半の伸び盛りの選手たち。
無限の伸びしろを持っています。
この4人にポルジンギスを加えたスターティングファイブは、NBAでも屈指のの破壊力をもつといえるでしょう。
健康体であれば・・・(しつこい)。
背番号11 トレイ・ヤング
2024-25 トレイ・ヤング スタッツ
76試合 36.0分出場
24.2得点 3.1リバウンド 11.6アシスト 1.2スティール
FG41.1% 3P34.0% FT87.5%
※赤字はリーグトップ
昨シーズン2位に大差をつけてアシスト王になったトレイ・ヤング。
みずからの平均得点はルーキーシーズン以来の低さ(それでも24.2得点ですが)だったものの、より効果的なプレーを選択するトレイによって、周りの若い選手たちの成長が促されたシーズンだったと思います。
あいかわらずターンオーバーが多いのが問題ですが・・・。
昨シーズンのターンオーバー数355は、リーグトップ。
まあ上のYouTube動画をみてもらえばわかるように、ヤングのプレーは本当にエキサイティングです。
ミスとスーパープレーは紙一重ですからね。
しかたないこともあります。
とにかく観ていて楽しいトレイ・ヤングですが、ホークスにおいてはある意味崖っぷちかもしれません。
ヤングの契約は2025-26シーズンまでとなっており、来シーズンはプレイヤーオプションとるため、ホークスはこの夏4年2億2860万ドル (約336億420万円 1㌦=147円)のマックス契約を提示できたのですが、いまのところオファーは出していません。
ルカ・ドンチッチがレイカーズと、シェイ・ギルジャス・アレキサンダーがサンダーと、ジャレン・ジャクソンJr.がグリズリーズと、この夏それぞれマックス契約を結びました。
同じ2018年ドラフト組が次々と巨額の契約を結ぶ中、ヤングにはまだそのオファーさえも届いていない状況です。
この夏ホークスのフロントは勝負をかけてきました。
若きスターターの成長に手ごたえを感じたフロントは、ポルジンギス、ニキール・アレキサンダー・ウォーカー、ケナードといった実績のある選手を加え、本気で優勝を目指しています。
チームの主軸はトレイ・ヤングであることは間違いありません。
ただホークスのフロントが「トレイ・ヤング中心のチームで優勝を目指せるのか?」と疑問をもっているのもまた事実です。
2025-26シーズン、ホークスが優勝争いにくわわることができれば、フロントは間違いなくトレイにマックス契約を渡すでしょう。
しかし、もしホークスがここ数年と変わらずプレーインを争うような事態になれば、フロントはトレイ・ヤング放出に動く可能性もあると思います。
ホークスにとってもトレイ・ヤングにとっても、2025-26シーズンが今後を左右する大事なシーズンになることは、間違いありません。
背番号5 ダイソン・ダニエルズ
2024-25 ダイソン・ダニエルズ スタッツ
76試合 33.8分出場
14.1得点 5.9リバウンド 4.4アシスト 3.0スティール
FG49.3% 3P34.0% FT59.3%
※赤字はリーグトップ
昨シーズンリーグで最も成長した選手に贈られる「MIP賞」を受賞したダイソン・ダニエルズ。
2022年のNBAドラフト1巡目全体8位でニューオーリンズ・ペリカンズに指名されたオーストラリア人は、3年目の昨シーズン、アトランタ・ホークスに移籍し、センセーショナルな活躍をみせつけました。
なんといっても、ダニエルズの武器は敵をシャットアウトするディフェンス。
2位のヨキッチ(1.8スティール)に大差をつけスティール王(3.0スティール)を獲得するなど、NBA最強のペリメーターディフェンダーと呼ばれるほど強烈な印象を残しています。
正直2024-25シーズンのNBA最優秀守備選手賞は、エバン・モーブリーではなくダイソン・ダニエルズでもおかしくはなかったですよね。
オフェンスでも前年の平均5.8得点から14.1得点へ大きくスタッツをのばし、NBA3年目でスター選手の仲間入りをはたしました。
ダニエルズの弱点はシュート力。
3ポイントシュート成功率は3年目にして自己最高だったものの、34.0%と決して高くはありません。
なによりも大きな問題は、ガードとしては最低クラスの成功率59.3%にとどまったフリースロー。
大事な試合、特にプレーオフなど緊迫したゲームでは、ハック戦術をとられるであろう低確率です。
せめてフリースロー成功率を70%以上に引き上げてほしいですねえ。
ただダニエルズはまだNBA4年目をむかえる、22歳。
のびしろは無限大です。
背番号1 ジェイレン・ジョンソン
2024-25 ジェイレン・ジョンソン スタッツ
36試合 35.7分出場
18.9得点 10.0リバウンド 5.0アシスト 1.6スティール
FG50.0% 3P31.2% FT74.6%
2024-25シーズンブレイクしたのはダイソン・ダニエルズでしたが、その前年2023-24シーズンにブレイクしたのはジェイレン・ジョンソンでした。
圧倒的な身体能力を武器に攻守でハッスルできる万能フォワード、ジェイレン・ジョンソン。
トレイ・ヤングのパスターゲットだったジョン・コリンズが2022-23シーズン終了後ユタ・ジャズに去ったあと、ジョンソンがその座についています。
強力なフィニッシャーとして、そして全ポジションをカバーできるディフェンダーとして、さらなる飛躍を期待できるジェイレン・ジョンソンは今年の12月で23歳となる若手プレイヤー。
豪快なダンクやブロックショットに目を奪われがちですが、平均5.0アシストを記録していることからもわかるように、中継役としても優れたプレイヤーです。
チーム2位の得点、アシスト、スティール、そしてチームトップのリバウンドとブロックを記録するなど、ホークスにとって欠かせない選手へと成長しています。
2024-25シーズンは自己最高のシーズンを送っていましたが、1月に肩を負傷。
左肩関節唇断裂の手術を行い、シーズン36試合の出場(46試合欠場)にとどまりました。
もしジェイレン・ジョンソンがフルシーズン出場できていたら、ホークスのプレーオフ進出も現実のものとなっていたかもしれません。
現状トレイ・ヤングに次ぐキーマンといってもよいでしょう。
23歳となるシーズンに、オールスター級に成長することができるのか?
ジェイレン・ジョンソンの成長が、ホークスの未来を左右するといっても過言ではありません。
背番号10 ザカリー・リザシェイ
2024-25 ザカリー・リザシェイ スタッツ
75試合 24.6分出場
12.6得点 3.6リバウンド 1.2アシスト 0.7スティール
FG45.8% 3P35.5% FT71.1%
2024年のNBAドラフト1巡目全体1位でアトランタ・ホークスに指名された203㎝のフランス産フォワード、ザカリー・リザシェイ。
2023年のヴィクター・ウェンバンヤマ、2022年のパオロ・バンケロ、2021年のケイド・カニングハムらに比べると地味なイメージは否めないものの、ドラフト全体1位のポテンシャルを垣間見せたルーキーシーズンでした。
出場した75試合のうち4試合で30得点超えを記録するなど、才能の片りんをみせたリザシェイですが、26試合で1桁得点に終わり平均得点は12.6、新人王を獲得することはできませんでした。
ドラフト1位は過大評価だったという人もいますが、リザシェイは今年の4月に20歳になったばかり。
無限の可能性が広がっています。
9月にアメリカの放送局「ESPN」でドラフトアナリストを務めるジェレミー・ウー記者が、NBA2年目の選手の期待値ランキングを発表したのですが、リザシェイはリード・シェパード(ロケッツ)、ステフォン・キャッスル(スパーズ)に次ぐ3位で紹介されています。
得点、ディフェンス、サイズの三拍子がそろったリザシェイが、一昨年のジェイレン・ジョンソン、昨年のダイソン・ダニエルズのようにブレイクすることができれば、ホークスがイースタンカンファレンスの優勝争いにからんでくる可能性は大きくなるでしょう。
ルーキーながら35.5%を記録した3ポイントシュートの精度をさらに高めれば、ホークスのオフェンスの幅が一気に広がってきます。
正直リザシェイが来年オールスターに成長することは難しいかもしれませんが、将来的にリーグトップクラスのスモールフォワードに成長する可能性は十分にあると思えます。
最終的にはリザシェイの成長がホークスの運命を決めるといってもいいでしょう。
ホークスは2025-26シーズン優勝できるのか?
ここまで選手を紹介してきましたが、正直2025-26シーズンでの優勝は厳しいと思います。
ただここ数年毎年優勝候補だったボストン・セルティックスの脱落(テイタムのケガによる離脱)、ミルウォーキー・バックスの弱体化などがあるため、ニックス、キャブス、マジックらとともにイースタンカンファレンスのトップシード争いに加わることはできるでしょう。
そして今シーズン開幕時に23歳のジェイレン・ジョンソン、22歳のダイソン・ダニエルズ、20歳のザカリー・リザシェイら若手の成長を考えると、ここ数年のうちにホークスが優勝争いをする未来は、十分に考えられます。
ただそこにトレイ・ヤングの姿があるのかは、今シーズンの結果によって決まるでしょう。
長年ユタ・ジャズを率いた名将クイン・スナイダーの元、2025-26シーズンのホークスがどんなバスケを展開してくるのか?
ディフェンス力の高いダイソン・ダニエルズ、ザカリー・リザシェイ、ジェイレン・ジョンソン、クリスタプス・ポルジンギスの4人は、ディフェンスが苦手なトレイ・ヤングをカバーできるのか?
そしてポルジンギス、ウォーカー、ケナードとパスターゲットが増えた中、ヤングはどんなゲームメイクを見せてくれるのか?
2025-26シーズン開幕前のホークスには、ワクワクがつまっています。
まとめ
今回は積極的に補強に動き、若手の台頭も期待されるアトランタ・ホークスについて語ってきました。
NBAを36年間観つづけてきたわたくしリトルは、いつの時代もトリッキーなパサーに夢中になってきました。
マジック・ジョンソン、ジェイソン・キッド、ジェイソン・ウイリアムズ・・・。
トレイ・ヤングも間違いなくトリッキーなパサーの系譜を継ぐ選手です。
ヤングには得点力もありますしね。
ディフェンスを揶揄されることも多いヤングですが、それどころではない魅力をもっているスターだと思っています。
だからこそ、トレイ・ヤングをエースにすえた状態で、ホークスに勝ってほしいのです。
今シーズンホークスが躍進し、トレイ・ヤングがホークスと延長契約を結ぶことを心から期待しています。
できればニックスのブランソンのように、チームのために少し減額してくれたらうれしいのですが・・・。
1958年以来、2度目のNBAチャンピオンを目指すアトランタ・ホークスに、今年は注目です。

