超人が集うNBAの世界の中でも、特別な能力を持つ選ばれた選手たちがいます。
シュート力が並外れている者、とんでもないスピードで敵を置きざりにする者、圧倒的な高さと強さでゴール下を制する者。
歴史に名を残すスーパースターたちはみな、強力な武器を携えていました。
そんな数ある武器の中で、最もバスケセンスが必要となるのが、アシスト能力ではないでしょうか。
シュートは自分一人でいくらでも練習できますが、アシストはそうはいきませんからね。
ディフェンダーをあざむき、チームメイトがシュートを打てる絶妙なタイミングでパスを出すためには、バスケットボールセンス、創造性が必要です。
今回はNBAを35年間観つづけてきたわたくしリトルが選ぶ、NBA歴代ベストパサー9人を紹介します。
ちなみに今回選んだ9人は、平均アシスト数が多い選手もいれば、スタッツは平均的でもアッと驚くトリッキーなパスを繰り出す選手もいます。
とにかくパス、アシストの能力が人並はずれた選手たちです。
それぞれに動画も用意していますので、ぜひプレーを堪能してください。
それでは、レッツラゴー!
リトルが選ぶ歴代ベストパサー 神9
まずはNBAを35年間観つづけてきたわたくしリトルが選んだ、ベストパサー〝神9″をご覧ください。
ちなみに順番はデビュー年が古い順になっています。
わたくしリトルが実際にプレーを観てきた選手の中から選んでいますので、パスの名手として歴史に名を残しているピート・マラビッチなど、すでに引退していた選手は入っていません。
選出の基準としては、〝衝撃的なパス能力を持つ選手″という1点で選んでいます。
正直〝神7″にしたかったのですが、どうしても7人にしぼりきれず、〝神9″になってしまいました。
ご了承ください。
リトルが選ぶ歴代ベストパサー 神9
マジック・ジョンソン(1997-91 96 )
ジョン・ストックトン(1984-03)
ジェイソン・キッド(1994-2013)
スティーブ・ナッシュ(1996-2014)
ジェイソン・ウイリアムス(1998-2011)
マヌ・ジノビリ(2002-18)
クリス・ポール(2005-)
レイジョン・ロンド(2006-?)
二コラ・ヨキッチ(2014-)
9名とも、歴史に名を残す素晴らしいパスの名手、バスケの天才ばかりです。
一人ひとりがゲームを大きく変える力を持っています。
アシストが面白いように決まる試合って楽しいですよね。
ベストパサー1 マジック・ジョンソン
マジック・ジョンソン(1979-91 96 )
206cm 97㎏
ポジション PG
ロサンゼルス・レイカーズ
906試合出場 平均11.2アシスト
アシスト王 4回
「歴代最高のパサーは?」と聞かれて、まずまっ先に名前が挙がるのが、マジック・ジョンソンではないでしょうか。
人気絶頂の中でのHIVウイルス感染という、ショッキングな引退会見(その後1996年に復帰し36試合出場)から、すでに33年の月日が経ちましたが、マジックのプレーは今観ても驚きの連続です。
ノールックパスを世界中に広めたマジック・ジョンソン。
マジックのパスには、とにかく華がありました。
普通ノールックパスといっても、ちらっと横目で見ながらパスを出すものですが、マジックの場合は本当にあさっての方向を見ながら完全なノールックパスを出すのです。
その衝撃は、わたくしリトル少年をNBAのとりこにする一因となりました。
当時世界中のバスケファンが、同じようにマジックのプレーにとりこになっていましたね。
マジックのプレーを観てあこがれた子供たちが、後のNBAスターとなり、観客を魅了するトリッキーなパスを繰り出してきたんだと思います。
206㎝とNBAでも規格外の大型ポイントガード、マジック・ジョンソン。
マジック以降も200㎝を超える大型ポイントガード、いわゆる〝マジック2世″と呼ばれる選手がたびたび登場しましたが、正直大成した選手はほとんどいません。
バスケIQが高く、ゲームを理解し、アシストができる選手はいましたが、ドリブルスキルとスピードも必要となるポイントガードは、どうしても背の高い選手にとっては不利になります。
マジックは、206㎝の身長に加え、圧倒的なドリブルスキル、バスケIQ、得点力、抜群の視野、そしてパス能力すべてを兼ねそなえた究極の大型ポイントガードでした。
ラリー・バードという生涯のライバルとの戦いでNBAの人気を高めたマジックは、13シーズンの現役生活の中で5度の優勝、3度のファイナルMVP、3度のシーズンMVPなど、数えきれない栄光を勝ちとってきました。
マジック・ジョンソンによって、パス、アシストの魅力が一気に高まったのは間違いありません。
ちなみにマジックの本名はアービン・ジョンソン。
〝マジック″は、高校1年生の時の試合で、彼のプレーを観た新聞記者がつけたあだ名です。
人類の歴史の中で、最もぴったりなあだ名ではないでしょうか(笑)。
ベストパサー2 ジョン・ストックトン
ジョン・ストックトン(1984-2003 )
185cm 77㎏
ポジション PG
ユタ・ジャズ
1504試合出場 平均10.5アシスト
アシスト王 9回
ポイントガードのお手本のような、基本に忠実なプレーをするジョン・ストックトン。
マジック・ジョンソンとある意味対局に位置するポイントガードかもしれません。
ビハインドバックなど魅せるパスはしない。
ただ、勝利するためにベストなパスを選択する。
そして針の穴を通すような、とんでもないパスを通してしまう。
ストックトンはそんなプレイヤーでした。
わたくしリトルが約35年前、NBAに興味を持った時に、一番最初にファンになったチームがユタ・ジャズ。
理由はカール・マローンの超人的な破壊力と、ストックトンの気持ちのいいゲームメイクとアシストパスでした。
テレビで試合を観ていて、「あっ!ノーマーク!」と思った瞬間には、ストックトンからのパスが届いています。
当時のジャズの試合は、観ていて本当にストレスを感じないんです。
常にストックトンがゲームを把握し、的確なパスを供給していましたから。
パス、アシストの魅力を一気に高めたのがマジック・ジョンソンなら、パス・アシストの重要性を高めたのがジョン・ストックトンだと思います。
ストックトンが在籍していた19シーズン、すべてでユタ・ジャズはプレーオフに進んでいます。
ちなみに19シーズンのうち、82試合全ての試合に出場したのは16シーズン。
相棒のカール・マローンは〝鉄人″と呼ばれていましたが、本当の鉄人はストックトンかもしれません(マローンの全試合出場は19シーズン中10シーズン)。
ストックトンが打ち立てた9年連続アシスト王と、通算15806アシストのNBA記録は、もう2度と破られないでしょうね。
ベストパサー3 ジェイソン・キッド
ジェイソン・キッド(1994-2013 )
193cm 95㎏
ポジション PG
ダラス・マーベリックス⇨フェニックス・サンズ⇨ニュージャージ・ネッツ⇨ダラス・マーベリックス⇨ニューヨーク・ニックス
1391試合出場 平均8.7アシスト
アシスト王 5回
現在ダラス・マーベリックスのヘッドコーチをつとめているジェイソン・キッドも、現役時代はパサーとして名をはせた名ポイントガードでした。
特に新人時代のトリッキーなパスを次々に繰り出すプレースタイルは衝撃的でしたね。
アリーウープパス、特に速攻からのロブパスは天下一品でした。
若い頃は「エイソン・キッド」と呼ばれることもあったのですが、意味が分かるでしょうか?
「J(ジャンプシュート)がない」ため、「Jason Kidd」からJをとって、「Ason Kidd」と呼ばれていたのです。
アメリカ人、洒落ていますね。
シュート力が低くても、キッドは華麗なアシストでリーグを席巻します。
キッドが加入したチームは大きく成績を上げ、チームメイトはスタッツを伸ばしました。
ここでキッドが加入したシーズン、どれだけチームが強くなったのかまとめてみましょう。
すべてキッドが加入する前のシーズンと、加入した1年目のシーズンを比較しています。
フェニックス・サンズだけは、1995-96シーズン途中に移籍しているため、1994-95シーズンと1996-97シーズンの比較とします。
ダラス・マーベリックス
1993-94 13勝69敗(勝率.159)
⇩
1994-95 36勝46敗(勝率.439)
フェニックス・サンズ
1995-96 41勝41敗(勝率.500)
⇩
1997-98 56勝26敗(勝率.683)
ニュージャージー・ネッツ
2000-01 26勝56敗(勝率.317)
⇩
2001-02 52勝30敗(勝率.634)
いや、凄まじいですね。
キッドが加入するだけで、チーム成績が大きくアップしています。
特にニュージャージー・ネッツは、まるで別チームのように勝ち星を増やしていますね。
前年までリーグ下位にくすぶっていたネッツを、キッドは加入1年目でNBAファイナルにまで導いています。
キッドの現役通算アシスト数は、ストックトンに次ぐ歴代2位。
史上最高のパサーを語るとき、間違いなく議論に上がる名選手です。
ベストパサー4 スティーブ・ナッシュ
スティーブ・ナッシュ(1996-2014 )
191cm 81 ㎏
ポジション PG
フェニックス・サンズ⇨ダラス・マーベリックス⇨フェニックス・サンズ⇨ロサンゼルス・レイカーズ
1217試合出場 平均8.5アシスト
アシスト王 5回
フェニックス・サンズ時代に2年連続シーズンMVPを獲得した名司令塔、スティーブ・ナッシュ。
ナッシュの一番の武器は、歴代トップクラスのシュート力です。
50-40-90クラブ(フィールドゴール成功率50% 3ポイント成功率40% フリースロー成功率90%)を4回も達成している、最上級のシューターでした。
ちなみに史上最高のシューターと言われているステフィン・カリーでも、50-40-90クラブの達成は2015-16シーズンの1度だけです。
そしてもう一つの大きな武器が、ナッシュのシュートを警戒したディフェンダーを、あざ笑うように繰り出すトリッキーなパス。
サンズ時代は機動力の高いパワーフォワード、アマレ・スタウダマイアーとのコンビで、ハイスコアオフェンスを繰り広げていました。
特にハンドオフ(手渡しパス)の上手さは、際立っていましたね。
決して身体能力が高いわけではありませんでしたが、抜群のバスケセンスでサンズをリーグトップの攻撃的なチームに変えてしまったナッシュ。
ミスターラン&ガンと呼んでもいいでしょう。
ディフェンス力の無さを指摘されることも多かったスティーブ・ナッシュですが、シュート力とアシスト力を兼ねそなえた攻撃力は歴代トップクラス。
長髪をなびかせ、ノールックパスを連発するナッシュは、本当に魅力的な攻撃的ポイントガードでした。
ベストパサー5 ジェイソン・ウイリアムス
ジェイソン・ウイリアムス(1998-2011 )
185cm 86 ㎏
ポジション PG
サクラメント・キングス⇨メンフィス・グリズリーズ⇨マイアミ・ヒート⇨オーランド・マジック⇨メンフィス・グリズリーズ
788試合出場 平均5.9アシスト
アシスト王 0回
今回選んだ神9の中で、唯一オールNBA入りもオールスター出場経験もないジェイソン・ウイリアムス(J-WILL)。
ポイントガードとしては、特筆するべきアシスト数でもありません。
ただ、「NBA歴代ベストパサー」を一人選ぶとしたら、わたくしリトルはジェイソン・ウイリアムスを推します。
それほどJ-WILLのプレーは衝撃的でした。
1998年のNBAドラフト1巡目全体7位でサクラメント・キングス入りすると、当時のエース、クリス・ウェバーやブラデ・ディバッツらのビッグマンに向けて、閃光のようなトリッキーパスを連発。
それまで見たことがなかった、J-WILLのスピーディーなノールックパスは、NBAの楽しさを1ランク上げたと思います。
オールスターのルーキーゲームで披露したエルボーパスも話題になりましたね。
当時J-WILLのアシストを観たいために、アリーナに足を運ぶファン、テレビでNBAを観るファンが溢れていました。
わたくしリトルもその一人。
1999-00シーズン、東京ドームで行われた開幕第2戦のサクラメント・キングス対ミネソタ・ティンバーウルブズ戦。
日本で行われる開幕戦にいてもたってもいられず、奮発してチケットをとり、仕事を休んで東京に飛びました。
貯金もない時期だったので、正直迷いましたが、生でNBAを体感して本当に良かったと思います。
ただ、わたくしリトルが観た開幕第2戦は、ウルブスのケビン・ガーネットが無双状態でキングスは敗れてしまったのですが。
わたくしリトルが所属していた社会人チームの監督がテレビ中継を観て、「なんやあの白人のガードは!」とビックリしていたのを思い出します。
何気ないパスでも華があるのがJ-WILLでした。
白人なのにプレイグラウンドでプレーする黒人のような動きをするため、「ホワイト・チョコレート」と呼ばれていましたね。
とにかく当時のサクラメント・キングスは大人気だったのですが、衝撃的なパスを連発するJ-WILLは、衝撃的なミスも多い選手でした。
魅せるプレーをしようとして、ミスをすることも多く、次第に第4クオーター、タオルを頭からかぶってベンチで過ごす時間が増えていき、3シーズン目を終えた時点で、キングスのフロントはついにJ-WILL放出を決定。
堅実でシュート力の高いポイントガード、マイク・ビビーとの交換で、当時バンクーバーからメンフィスに本拠地を移転したばかりの、グリズリーズに移籍しました。
当時メンフィス・グリズリーズのエースは、後にコービーの相棒としてレイカーズでチャンピオンリングを獲得するパウ・ガソル。
J-WILLは、ガソル相手に次々とトリッキーなパスを通し、メンフィスのファンを熱狂させました。
グリズリーズでの最初のシーズンは平均8.0アシスト、2年目のシーズンには8.3アシストと生涯最高のアシスト数を記録。
しかし、チームの勝利には結びつかず。
次第にファンは、チームを勝たせることのできないポイントガードに、厳しい目を向けるようになりました。
J-WILLはプレースタイルを変化させていき、勝利のために確実なパスを選択するようになり、ターンオーバーも減っていきます。
そして在籍3シーズン目の2003-04シーズン、グリズリーズはついに球団初となるプレーオフに進む躍進をみせました。
翌シーズンもプレーオフに進出したものの、1回戦でスウィープ負けを喫すると、グリズリーズのフロントは、J-WILLの放出を決定。
当時NBA最大規模と言われた、5チーム、13選手が絡むトレードで、マイアミ・ヒートへ移籍しました。
ヒートではドウェイン・ウェイド、シャキール・オニールらと共に戦い、ついにNBAチャンピオンとなるのですが、観るものをワクワクさせる、トリッキーな〝ホワイト・チョコレート″はそこにはいませんでした。
堅実なプレーでチームを牽引する、正統派の控えめなポイントガードとなっていたJ-WILL。
正直、デビューしたころの衝撃的でトリッキーなスタイルからは、魅力が半減していましたが、シャック、ウェイド、アロンゾ・モーニング、ゲイリー・ペイトンらと共に、トロフィーを掲げるJ-WILLの姿は、本当に輝いてみえました。
今でもYouTubeでJ-WILLの動画を探して観ることがあります。
ずーっと見れちゃうんですよね。
想像もできないようなパスを、いとも簡単に通してしまう衝撃、プレーを観ればわかってもらえるかと思います。
ぜひ、上の動画をごらんください。
わたくしリトルが熱狂した理由がわかってもらえるかと思います。
ベストパサー6 マヌ・ジノビリ
マヌ・ジノビリ(2002-2018 )
198cm 95 ㎏
ポジション SG
サンアントニオ・スパーズ
1057試合出場 平均3.8アシスト
アシスト王 0回
今回選出した選手の中で、平均アシスト数がもっとも低い(3.8アシスト)マヌ・ジノビリ。
ティム・ダンカン、トニー・パーカーとともにサンアントニオ・スパーズの黄金期をつくった〝ビッグ3″の一人です。
アテネオリンピックでは母国アルゼンチンのエースとして躍動。
アレン・アイバーソンやティム・ダンカン、若きレブロン・ジェームズなどスター選手が揃ったアメリカ代表を倒し、アルゼンチンを金メダルに導きました。
これまで紹介してきたベストパサーの面々は、ポイントガード、いわゆる司令塔の選手たちでしたが、ジノビリはシューティングガード。
どちらかというとパスを受ける側のイメージが強い選手です。
しかし、時折繰り出すアシストパスが、あまりにもトリッキーで、衝撃的なんです。
正直、〝神7″にするために、最初に外そうかとおもっていたのがこのジノビリなんですが、YouTube動画を見直して、「やっぱりどうしても外せないな。」と思ってしまいました。
ジノビリには今回紹介した9人のプレーの中でも、最も衝撃的だったパスがあるんです。
ジェイソン・ウイリアムスとは違った意味で衝撃的なパス。
動画でごらんください。
2013 年のNBAファイナル第1戦第2クオーター。
23-27でマイアミ・ヒートがリード。
まだ試合序盤でまったく無理をする必要のないところでの、この股抜きパス!
しかもスパーズのヘッドコーチはあのグレッグ・ポポビッチ!!
厳格なヘッドコーチのもと、世界中が注目するファイナルの試合序盤で、走っている相手の股を抜くパス!!!
ジノビリの頭の中はどうなっているんでしょうか?
股を抜かれたヒートのノリス・コールは、きっとなにが起こったか理解できていないでしょう。
観てるこっちも理解できていませんから。
この股抜きパスをみてもわかるように、ジノビリのパスは常人には理解できない〝変態パス″を繰り出し、ファンを熱狂させてきました。
これだけ変態パスを繰り出すジノビリですが、不思議なのはターンオーバーが少ないところ。
ミスが少ないことで有名なクリス・ポール(平均2.3TOV)や、ジョン・ストックトン(平均2.8TOV)よりも、ジノビリの方がターンオーバーが少ない(平均2.0TOV)のは、驚きです。
ポジションが違うので、ボールに触れる回数は違いますが、それにしても無茶なパスのイメージがあるジノビリのミスの少なさには驚かされます。
スパーズのビッグ3の一角ながら、6thマンとしてベンチから颯爽と現れ、変態プレーでファンを魅了したジノビリ。
やっぱりどうしてもベストパサーから外すことはできませんでした。
ベストパサー7 クリス・ポール
クリス・ポール(2005- )
183cm 79 ㎏
ポジション PG
ニューオーリンズ・ホーネッツ⇨ロサンゼルス・クリッパーズ⇨ヒューストン・ロケッツ⇨オクラホマシティ・サンダー⇨フェニックス・サンズ⇨ゴールデンステイト・ウォリアーズ
1255試合出場 平均9.4アシスト(3/14現在)
アシスト王 5回
現在ゴールデンステイト・ウォリアーズで戦うクリス・ポール。
ポイントガードならぬ〝ポイントゴッド″の異名を持つ、歴史に残る名ポイントガードです。
NBAデビューしたホーネッツでエースとして活躍すると、その後は移籍したチームを次々と強豪チームに変貌させていきます。
パスだけでなく得点力も高く、オールディフェンシブチームの常連でもあるポールは、ポイントガードとしての能力を全て兼ね備えた、まさに〝ポイントゴッド″ですね。
わたくしリトルがもっとも印象に残っているのが、クリッパーズ時代。
ブレイク・グリフィンとディアンドレ・ジョーダン、2人のゲームタイムダンカーを操り、アリーウープの雨を降らせていました。
ポールの正確無比なロブパスから、豪快なダンクの連続に観客は熱狂。
当時のクリッパーズは「ロブシティ」と呼ばれ、注目を集めていました。
残念ながら、プレーオフではポールやグリフィンの怪我が続き、ファイナルにたどり着くことはできませんでしたが、当時のクリッパーズは本当に魅力的なチームでしたね。
ポールのパサーとしての特徴は、すべてのパス精度が高いこと。
プレースキルが高すぎて派手には見えないものの、一瞬で最適なパスを選択し、味方の最もシュートをしやすい位置にボールを投げる。
ポイントガードとしての最適解を一瞬にして導き出すのがクリス・ポールです。
完璧すぎて面白味には欠けるのですが・・・。
そんなポイントゴッドも、今年の5月で39歳。
ぜひ1度はチャンピオンリングを手にしてほしいですねえ。
わがゴールデンステイト・ウォリアーズは現在ウエスタンカンファレンス10位と苦しんでいますが、なんとかシーズン後半、プレーオフで旋風を巻き起こしてほしいと思います。
史上屈指のポイントガード、クリス・ポールが紙吹雪舞う中、ラリー・オブライエントロフィーを掲げる姿を想像するだけで泣けてきますね。
ベストパサー8 レイジョン・ロンド
レイジョン・ロンド(2006-? )
185cm 82 ㎏
ポジション PG
ボストン・セルティックス⇨ダラス・マーベリックス⇨サクラメント・キングス⇨シカゴ・ブルズ⇨ニューオーリンズ・ペリカンズ⇨ロサンゼルス・レイカーズ⇨アトランタ・ホークス⇨ロサンゼルス・クリッパーズ⇨ロサンゼルス・レイカーズ⇨クリーブランド・キャバリアーズ
957試合出場 平均7.9アシスト
アシスト王 3回
バスケIQの高さと、重要な試合でこそ活躍する強心臓で、歴代有数の司令塔と呼ばれるレイジョン・ロンド。
NBA2年目、ボストン・セルティックスでビッグ3(ポール・ピアース、レイ・アレン、ケビン・ガーネット)とともにチャンピオンに輝いたロンドは、その後も華麗なパスと高いディフェンス力を武器に活躍を続けました。
ロンドのプレーする動画を見ると、違和感を感じるかと思います。
身長は185㎝ですが、両手を広げたウイングスパンは、なんと206㎝。
身体に比べて、あまりにも腕が長いのです。
ロンドは自分の身体的特徴を、オフェンス、ディフェンスともに十分に生かしました。
オフェンスでは長い腕を使って華麗なビハインド・ザ・バックパスを決めまくります。
ビハインド・ザ・バックと見せかけて自らのレイアップに切り替えるプレーも、ロンドのシグネチャームーブでしたね。
ロンドは手のひらのサイズも特別で、206㎝のレブロン・ジェームズよりも大きいそうです。
片手でしっかりボールをつかむことができるのも、大きな武器になっていました。
ディフェンスでもスティール王に輝くなど、活躍をみせるのですが、今回は割愛します(笑)。
ロンドのプレーは、コート上で起こることを予知できるかのような、ゲームメイクとアシストパス。
バスケIQの高さは、誰もが認めるものでした。
シュートは苦手でフリースローはガードの選手とは思えないひどさ(笑)。
2014-15シーズンには、フリースロー成功率39.7%と、衝撃のスタッツを残しています。
3ポイントシュートも当初2割台の成功率が続いていましたが、キャリア後半になると、3割台後半を記録するシーズンもあり、改善がみられました。
シュートは苦手ながら、素晴らしいゲームメイク力とアシストパスで、ロンドはチーム力を大きく引き上げてきました。
しかし、勝気な性格により、ヘッドコーチやチームメイトと衝突することも多く、9回もの移籍を経験しています。
もちろん、それだけ司令塔ロンドを獲得したいと思ったチームが多かったのも事実ですが・・・。
チームを大きく変えるには、ポイントガードを代えるのが、一番効果が大きいですからね。
特にロンドは、司令塔タイプのポイントガード。
現代バスケでは自ら得点をとるスコアラー型のポイントガードが主流になっていますから、ロンドやクリス・ポールのような司令塔型のポイントガードは貴重な存在です。
ロンドは現在38歳。
最後に一花咲かせてほしいと思っていたのですが・・・。
今年の1月末、ショッキングなニュースが届きます。
「ロンドが銃および麻薬所持で逮捕」という衝撃のタイトルが、ヤフーニュースを見ていて飛びこんできたのです。
交通違反を犯したロンドの車からマリファナの臭いをかぎとった警察官が車内を捜索したところ、銃と個人使用向けと思われるマリファナ、麻薬関連器具が発見され、逮捕になったとの報道でした。
2022年には自身の2人の子供と、子供の母親である元パートナーに銃を突きつけ、緊急保護令によって女性と子供たちへの接触と銃器所持を禁止されていたロンド。
その後NBAの世界からも離れていたのですが・・・。
今回の逮捕で、NBAへの復帰はなくなってしまいましたねえ・・・。
ボストン・セルティックスとロサンゼルス・レイカーズ、NBAの2大名門チーム両方で優勝しているのは、本拠地がロサンゼルスに移ってからはロンドただ一人です。
歴史に残る名司令塔の最後が逮捕は寂しいですね。
最後は、織田裕二ばりに叫びたいと思います。
「何やってんだよ、ロンド!」
ベストパサー9 二コラ・ヨキッチ
二コラ・ヨキッチ(2015- )
211cm 129㎏
ポジション C
デンバー・ナゲッツ
660試合出場 平均6.9アシスト(3/14現在)
アシスト王 0回
まさか歴代ベストパサーに、センタープレイヤーが入ってくるとは、数年前までは夢にも思っていませんでした。
NBAを35年間観つづけてきたわたくしリトルからみても、歴代ナンバー1センターはこの二コラ・ヨキッチだと断言できます。
アキーム・オラジュワンや、シャキール・オニールの全盛期を観てきましたが、ヨキッチのオールラウンドなプレースタイルには、2人とも及ばないと思います。
オラジュワンとシャックにはなくヨキッチにあるもの、それがアシストパスです。
ヨキッチのパスは変幻自在。
味方の動きやクセをすべて把握しているかのような優しいパスは、デンバー・ナゲッツのバスケをイージーなものに変えてしまいました。
チームメイトは、バスケをしていて楽しいでしょうね。
特に得意なのが、エンドラインからのタッチダウンパス。
ヨキッチが思いっきり投げたボールが、追うディフェンダーの指先をかすめながら、全力で走る味方に届き、そのままダンクというシーンを何度も観てきました。
これまでタッチダウンパスと言えば、ケビン・ラブのイメージでしたが、ヨキッチも達人の域に達していますね。
ヨキッチの場合パスだけではなく、得点力もリバウンド力もNBAトップクラス。
今回あげた歴代パサー神9の中でも、最も平均得点が高い選手です(リバウンドも、もちろんトップですが)。
2021年、22年には、2年連続シーズンMVPを獲得。
2023年にはデンバー・ナゲッツをNBAチャンピオンに導き、ファイナルMVPを獲得。
29歳にして数々の栄光を手にしてきたヨキッチですが、過去のNBAスーパースターのようなストイックさは感じられません。
子供のころから戦火のセルビアの地でも、仲間を笑わせてきたお調子者のヨキッチ少年は、今でも純粋にバスケを楽しんでいるようです。
なんといっても、ファイナルMVPのトロフィーを紛失するくらい無頓着ですから(笑)。
今シーズンもデンバー・ナゲッツはウエスタンカンファレンスでトップを争っています。
ヨキッチの変幻自在のパスで、今年のプレーオフもナゲッツの快進撃がみられるのか、本当に楽しみです。
まとめ
今回は、NBAの歴史に残る名パサー9人について語ってきました。
正直、まだまだ名前をあげたい選手もいましたが・・・
ラリー・バード、マーク・ジャクソン、レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリー、ルカ・ドンチッチ、ラメロ・ボール・・・。
今回あげた9選手の衝撃に比べるとややインパクトに欠けるかなと思い、今回は泣く泣く外しました。
ドンチッチとラメロは、まだまだこれからですが。
各選手のYouTube動画をあらためて観てみると、素晴らしいアシストばかりでワクワクが止まらなくなりますね。
ダンクや3ポイントシュートもいいですが、美しいアシストパスが決まった時の盛り上がりは格別です。
今シーズンも素晴らしいアシストパスで、世界中のNBAファンを熱狂させてほしいですね。