いやあ、しびれました!
2月25日に有明コロシアムで行われた「FIBAアジアカップ2025予選Window1」の第2戦。
FIBA世界ランキング26位の日本は、同ランキング29位の中国と対戦。
激戦の末、FIBA主催大会では、1936年のベルリンオリンピック以来88年ぶりの中国戦勝利をあげました。
最終スコアは76-73。
終盤中国の211㎝のセンター、フー・ジンチョウの3ポイントに追い上げられましたが、なんとか逃げ切ることができました。
NBAを35年間観つづけてきたわたくしリトルですが、バスケットボールで日本代表が中国代表に勝利する日が来るとは、思ってもいませんでしたね。
しかも、日本はNBA選手やNCAAで活躍する選手たちを欠いた状態で!
まあ、日本人のNBA選手がいることが、夢のようなんですが・・・。
今回は、パリオリンピックでベスト8を目指す日本代表について、そして代表の主軸となるであろう八村塁選手、渡邊雄太選手、富永啓生選手について、語っていきたいと思います。
日本対中国 スタッツ&試合経過
2月25日(日)に行われた中国戦のチームスタッツをまとめましょう。
日本 76-73 中国
日本代表 チームスタッツ
得点76 FG36.7% 3P34.4% FT77.8%
リバウンド33 アシスト14 ブロック1
スティール5 ターンオーバー7 ファウル18
中国代表 チームスタッツ
得点73 FG39.4% 3P27.6% FT86.7%
リバウンド44 アシスト15 ブロック3
スティール1 ターンオーバー10 ファウル24
高さで大きく上回る中国に試合開始からリードを許し、5分間で11点のビハインドを追う厳しいスタートとなった日本。
井上宗一郎選手の2本の3ポイントシュートなどで、なんとか第1クオーター1点差で終えると、第2クオーターからは馬場雄大選手が爆発。
第2クオーターだけで馬場選手が3本の3ポイントを決めたものの、中国も粘り前半を38-38で終えます。
第3クオーターに入ると、比江島慎選手のアタック、馬場選手の華麗なリバースレイアップ、3ポイントシュートなどで点差を開きにかかるも、中国も終盤に追い上げ55-51の4点リードで最終クオーターへ。
勝負の第4クオーターになっても馬場選手の勢いは止まらず、華麗なスピンターンからファールを受けながらのダブルクラッチ!
そして馬場選手ともう一人、いつもどおり絶好調だったのが、日本の大黒柱ジョシュ・ホーキンソン。
中国のアリーウープをブロックすると一気に駆け上がり、テーブス海選手からのパスを受け、シュートをねじ込みます。
この日シュートが決まっていなかった河村勇輝選手の連続3ポイントシュートも決まり、流れを日本に引き寄せたかと思いましたが、中国の高さを生かした攻撃と3ポイントシュートで、点差をつけることができないまま最終盤へ。
残り時間2分となったところで、河村選手がドライブからレイアップを沈め、5点差。
しかし残り1分42秒、211㎝のフー・ジンチョウにゴール下でねじ込まれ、3点差。
ここで、井上宗一郎選手が3ポイントシュートを打つ際にファウルを獲得。
会場が固唾を飲んで見守る中、3本決めれば6点差になるフリースローを、井上選手は3本とも外してしまいます。
嫌な流れになったところを救ったのが、ジョシュ・ホーキンソン選手と、比江島慎選手でした。
この試合20得点の大活躍をみせた中国のポイントガード、フー・ミンシェンがセンターライン付近でボールを保持すると、2人で襲い掛かるようにプレス!
ホーキンソン選手がボールを奪い、そのままダンクを叩きこみました。
その後中国の苦し紛れの3ポイントが決まり、残り21秒で2点差と、緊迫した場面が続きますが、試合時間残り7秒で比江島選手がフリースローを獲得。
1本目を落とし、ハラハラさせましたが、2本目はきっちり成功。
最後は中国のディープスリーが外れ、なんとか3点差で日本が勝利しました。
中国戦 主な日本代表スタッツ
馬場雄大選手 24得点 4リバウンド 2アシスト FG60.0% 3P66.7%
J.ホーキンソン 14得点 12リバウンド 1アシスト FG45.5% 3P0%
河村勇輝 12得点 4リバウンド 3アシスト FG36.4% 3P28.6%
富樫勇樹 8得点 1リバウンド 1アシスト FG25.0% 3P33.3%
井上宗一郎 6得点 3リバウンド 0アシスト FG40.0% 3P40.0%
比江島 慎 5得点 3リバウンド 2アシスト FG33.3% 3P0%
テーブス海 5得点 1リバウンド 4アシスト FG25.0% 3P50.0%
この試合はなんといっても馬場選手の活躍が光りました。
3ポイントシュートを6本中4本沈め、果敢なアタックでも会場を沸かせました。
フリースローは8本すべて決めきり、24得点の大活躍。
圧倒的なプレーと、試合終了後のふんわりしたインタビューのギャップがよかったですね(笑)。
そして、いつもどおりの活躍をみせ、日本に安定感をあたえてくれたジョシュ・ホーキンソン選手。
中国戦ではシュートがリングに嫌われることも多かったですが、圧倒的な高さを誇る中国のインサイド陣にも、まったく負けていなかったです。
日本代表には、欠かせない選手ですね。
河村選手は、シュートタッチが悪かったものの、勝負どころの第4クオーターの活躍はさすがでした。
問題はシュート成功率の低さですね。
日本チームのフィールドゴール成功率が36.7%、3ポイント成功率が34.4%、フリースローが77.8%。
NBAでフィールドゴール成功率リーグ最下位のポートランド・トレイルブレイザーズが43.8%ですからね(笑)。
よく勝利できたと思います。
試合終盤で井上宗一郎選手がフリースローを3本外したんですが、正直フリースローをバンクシュートで打つのはやめた方がいいと思うんですが・・・。
井上選手のフリースローは、バックボードに当てて入れる〝バンクシュート″で行うのが名物になっているのですが、日本代表の時は成功率低いんですよね。
あれだけ美しい軌道の3ポイントシュートを打つんですから、バンクシュートにこだわらず、素直にストレートインを狙った方がいいと思います。
素晴らしいシュート力があるんですから、こだわりを捨てることも大事かとおもうんですが・・・。
オフェンスで苦しんだ分、全員のディフェンスの頑張りで、88年間未勝利だった中国相手に貴重な勝利をつかむことができました。
高さで劣る日本選手の激しい守備は圧巻でしたね。
特に河村選手、ホーキンソン選手、そして吉井裕鷹選手の激しいディフェンスは、中国のリズムを大きく狂わせていました。
吉井選手は5ファールで退場してしまいましたが、無得点でもチームに大きくインパクトを与え続けています。
これから激しくなってくるパリオリンピックの代表争いですが、個人的には吉井選手は欠かせないと思うんですが、いかがでしょうか?
今回の中国撃破には、大きな意味があります。
特筆すべきはNBAで戦う八村塁選手、渡邊雄太選手、そしてNCAAで大活躍している富永啓生選手抜きで勝利したこと。
日本バスケの成長を感じる一戦でした。
パリオリンピックには、3人のスター選手が加わると思われます。
日本の主力となる3選手の現状をみていきましょう。
レイカーズ 八村塁選手の現状
八村塁 スタッツ
2023-24 12.0得点 3.8リバウンド 1.0アシスト FG51.6% 3P41.4%
NBA通算 12.4得点 4.8リバウンド 1.3アシスト FG48.5% 3P36.2%
日本人で初めてNBAドラフト1巡目(全体9位)で指名された八村塁選手。
現在名門ロサンゼルス・レイカーズで、レブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスとともに戦っています。
現地2月14日に行われたユタ・ジャズ戦で3ポイントシュート6本を含む36得点し、圧倒的なポテンシャルを見せつけた八村選手。
ただ、次戦のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で8得点に終わるなど、安定感がないんですよね。
今シーズンの八村選手のスタッツが、いまいち伸び悩んでいる最も大きな原因は、ダービン・ハムHCだと思います。
明らかに勝利に貢献している八村選手よりも、トーリアン・プリンスやキャム・レディッシュ、ジャレッド・バンダービルドなどを優先的に使うダービン・ハムHCには、日本人びいきを抜きにしても疑問しかありません。
アメリカでも、「なぜハムHCは八村を使わないんだ?」という声が大きくなっているようですね。
ちなみに、2月28日現在、八村選手より出場時間が多いトーリアン・プリンスの平均+/-は、-2.7。
八村塁選手の平均+/-は、+2.1です。
平均得点もプリンスの9.5に対して、八村選手は12.0。
フィールドゴール成功率や3ポイントシュートの成功率でも、八村選手がリードしています。
2月3日のニューヨーク・ニックス戦以降、ようやくスターティングラインナップに名を連ねている八村選手ですが、まだまだ大事な場面で、プリンスや新加入したスペンサー・ディンウィディを使うハムHCの起用法には、大きな疑問があります。
まあ、わたくしリトルが現役時代、ハムのプレーがあまり好きではなかったということもあると思いますが(笑)。
とにかく、まだまだ八村塁選手の伸びしろは、大きいと思います。
ディフェンスにもかなり頑張っていますし、現在ウエスタンカンファレンス10位のレイカーズに喝を入れる活躍を続けてほしいですね。
プレーオフに進めば、相手チームにとってレイカーズは、恐ろしいチームだと思います。
プレーオフで旋風を巻き起こし、日本代表にも勢いをつけてほしいです。
昨年のバスケワールドカップは、新しい契約も結びシーズンに集中したいとの理由で辞退した八村選手。
忸怩たる思いがあったと思います。
パリオリンピックでは、その思いをぶつけ、日本代表として大暴れしてほしいですね。
日本代表には、八村塁選手のパワーが絶対に必要です!
メンフィス・グリズリーズ 渡邊雄太選手の現状
渡邊雄太 スタッツ
2023-24 3.7得点 1.6リバウンド 0.4アシスト FG36.0% 3P29.8%
NBA通算 4.2得点 2.3リバウンド 0.6アシスト FG42.7% 3P37.1%
昨シーズンブルックリン・ネッツでシーズン前半大活躍した渡邊選手。
3ポイントシュート成功率は、一時リーグ首位に立つなど、カイリー・アービング、ケビン・デュラント、2人のスーパースターからの信頼を勝ちとり、躍動していました。
しかし、トレード・デッドライン前にカイリー、デュラントが移籍を志願しチームを去ると、渡邊選手の出場時間は激減。
カイリー、デュラントの代わりにトレードで大量に3&Dの選手が加入し、渡邊選手の居場所はなくなってしまいました。
シーズン後半、ベンチを温める日々が続き、大いに苦しんだ渡邊選手でしたが、昨年7月デュラントの移籍先フェニックス・サンズからオファーを受け、2年総額500万ドル(7億2000万円 1㌦=144円)で契約。
自らの活躍で勝ち取った2年契約でした。
しかし、2023-24シーズンが始まると、昨シーズン面白いように決まっていた3ポイントシュートが入らない!
同時期にバックスから移籍してきたグレイソン・アレンが大活躍をみせる中、渡邊選手の出場時間は徐々に減っていき、12月に入るとガベージタイムのみの出場となってしまいます。
苦しい時間が続く中、2月8日、トレードデッドライン当日に突然メンフィス・グリズリーズへの移籍が決まりました。
今シーズンのグリズリーズは、NBAを35年間観つづけてきた私リトルでも記憶にないくらいのケガ人だらけ。
主力でプレーができているのが、ジャレン・ジャクソンJr.だけで、「君たち誰だい?」と思わず言ってしまうような選手たちが頑張っています。
かなり苦しいチーム状況ですが、渡邊雄太選手にとっては大きなチャンスですね。
ぜひシーズン後半、シュートタッチを取り戻し、持ち前の全力ディフェンスでグリズリーズに勢いをつけてほしいと思います。
パリオリンピックでベスト8を目指すには、渡邊選手のリーダーシップが必要不可欠です。
ネブラスカ大学 富永啓生選手の現状
富永啓生 スタッツ(NCAA)
2023-24 14.0得点 2.0リバウンド 1.3アシスト FG45.8% 3P37.0%
2022-23 13.1得点 1.6リバウンド 0.7アシスト FG50.3% 3P40.0%
※ 富永選手は、今シーズンと昨シーズンのスタッツ比較です
昨年のバスケワールドカップでは、衝撃的なシュート力で日本中の注目を集めた富永啓生選手。
NCAAのシーズンでも、インパクト抜群の活躍を続けています。
富永選手の所属するネブラスカ大学が所属するのは、全米で最も強豪校が集まると言われるビッグ10カンファレンス。
ビッグ10カンファレンスの弱小校と言われるネブラスカ大学は、2月21日現在、20勝7敗、ビッグ10カンファレンス3位(全14チーム)と大躍進をみせています。
ちなみにネブラスカ大学のヘッドコーチは、ジョーダン引退直後のシカゴ・ブルズで3ポイントシューターとして活躍した、フレッド・ホイバーグです。
富永選手は、現地時間1月9日に行われた、当時全米ランキング1位のパデュー大学戦で、チームトップとなる19得点をあげ最強の敵を撃破すると、2月5日のイリノイ大学戦では31得点を記録。
超人が揃うNCAAの世界でも、富永選手のシュート力は、注目を集めています。
対戦チームが全力で対策をしてくる中、想像の斜め上をいくロングシュートで結果を出し続けている富永選手。
昨シーズンよりシュート成功率はやや落ちていますが、平均得点、リバウンド、アシスト、すべてのスタッツを伸ばしています。
ディフェンスも昨シーズンよりかなり成長をみせているように感じますね。
ただ、NBA予備軍が揃うNCAAや、もっとレベルの上がるバスケワールドカップでは、富永選手の188㎝という身長は大きなハンデとなります。
それでもディフェンスの弱点を大きく上回る攻撃力で、バスケワールドカップ日本代表、そしてNBAへ、挑戦を続けて行ってほしいですね。
富永選手のプレーは、多くの人を引きつけます。
バスケを知らない人が観ても、「なんだこりゃ!」と思うはずです。
この夏、世界に富永選手のプレーをみせつけ、NBAへの扉を開いてほしいと思います。
もちろん、その前にドラフトにかかる可能性も十分あると思いますが。
パリオリンピック ベスト8への道
日本が目指すパリオリンピックベスト8。
かなり厳しい挑戦になると思います。
パリオリンピックに出場できるのはたったの12チーム。
現在出場権を獲得しているのが、開催国のフランス、そして昨年のバスケワールドカップで各大陸上位となった7カ国です。
パリオリンピック出場決定国
開催国枠 フランス
アメリカ: USA カナダ
ヨーロッパ: ドイツ セルビア
アフリカ: 南スーダン
アジア: 日本
オセアニア: オーストラリア
正直どこも厳しい相手ばかりです。
一番勝つ確率が高いと思われるのが、南スーダンかと思われますが、まず1stラウンドで当たることはないですね。
残り4チームは、7月に行われるFIBA男子オリンピック最終予選で勝ち上がった4チーム。
ルカ・ドンチッチ擁するスロベニア、ヤニス・アデトクンポ擁するギリシャ、そして強豪スペインなど、どこが勝ち上がってきても、日本にとっては厳しい相手になりますね。
まずはなんとか1勝をもぎ取るために、残り5か月何ができるのか考えていく必要があります。
選手たちは日本代表として戦うために、それぞれのチームで全力で戦ってください。
きっとトム・ホーバスHCが、勇気と知性を注入してくます。
不可能を可能にする力が、バスケ日本代表「アカツキジャパン」にはあるはずです。
まとめ
今回は、パリオリンピックに挑むバスケ日本代表「アカツキジャパン」について語りました。
世界最高峰の12チームの中で、ベスト8はかなり厳しい目標だと思います。
しかし、昨年のバスケワールドカップでみせた奇跡を、再びパリの地でみせてほしい!
ラウリ・マルカネン擁するフィンランド相手に大逆転劇を演じ、ベネズエラ、カーボベルデ相手にも苦しみながら勝利し、オリンピック出場権を獲得した日本代表。
あの感動を知ってしまったら、みんな期待しちゃいますよね。
バスケワールドカップで火のついた日本のバスケ人気を終わらせないためにも、ぜひパリオリンピックで再び感動を与えてください。
日本国中が、よくばりになっちゃってますよ!