8月25日に開幕し、日本でも大いに盛り上がった「バスケワールドカップ2023」も、3位決定戦、決勝を残すのみ。
NBAを観つづけて35年のわたくしリトルとしては、決勝は〝アメリカ 対 カナダ″となることを願っていました。
アメリカにはバスケ最強国であってほしいですし、今回のカナダ代表は、アメリカ代表にも負けないNBAスター集団でしたから。
しかし、9月8日に行われた3位決定戦、第1戦のカナダ対セルビアは、テレビの前での懸命の応援のかいもなく、セルビアの勝利。
つづく第2戦、さらに必死にアメリカ代表に声援を送りましたが、第4クオーターのアメリカの追い上げも一歩及ばず、2点差でドイツが勝利しました。
まさか、わたくしリトルの熱望した〝アメリカ 対 カナダ″を、3位決定戦で観ることになるとは!
アメリカ代表は、平均24歳と経験の少ない選手たちだったものの、個人の能力ではやはり飛びぬけていましたね。
アンソニー・エドワーズは、今後もアメリカ代表の中心となっていくかもしれません。
しかし、〝個の力″だけではドイツの〝チーム力″にはかないませんでした。
とにかくドイツ代表は、メチャクチャ強かったし、その強いドイツ代表に18点差と善戦した日本代表も、「やっぱり強くなったんだな」と再認識できました。
アメリカ代表の敗退は残念ですが、今回は勝利したドイツ代表に敬意を表したいと思います。
NBA選手4人を中心とした、ドイツ代表の強さの秘密にせまります!
2023バスケW杯 ドイツ代表とは
ドイツ代表は、世界ランキング11位。
ワールドカップ開幕直前のパワーランキングは、アメリカに次ぐ2位。
2022年のヨーロッパ選手権では、銅メダルを獲得しました。
2023バスケW杯 ドイツ代表
背番号
0 イザック・ボンガ(バイエルン・ミュンヘン) G/F 203㎝ 23歳
4 マオド・ロー(オリンピア・ミラノ) G 191㎝ 30歳
5 ニールス・ギファイ(バイエルン・ミュンヘン) G/F 201㎝ 32歳
7 ヨハネス・フォークトマン(オリンピア・ミラノ) C 211㎝ 30歳
9 フランツ・バグナー(オーランド・マジック) F 208㎝ 21歳
10 ダニエル・タイス(インディアナ・ペイサーズ) F/C 206㎝ 31歳
13 モリッツ・バグナー(オーランド・マジック) F/C 211㎝ 26歳
17 デニス・シュル―ダ―(トロント・ラプターズ) G 185㎝ 29歳
21 ユスタス・ホラツ(KKオリンピア) G 191㎝ 22歳
32 ヨハネス・ティーマン(アルバ・ベルリン) F/C 205㎝ 29歳
42 アンドレアス・オブスト(バイエルン・ミュンヘン) G 191㎝ 27歳
44 デビッド・クラマー(コラビア・グラナダ) G 196㎝ 26歳
ドイツと言えば、真っ先に思い出すのはダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)ですが、ノビツキーが活躍していた当時よりも、現在のドイツ代表の方が、ずっとレベルは上です。
チームの要、ポイントガードのデニス・シュル―ダ―。
高いスキルを持ち、攻守両面でチームを引っ張る20歳の若きエース、フランツ・バグナー。
闘志むき出しでチームを鼓舞する兄、モリッツ・バグナー。
インサイドで攻守に奮闘するベテラン、ダニエル・タイス。
4人のNBA選手が、ドイツ代表の中心です。
NBA選手以外でも、211㎝のセンター、ヨハネス・フォークトマンや、40%を超える3ポイント成功率を誇るアンドレアス・オブスト、NBAでも活躍したイザック・ボンガなど、実力者がそろうドイツ代表。
大会前に選手をその都度選考し、急増チームを造る、アメリカやカナダと違い、ドイツは長期間継続したチーム作りを続けています。
これまでの経験を蓄積しチーム作りを続けてきたドイツは、今回のワールドカップ出場国で唯一すべての試合で勝利し、ついに決勝にたどり着きました。
今回は、ドイツ代表の、4人のNBA選手について語っていきたいと思います。
ドイツ代表 背番号17 デニス・シュル―ダ―
所属 トロント・ラプターズ 背番号17
ドラフト 2013年1巡目全体17位
通算 14.0得点 2.9リバウンド 4.7アシスト FG43.4% 3P33.7%
2022-23 12.6得点 2.5リバウンド 4.5アシスト FG41.5% 3P32.9%
2022-23シーズン、八村塁選手やレブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビスらとともに、レイカーズの躍進を支えたデニス・シュル―ダ―。
オフェンスはもちろん、ディフェンスでも存在感を発揮するポイントガードです。
レイカーズでは、264万ドルのミニマム契約でしたが、チームをカンファレンスファイナルに導く活躍をみせ、今年の6月30日、トロントラプターズと2年総額2600万ドル(約37億8000万円)の契約を結んでいます。
正直、NBAでの通算成績は、特別優秀なポイントガードとは言えないものです。
シュート確率の低さや、状況判断の悪さが指摘されることもあります。
ただ、ドイツ代表になると、シュル―ダ―はまったく別の選手となるのです。
まるで、ドラゴンボールで孫悟空がスーパーサイヤ人になるように。
シュル―ダ―は、ジュニア時代から常にドイツ代表の中心として、国際大会で戦って来ました。
29歳とベテランになったシュル―ダ―は、キャプテンとしてドイツ代表を牽引。
ただ、あまりにも思いが強すぎ、シュル―ダ―はワールドカップ前に、あるトラブルを巻き起こします。
シュル―ダ―が、ドイツ代表のある選手を名指しで批判したのです。
ある選手とは、ダラス・マーベリックスで活躍するマキシ・クリバー。
アウトサイドシュートを得意とし、献身的なディフェンスでもチームに貢献する208㎝のビッグマン。
2014年からドイツ代表の主力として、チームを支えて来ました。
しかし、クリバーは膝の痛みを理由に、昨年ドイツが銅メダルを獲得したヨーロッパ選手権で、ドイツ代表への招集を辞退したのです。
2023年のワールドカップに挑むドイツ代表候補が、今年の7月に発表され、当然のようにマキシ・クリバーも18名の代表候補選手に名前をつらねていました。
そこで異議を唱えたのが、キャプテンである、シュル―ダ―です。
「マキシは去年いなかった。」と繰り返したシュル―ダ―。
シュル―ダ―は、クリバーがヨーロッパ選手権を辞退したことを激しく批判しました。
その上、「プレーの幅を広げるため」に辞退したクリバーについて、「マキシにプレーなんてない。彼はカーメロ・アンソニーじゃないし、プレーの幅なんていらないんだ。」と、まるでお膳立てされた3ポイントシュートさえ打ってりゃいいのに、と言わんばかりの批判を繰り返しました。
チーム愛の強さゆえの批判でしたが、もちろんクリバーは気分を害します。
事態を重くみたドイツ協会は、シュル―ダ―、クリバー両者と面談を実施。
2人の間でも話し合いが行われた結果、クリバーは代表からの離脱を決めたのです。
シュル―ダ―の、ドイツ代表への強い思いを、理解いただけましたでしょうか?
この思いの強さが、アメリカ代表に勝利した要因の一つかと思います。
シュル―ダ―の強烈な母国愛とキャプテンシーは、時にトラブルを巻き起こすこともあるものの、ドイツ代表を勝利に向かい一致団結させる力もある、劇薬だと思います。
ドイツの選手たちが持つ母国愛と団結力には、アメリカ代表やカナダ代表ではかなわないですね。
シュル―ダ―はワールドカップ本番で、圧倒的な支配力を発揮し、ドイツを勝利に導き続けてきました。
初戦でマッチアップした日本代表河村勇輝選手が、大会を通じて最も印象に残った選手として、デニス・シュル―ダ―の名前をあげていましたね。
シュル―ダ―の今大会のスタッツをまとめると・・・
デニス・シュル―ダ― スタッツ
対日本 14得点 5リバウンド 5アシスト FG38.5% 3P28.6%
対オーストラリア 30得点 1リバウンド 8アシスト FG52.6% 3P55.6%
対フィンランド 15得点 2リバウンド 4アシスト FG46.2% 3P 0.0%
対ジョージア 16得点 1リバウンド 7アシスト FG41.7% 3P40.0%
対スロベニア 24得点 2リバウンド 10アシスト FG72.7% 3P57.1%
対ラトビア 9得点 1リバウンド 4アシスト FG15.4% 3P 0.0%
対アメリカ 17得点 2リバウンド 9アシスト FG53.8% 3P42.9%
素晴らしいスタッツを残しているシュル―ダ―ですが、スタッツには現れないところでも、ドイツ代表を引っ張っています。
ラトビア戦はシューティングスランプに陥りましたが、他の選手が奮起し勝利。
最強アメリカとの準決勝、シュル―ダ―はしっかり復調し、最終クオーターまで接戦となる激闘を制しました。
決勝のセルビア戦でも、シュル―ダ―は試合を支配し、ドイツを初のワールドカップ優勝に導くのか?
注目しましょう!
ドイツ代表 背番号9 フランツ・バグナー
所属 オーランド・マジック 背番号22
ドラフト 2021年1巡目全体8位
通算 16.9得点 4.3リバウンド 3.2アシスト FG47.7% 3P35.8%
2022-23 18.6得点 4.1リバウンド 3.5アシスト FG48.5% 3P36.1%
2021年のNBAドラフト1巡目全体8位でオーランド・マジックに指名され、1年目から主力として活躍するフランツ・バグナー。
208㎝のビッグマンながら、アウトサイドシュートや、なめらかなボールハンドリングからのドライブインなど、高いスキルを誇る器用な選手です。
オーランド・マジック、そしてドイツ代表で共に戦う兄、モリッツ・バグナーとのコンビは強力ですね。
フランツはとにかくバスケIQが高く、フォワードでありながら、ゲームメイクを任されることもある、多彩なプレーヤー。
今回のワールドカップ初戦の日本代表戦でも、10得点6リバウンド5アシストと、オールラウンドな活躍をみせていました。
しかし、日本代表戦第4クオーター、フランツは捻挫でベンチに下がると、その後の4試合を欠場。
心配されましたが、準々決勝のラトビア戦で復帰すると、いきなり大活躍をみせ、ドイツを決勝に導きました。
フランツ・バグナー スタッツ
対日本 10得点 6リバウンド 5アシスト FG41.7% 3P0.0%
対オーストラリア 欠場
対フィンランド 欠場
対ジョージア 欠場
対スロベニア 欠場
対ラトビア 16得点 8リバウンド 3アシスト FG62.5% 3P50.0%
対アメリカ 22得点 5リバウンド 2アシスト FG38.9% 3P30.0%
ケガ明けで、いきなりこの活躍は、さすがとしか言いようがありません。
チームの主力であるフランツを欠きながら、1次リーグ、2次リーグを全勝したドイツのチーム力も凄いですね。
タレント頼りではなく、チーム戦術を極めてきた結果だと思います。
ただ、決勝で戦うセルビアも、絶対的エースの二コラ・ヨキッチを欠きながら勝ち抜いてきた総合力の高いチーム。
最後の競り合いでは、フランツ・バグナーの圧倒的な個の力が必要になるはずです。
ドイツ代表 背番号13 モリッツ・バグナー
所属 オーランド・マジック 背番号21
ドラフト 2018年1巡目全体25位
通算 8.2得点 3.7リバウンド 1.2アシスト FG50.0% 3P31.3%
2022-23 10.5得点 4.5リバウンド 1.5アシスト FG48.5% 3P36.1%
2018年のNBAドラフト1巡目全体25位でロサンゼルス・レイカーズに指名されNBA入り。
NBAで5シーズンを終えたところですが、現在所属するオーランド・マジックで、すでに4チーム目。
シュートに波はあるものの、調子がいい時は短時間で得点を重ねる実力を持っている選手です。
モリッツの特徴は、なんといっても、あふれる闘志。
決して弟のフランツのようにテクニックがあるわけではないものの、強力なフィジカルと熱い闘志で、敵を蹴散らす力をもっている選手です。
今回のワールドカップではベンチからの出場で、安定した活躍をみせています。
モリッツ・バグナー スタッツ
対日本 25得点 9リバウンド 1アシスト FG71.4% 3P40.0%
対オーストラリア 4得点 4リバウンド 0アシスト FG20.0% 3P0.0%
対フィンランド 12得点 3リバウンド 1アシスト FG100% 3P100%
対ジョージア 14得点 6リバウンド 5アシスト FG57.1% 3P66.7%
対スロベニア 10得点 8リバウンド 1アシスト FG33.3 3P50.0%
対ラトビア 12得点 4リバウンド 1アシスト FG100% 3P0.0%
対アメリカ 10得点 0リバウンド 2アシスト FG60% 3P50%
弟フランツ・バグナーの欠場を補うだけの活躍をみせている、モリッツ・バグナー。
初戦の日本戦ではチームトップの25得点をあげ、ドイツの強さを見せつけました。
決勝でも、モリッツのルーズボールに飛びこむ姿が、ドイツに火をつけるかもしれません。
ドイツ代表 背番号10 ダニエル・タイス
所属 インディアナ・ペイサーズ 背番号27
ドラフト ドラフト外
通算 7.6得点 4.9リバウンド 1.3アシスト FG54.3% 3P32.6%
2022-23 7.0得点 3.1リバウンド 1.3アシスト FG48.5% 3P18.2%
ドラフト外で2017-18シーズンにボストン・セルティックスに入団。
6シーズンをNBAで過ごし、インサイドでハードワークを繰り返す、頼りになるプレーヤーです。
2022-23シーズンは、右膝のケガで開幕から52試合を欠場。
復帰して7試合に出場したものの、再び右手親指の捻挫で残り試合も欠場しました。
バスケワールドカップへの出場も危ぶまれましたが、元気に全試合出場しています。
ダニエル・タイス スタッツ
対日本 13得点 6リバウンド 3アシスト FG75.0% 3P0.0%
対オーストラリア 9得点 4リバウンド 1アシスト FG57.1% 3P0.0%
対フィンランド 8得点 3リバウンド 3アシスト FG50.0% 3P0.0%
対ジョージア 11得点 4リバウンド 3アシスト FG66.7% 3P0.0%
対スロベニア 14得点 7リバウンド 1アシスト FG58.3% 3P0.0%
対ラトビア 9得点 8リバウンド 0アシスト FG50% 3P 0.0%
対アメリカ 21得点 7リバウンド 2アシスト FG66.7% 3P50.0%
正直、タイスがここまで活躍するとは思っていませんでした。
ケガの影響も心配していましたが、純粋にNBAでの試合よりも、存在感が際立っていますね。
フィールドゴールパーセンテージの高さは、特筆すべきもので、全試合50%以上記録しています。
アメリカ戦では、特に支配的な活躍をみせたタイス。
タイスの活躍がなければ、アメリカ代表の個人技の前に、敗れ去っていたでしょう。
決勝でも、セルビアのビッグマン相手に全力で闘ってくれることを、期待しています。
まとめ
今回は、決勝に挑むドイツ代表についてまとめました。
日本の初戦の相手だったこともあり、決勝は全力でドイツ代表を応援するつもりです。
継続したチーム造り、闘志を前面に押し出したプレースタイル、組織的なオフェンス・ディフェンスシステムは、日本の目指すものと重なる部分が大きいと思います。
ぜひ、チーム一丸となって、優勝を勝ちとり、「日本は世界最強のドイツと、言い試合したんだよ。」と言わせてください(笑)。
がんばれ!ドイツ代表!!
シュル―ダ―、頼んだぞ!!!