2023-24シーズンも、いよいよNBAファイナルを残すのみとなりました。
数々の死闘をへてファイナル進出を決めた2チームは、ボストン・セルティックスとダラス・マーベリックス。
なにかと因縁のある2チームの対決に、ワクワクが止まりません!
今回はセルティックスとマーベリックスの因縁、特にセルティックスとカイリー・アービングの因縁について語りたいと思います。
レッツラゴー!
セルティックスとカイリーアービングの因縁とは
イースタンカンファレンスファイナル、4勝0敗でインディアナ・ペイサーズを下し、セルティックスがファイナル進出を決めると、ボストンファンは歓喜の声をあげると同時に、ある選手へのブーイングの準備をはじめました。
その〝ある選手″とは、かつてボストン・セルティックスのエースとして期待された、カイリー・アービング。
現在ダラス・マーベリックスで、ルカ・ドンチッチと2大エースとして大暴れしているアービングですが、2017-18、2018-19の2シーズンは、ボストン・セルティックスに所属していました。
ときおり後ろ足で砂をかけるようにチームを去り、元所属チームのファンからいつまでもブーイングを受ける選手がいますが、カイリーの場合は、嫌われレベルが別格です。
セルティックス時代のカイリー
2016年のNBAファイナルでゴールデンステイトウォリアーズを最終第7戦で倒し、クリーブランド・キャバリアーズを優勝に導いたカイリー。
ゴールデンステイト・ウォリアーズとのファイナル全7試合で、1試合平均27.1得点を記録する大活躍をみせたものの、ファイナルMVPに輝いたのは平均29.7得点 11.3リバウンド 8.9アシストを記録した〝キング″レブロン・ジェームズでした。
いくら活躍をしても、レブロンがいる限りエースにはなれないことを不満に思ったカイリーは、翌2017年のNBAファイナルでウォリアーズに敗れると、突然チームにトレードを要求します。
こうしてトレードされたチームが、ボストン・セルティックスでした。
カイリーのトレード相手となったのは、前年セルティックスをイースタンカンファレンス1位に導いた小さな大エース、アイザイア・トーマスを含む3選手+ドラフト1巡目指名権。
セルティックスファンにとって、チームの〝ハート&ソウル″アイザイア・トーマスの放出は大きなショックでしたが、カイリーへの期待もまた大きなものでした。
念願の単独エースとしてプレーした2017-18シーズン、カイリーはチームトップの平均24.4得点を記録し、セルティックスがイースタンカンファレンス2位(55勝27敗)となる原動力になります。
しかし3月24日に左膝の手術を行い、一足早くシーズン終了。
プレーオフにカイリーは出場できず、チームもカンファレンスファイナルでクリーブランド・キャバリアーズに敗れてしまいました。
レギュラーシーズンで十分な活躍をみせたカイリーでしたが、ファンの反応は冷ややかなものでした。
セルティックスのファンから絶大な人気を誇っていたアイザイア・トーマスを放出してまで獲得したカイリーだけに、ファンの期待値はかなり高くなっていましたから。
翌2018-19シーズン、カイリーは67試合に出場し、1試合平均23.8得点にくわえ自己最高の6.9アシストを記録。
オールNBA2ndチームに選出される活躍をみせます。
ただ、所属するセルティックスは49勝33敗と前年より成績を落とし、イースト4位。
プレーオフでもカンファレンスセミファイナルでミルウォーキー・バックスに敗れ、ファンの期待を大きく裏切るシーズンとなりました。
シーズン中、ラストショットを任せられなかったことに文句を言ったり、メディアの前でセルティックスの若手選手を批判したり(後に謝罪)、リーダーらしからぬ姿をみせたカイリーに対し、熱狂的なボストンファンからは厳しい声もあがっていました。
するとシーズン後にフリーエージェント(FA)となったカイリーは、すぐにブルックリン・ネッツへの移籍を発表。
シーズン中に「セルティックス残留を第一に考えている」と語っていたにもかかわらず、さっさとネッツに移籍してしまったカイリーに対し、ボストンファンは怒りに震えたのです。
ただ、カイリーにも気の毒な点がありました。
自分をかわいがってくれた祖父をシーズン中に亡くしていたのです。
祖父の死を機にふさぎこみがちになったカイリーは、ボストンファンからの厳しい批判に心が耐えられなくなったのでしょう。
当初セルティックス残留を考えていたことは、事実だと思います。
それでも、精神的に落ち込んだカイリーは、「これ以上ボストンではプレーできない」と考えたのではないでしょうか。
カイリーがボストンを去った元凶は、ボストン・セルティックスの熱狂的ファンたちなのかもしれません。
まあ、単純に仲のいいケビン・デュラントに誘われてブルックリン・ネッツに一緒に入ったという、お気楽な説が有力ではありますが。
セルティックスのロゴ 踏みつけ事件
カイリーがブルックリン・ネッツ加入2年目の2020-21シーズン。
プレーオフ1stラウンドで、ネッツとセルティックスの対決が実現します。
コロナのため短縮シーズンとなった中、ブルックリン・ネッツは第2シード(48勝24敗)、ボストン・セルティックスは第7シード(36勝36敗)でプレーオフに進出していました。
ブルックリン・ネッツが2勝1敗とリードし、迎えた第4戦。
場所はボストン・セルティックスのホームコート、TDガーデン。
試合開始前から熱狂的なボストンファンは、カイリーに対し盛大なブーイングを浴びせます。
試合を通じて、カイリーに対する罵声がやむことはありませんでした。
それでもカイリーは40分33秒出場し、39得点 11リバウンド 2アシスト 2スティール ターンオーバー0を記録。
カイリーの大活躍でネッツが141-126で勝利しました。
試合終了のブザーが鳴ると、ガベージタイムをベンチですごしていたカイリーは、チームメイトとハイタッチを繰り返しながらゆっくりとコート中央に歩き、おもむろにセンターサークルに描かれたセルティックスのチームマスコットのおじさん(ラッキーといいます)の絵を、グッと左足で踏みつけたのです。
セルティックスの象徴であるロゴを、見せつけるように踏みつけたカイリーに、怒号が飛び交う騒然とした雰囲気に。
ロッカールームに向かうカイリーに、観客からペットボトルが投げつけられる事件も発生。
投げた観客は逮捕されています。
このロゴ踏みつけ事件は大きな話題となり、ボストン・セルティックスのフロントやOBたちも、カイリーを批判しました。
ファンやチーム、OBが「非常に無礼な行為だ」と批判の声を強める中、現役のセルティックスの選手たちは、冷静でした。
ジェイソン・テイタムやジェイレン・ブラウンにとって、カイリーはともにプレーした兄貴的存在だったのかもしれません。
終始カイリーをかばう若手選手たちに対し、セルティックスOBのケビン・ガーネットは「カイリーがラッキーを踏みつけたことに誰も何も言わないのかい?まるで見て見ぬふりだが、どういうことなんだろうか。あんなことをしてはいけない。まったくクールじゃないよ。全員がもっと良くならなければいけないと思う。」と苦言を呈したほどです。
セルティックスのフロントも、アービングの行為を批判しなかった選手たちに落胆したと言われています。
「組織に誇りをもっていない」とみなされたのです。
もしかしたら、ボストン・セルティックスに最も誇りをもっていたのは、熱狂的なファンたちだったのかもしれません。
このロゴ踏みつけ事件以後、カイリーへの憎悪がこもったブーイングは、さらに大きくなりました。
カイリー 観客に中指立て事件
翌2021-22シーズン、セルティックスとネッツは再びプレーオフ1stラウンドで対戦。
前年とは違い、セルティックスが第2シード(51勝31敗)、ネッツが第7シード(44勝38敗)でした。
カイリーが去ったあと、セルティックスはジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンを軸にチーム力をアップ。
優勝候補にあげられるほど評価を上げていました。
反対にカイリー・アービング、ケビン・デュラントとスーパースターを集めたブルックリン・ネッツは期待を裏切っていました。
ネッツ不振の一番の原因はカイリーのコロナワクチン拒否による出場停止。
結局2021-22シーズン、カイリーは29試合にしか出場しなかったのです。
迎えたプレーオフ1stラウンド第1戦。
悪い意味で大きな話題となっていたカイリーを、ボストンファンたちは盛大にいじり倒します。
しかしブーイングの嵐の中、カイリーは次々とシュートを決め続け、39得点の大爆発。
大接戦となった第4クオーターだけで18得点する活躍をみせましたが、試合はジェイソン・テイタムがブザービーターとなるレイアップを沈め、114-115でセルティックスが大逆転で勝利をつかみとりました。
この素晴らしい試合に水を差したのが、カイリーの問題行動。
ボストンファンのブーイングに嫌気がさしたのでしょう、カイリーはアメリカでは絶対にやってはいけない、中指を立てるジェスチャーでボストンファンを挑発したのです。
自分の後頭部で隠すように中指を立て、観客をあおるように。
NBAは後日カイリーに罰金5万ドル(約640万円 1㌦=128円)を科すことを発表します。
ボストンファンの怒りは頂点に達し、さらにカイリーに対するブーイングは膨れ上がりました。
結局プレーオフ1stラウンドは、ボストン・セルティックスが4連勝でネッツをスウィープ。
ボストンファンは歓喜の声をあげました。
カイリー マブスでの大活躍
2022-23シーズン、カイリーはブルックリン・ネッツにトレードを要求し、ダラス・マーベリックスに移籍。
NBAを35年間観つづけてきた、長年マブスファンのわたくしリトルは「なんでカイリーとるかね!」「どうせ問題起こしてプレーせんやろ!」と思っていました。
マブスではルカ・ドンチッチと強力バックコートコンビを組んだものの、カイリー加入後チームは勢いを失い、コンビ結成1年目はプレーオフどころかプレーインにも参加できず。
オフには3年1億2600万ドル(約181億4400万円 1㌦=144円)でマブスと再契約しましたが、正直ドンチッチと二人で優勝する姿は浮かんできませんでした。
しかしマブスはシーズン最初の10試合を8勝2敗でスタートすると、ウエスト5位の50勝32敗を記録。
強豪ひしめくウエスタンカンファレンスで、見事プレーオフストレートインを果たします。
カイリーは右かかとのケガもあり、レギュラーシーズン(RS)58試合の出場にとどまったものの、そのスタッツは・・・
2023-24 RS カイリー・アービングスタッツ
25.6得点 5.0リバウンド 5.2アシスト FG49.7% 3P41.1%
ルカ・ドンチッチというスーパースターとともに、素晴らしいプレーをみせています。
これまで目立っていた数々の奇行も、マブス加入以降はニュースになることもありませんね。
ちなみにプレーオフ(PO)に入っても、カイリーは印象的な活躍をつづけ、そのスタッツは・・・
2023-24 PO カイリー・アービングスタッツ
22.8得点 3.9リバウンド 5.2アシスト FG48.5% 3P42.1%
得点はやや落ちているものの、ここぞという場面で活躍し、マブスのファイナル進出に大きく貢献しています。
プレーオフでのカイリーのプレーをみて、一番驚いたのはディフェンスに取り組む姿勢。
NBAでもナンバー1と言われるオフェンススキルの高さは誰もが認めるところですが、これまでディフェンスについては、あまり評価されていませんでした。
しかし、ロサンゼルス・クリッパーズ、オクラホマシティ・サンダー、ミネソタ・ティンバーウルブズと、すべて50勝以上の強豪チームを倒してきたプレーオフの戦いの中で、カイリーの必死のディフェンスは、何度もチームを救ってきたと思います。
勝負所の決定力は健在ですし、もしドンチッチの相棒がカイリーでなければ、ファイナル進出はありえなかったかもしれません。
かつてレブロンの横で不満を抱えていたカイリーは、現在ドンチッチをエースと認めた上で、勝利のために全力を尽くしています。
優等生に生まれ変わったカイリーの前に、最後の敵として立ちふさがるのが、因縁のボストン・セルティックス。
そしてボストン・セルティックスのファンたちです。
カイリーに対して、並々ならぬ憎しみを抱く、ボストンのファンたちは、どんな言葉を浴びせてくるのでしょうか。
第1戦が行われるボストン・セルティックスのホームアリーナ〝TDガーデン″には、かつてないほどのブーイングが鳴り響くでしょう。
果たしてカイリー・アービングは、憎しみ渦巻くTDガーデンで、ブーイングの波に飲みこまれてしまうのか。
それとも必死にブーイングをおくる観客たちをあざ笑うかのような活躍をみせるのか。
今年のNBAファイナルは、特別な面白さがあふれていますね。
ワクワクが止まりません。
まとめ
今回は2024NBAファイナルで注目される、ボストン・セルティックスとカイリー・アービングの因縁について語りました。
正直昨シーズンまでは、わたくしリトルもボストンファンたちと同じく、カイリーに対してはいい印象をもっていなかったのですが、根っからのマブスファンなもんで、今はしっかりカイリーを応援しています(笑)。
こういう因縁のあるチーム同士の戦いは面白いですよね。
1980年代のシカゴ・ブルズvsデトロイト・ピストンズ、90年代のニューヨーク・ニックスvsマイアミ・ヒートなどは最高に盛り上がりました。
現在のNBAは当時に比べて優等生が多く、因縁の対決と言われる戦いはあまりみられませんが、当時とは違った形で今回のNBAファイナルは盛り上がると思います。
両チーム最高のプレーをみせて、最高のファイナルにしてほしいですね。
観客はいやがおうでも盛り上がると思いますから(笑)。
NBAファイナル2024を、ぞんぶんに楽しみましょう!